きみは誤解している (小学館文庫 さ 4-3)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094087024

作品紹介・あらすじ

「ねえ聞いてるの?自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって、あたしは言ったのよ」婚約者がたしなめる青年の、唯一の趣味は競輪。死期が近い父親の当たり車券を元手に、彼が大口勝負に挑もうとする表題作。競輪で儲けた金で十三年間暮らす独りぼっちの男が告白する「この退屈な人生」、八年前のある出来事をきっかけに車券を買わなくなった男が会社の金を持ち出したという兄を追って競輪場へと向かう「人間の屑」など六篇収録。出会いと別れ、切ない人生に輝く一瞬と普遍的な人間心理を、競輪場を舞台に透明感あふれる文章で綴った作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 競輪を題材とした短編集。ギャンブルにのめり込んだり、思いもかけない自分の才能に気付いたり、競輪の魅力に捉われた人と周りの人々と心のすれ違いの物語。専門的な用語や実在の競輪選手、レース展開の様子が出てくるので、競輪を全く知らない人は少しわかりにくいとこともあるかも知れないが、どの話しも面白かった。阿佐田哲也のギャンブル小説、山際淳司のスポーツ小説がミックスされ、村上春樹的に少しポップな文章で味付けされたような感じの本。誕生秘話が明かされる巻末の後書きと解説も楽しかった。

    #きみは誤解している #佐藤正午 #小学館文庫 #読書 #読書記録 #読書記録2022

  • 競輪場を舞台にした短編集
    最後の付録は作家と編集者のやり取りが書かれている
    これもフィクションとか

  • ハードボイルド。ハードボイルドっていうのはこういうダメでどうしようもなく、そしてそれを変えようもない男たちの物語なんだ。 ギャンブラーは女を泣かすことも自分を騙すこともお手の物だ。彼らはこう言う。「俺に言わせればギャンブルの手など借りなくても人生なんてもともと狂ってる。俺はそう思う」 屑が嫌いな人は近寄らないほうがいい。愛すべき屑たち。人生なんてそんなもんだろう。
    ただ表題の主人公の車券はそのまま大外れしてほしい。

  • いやあ、うまいなぁ。
    すべて競輪にまつわる6つの短編を掲載。
    通底するのは漠然とした人生への諦念と、それでも諦めきれずに何かに賭けてみる男たち(女たち)の物語。
    「きみは誤解している」
    いや、誤解していない。
    「遠くへ」
    それは憧憬。
    「この退屈な人生」
    だから何かに賭けてみたくなるんだ。
    「女房はくれてやる」
    時には負けたって当たり前じゃないか。
    「うんと言ってくれ」
    その一言に私は賭けてみる。
    「人間の屑」
    どうせ+-0なら券は買わない。意味ないじゃないか。
    そうだろ?ミスバレンタイン。

  • 2017.10 課題本

  • 競輪をこよなく愛する男女の切なく輝く一瞬を綴った6つの人間ドラマ。残り一周を報せる鐘の音が聞こえるような緊張感が漂う作品集。
    ギャンブルは人生を狂わすというが、その渦中に身を置くと、尋常ではない喜びと哀しみが味わえる。極めれば極めるほど知的興奮が上昇するので、止めるきっかけが見つからない。本作品の登場人物たちは、ギャンブル感に優れた者と人間の屑のように身を落とす者がいるが、私を含めほとんどの人間は表題作のような者だ。嫌なヤツだけど親近感は覚えた。

  • 競輪をテーマとした短編集。
    競輪にハマって抜け出せない、あるいは抜け出す必要のないような人たちをつらつらと追っていく。勝っても負けても最終的には損するということをわかっている上で、全員が全員競輪場に赴く。
    話としては面白く、興味深い話もあったけど結局心情は理解できなかった。この本に則って自分を評するならきっと、カスみたいな人間と罵られるんだろうけど、それはそういうものでいいんだろう。

  • 佐藤正午の本を読むと、次に読むどんな本も「やや読みにくいな」となってしうまうことが多々ある。そのくらい佐藤正午の文章は滑らかで、やさしくて、美しくて、且つウィットに富んでいる。

    この本は、多くの人が言ってるように「付録」がたまらない。物語をでっちあげるという仕事が小説家なら、佐藤正午は最強の小説家だ!と思うほど。

    短篇ひとつひとつは、ギャンブラーたちの、どうしようもない弱さやだらしなさ、とことんなダメさを綴ったあれこれなんだけど、みんな、ただただ愛おしくなってしまう。そう、まんまと、でっちあげられた、小説のマジックにかかってしまうのだ。

  • 2013年1月31日(木)、読了。

  • 競輪というギャンブルにかける、あるいは振り回される様々な人間の小説。競輪をまったく理解しない私でも付録と称される解説小説が最後についている。それで競輪の知識があがるわけでもないが。6つの小説のそれぞれタイトルが秀逸。ギャンブラーがいいそうな、少々芝居がかった、自分のことを夢見心地でみているような、そんな話にぴったりのタイトル。語り口のテンポのよさも佐藤正午ならでは。

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著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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