- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094086423
作品紹介・あらすじ
一五五六年。勢力図を拡大し続ける西国の雄、戸沢家は敵対する児玉家との戦いの時を迎えた。戸沢家の武功者「功名漁り」こと林半右衛門は、児玉家で「功名餓鬼」の異名をとる花房喜兵衛麾下の軍勢に次第に追い込まれていく。そんななか、左構えの鉄砲で絶人の才を発揮する十一才の少年・雑賀小太郎の存在が「最終兵器」として急浮上する。小太郎は、狙撃集団として名を馳せていた雑賀衆のなかでも群を抜く銃の使い手だが、心根が優しすぎるため、祖父・要蔵がその才能をひた隠しに隠していた少年だ。事態は、半右衛門のある行動を機に思わぬ方へと転じていく。
感想・レビュー・書評
-
雑賀衆が出てくると思って軽い気持ちで手に取ったが、割と重い内容だった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史物苦手なのだが、和田先生の作品はどれも圧倒される。
雑賀衆、伊賀者、、、
和田先生の作品を読んでこられた方なら物語にのめり込まれるだろう。
この物語は切ない。
切ないが、戦国の男の格好良さに圧倒された。 -
半右衛門と喜兵衛の男前な遣り取りや、小太郎が覚醒する様は「かっこいい」の一言。フィクションだが、他の歴史小説ではあまり描かれない部分も織り交ぜながら真実味を与えている手法は見事。「人並みになるとは、人並みの喜びだけではない。悲しみも苦しみもすべて引き受けるということだ。」
-
敵味方を超えて半右衛門と喜兵衛が互いを一人の男として認め合う様がかっこいい。小太郎の銃撃の腕もちろん重要だが物語のメインは二人を中心とした人間ドラマのように感じた。
-
切ない、けど、面白かった。
戦国時代の漢達の物語。
「小太郎の左腕」とありますが、小太郎はあくまで脇役でしょう。主役は半右衛門、そして、喜兵衛。
戦国時代初期の1556年、戸沢家と児玉家の戦における物語。
戦の臨場感が半端ない。当時はこんな感じで戦をやっていたのかって勉強になります。
そして、何よりも、敵対する半右衛門と喜兵衛の生き方が清々しい。
戦国時代の漢達はこんなにも清々しく、頼もしく、勇敢で熱く生きていたのか、と思うと、とても気持ちがよいです!
そんな両家の諍いに巻き込まれてしまった小太郎。
その小太郎の左腕から放たれる狙撃はゴルゴ13を思わせる奇跡の腕前。
ちょっとあり得ないんじゃないの?っていう感じ(笑)
当時の火縄銃じゃその精度は出ないでしょ(笑)
しかし、小太郎はあまりに心根が優しすぎるため、祖父がその才能をひたすら隠していた存在。
そんな小太郎を自軍に加えるために、半右衛門がとった行動とは?
そして、その結果、半右衛門が失ってしまったモノ。
さらに、この「最終兵器」小太郎をめぐる、両家の思惑。
となって、最後、半右衛門の決断と、半右衛門と喜兵衛の思いと行動が熱く、頼もしく、そして清々しく感じられます。
もちろん、この二人だけではありません。
その脇を固める登場人物達もキャラが立っていて、その厚みを増しています。
時代小説なのに、全くそれを感じさせないぐらい読みやすい物語です。
お勧め! -
ライバル同士の手に汗握る駆け引きだらけの合戦の中、真の主人公たる天才スナイパーが誕生する瞬間を読者に魅せる。読み出したら止まらない。
最新の研究に基づく火縄銃による狙撃の可能性、大名内における組織人としての武士、合戦と飢餓など、従来の大河ドラマでは、表現してきれていない歴史の事実をフル活用していて、面白い。
最後の評論も本作の読み漏らしを防いでくれる、網羅された内容で秀逸。
時代小説は、当面、和田竜だけでいいと確信した作品。 -
時代小説なんて久しぶりでした。
さすが「のぼうの城」の和田竜先生(^^)
サラサラと読み易い平易な文章で戦国武者達の「生き様という美学」をスカッと気持ちいい物語にして読ませてくれました。
戦国武者としてどのように武功を挙げ、自身の武名を巷間に轟かせ、如何に散るのか…今日の現代社会とは生きる目的のまるで違う世界を「戦」を主導した武者、その好敵手、そして「戦」に翻弄された少年を軸に描いたエンタメって感じの作品ですね。
生死を賭けて戦っている双方が「同じ志」を胸に秘め、敬意を持って互いに認め合い、そして容赦無く殺しあう様の潔さに清々しさを感じる物語です。
とても読み易いのでオススメです。 -
史実にはないフィクションのお話であるとあとがきに書いてありました。
それでも当時の時代背景、男たちの価値観や美徳などがとても魅力的に描かれており、そんな時代を、そんな時代らしく豪快に生きた半右衛門。それとは対照的な小太郎の少しずつ絡んでいき、迎える壮絶な最期にはとても感動しました。 -
戸沢家の武功者『功名漁り』こと林半右衛門と児玉家で『功名餓鬼』の異名をとる花房喜兵衛そして、小太郎の物語。 小太郎は祖父の要蔵にその才をひた隠しにされていたが実は群を抜く銃の使い手だがそんな小太郎の望むものは『人並みになる』こと。『人並みになる』ということは喜びだけではなく、悲しみも苦しみもすべて引き受けるということ。それを享受したとき小太郎はどうするのか。 もう、どうして戦国の時代ってこうなんだ。考え方が格好いいと言うのか、それとも阿呆というのか。呆れる。けど、格好いい。 和田竜さんの作品で1番すき。