小説・震災後 (小学館文庫)

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著者 : 福井晴敏
  • 小学館 (2012年3月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094087048

小説・震災後 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 震災から1年経った今、是非読んでもらいたい作品。

    文章の中には、戦後社会の歴史と現状に対する深い洞察に溢れている。
    それを全肯定、というわけではないんだけど、全体としては鋭い洞察であると思うし、読者としても心に留めるべきだと思う。


    「『未来』の対になる言葉は、おそらく『将来』」。本文中のこういった言葉が、非常に印象に残った。

    最後に示されるものの具体的な内容は陳腐といえば陳腐だろうけど、現在の社会を深く分析し、「未来」を示すことの重要性も提示しているこの作品は、なるべく多くの人に読んで欲しいし、特に僕達若い世代には強く勧めたい。



    福井さん、文章が少し柔らかくなった?

  • エンタテイメントではない。
    血沸き肉躍るような興奮も無ければ、スカッとする結末が待つわけでもない。

    “家族小説”と銘打たれてはいるが、これはむしろ……福井晴敏の思想表明本、とでも位置付けるのが正しいだろうな。

    彼の、いくつかの代表作すべてに共通する筆者からのメッセージが、本書はより強く感じられるから……。

    決して楽しく読めたわけではないし、筆者の主張に全面賛成なわけでもないけれど、読んで損はない一冊かと。

    ★4つ、7ポイント半。
    2015.04.08.古。

    “渥美”は、明らかに記憶にある“あの人物”だとして……、主人公の父も、設定的には(現役を退いて10年?)、例の代表作に登場していたのかしら??

  • 小説に名を借りた「未来」へのメッセージ

    久々に福井さんの小説を読みました。
    「亡国のイージス」以来、福井作品はよく読んでいましたが、この作品にも、やっぱり脇役ながら出てくるんですね。市ヶ谷とか...そして、おじいちゃんがまた格好いい(笑)

    震災から3年たって、改めて、本作品で震災後を振り返ることができました。震災後、原発事故後の日本での行動の総括と、その後の未来を語る作品となっています。
    自分の子供、さらにはほかの子供たちにどんな「未来」を残せるのかを考えさせられました。

    主人公は平凡なサラリーマン。震災後の原発事故を含むさまざまな出来事がすべての人の希望を失わせていきます。そんなさなか、息子が起こしたネット上の事件。
    震災後の家族の不安、そして未来への不安の中、なぜか、主人公の父親がそっち系の重要人物だったりして、とてもミステリアス(笑)そんな格好いい父親との交流を通して、主人公が一歩踏み出し、そして、息子と向き合い、メッセージを託す、そんな感じの物語。
    エネルギー問題をどう解決するかも、本書の中では語られていますが、その解決策がどうこうというよりも、未来を見据えて、まずは、一歩を踏み出そうっというメッセージを強く感じました。

    「将来は放っておいても必ずその人のものになるけど、未来は必ずやってくるとは限らない。見よう、見せようとしなければ見れないし、手にも入らないもの…それが未来です」

    私たちは子供たちの未来に何を見せてあげらるのでしょうか?

  • 小説という場で自分の言いたいことを言っているので最後のほうはひたすら聞いているだけになるが、その主張の中で「未来と将来は違う。未来を考えるべき」というのには共感。世の中は成熟しきっていて、この15年ぐらいの激しい進歩は一般人レベルでは想像することができなくなってしまっているため、現状の負の面ばかりに焦点を当てげんなりさせることしか大人はしていない。プラスの面はなにひとつなく、高齢化や原発などシビアな局面をどうやって乗り切っていくか、ということしか語られない。そんなことばかりを聞かされながら大人になっていく今の子ども達はこの先をどうやって生きていくのだろうか。
    震災がきっかけではあるが、今まで考えたこともかいような、そんなことを考えさせられる。

  •  二〇一一年三月十一日、東日本大震災発生。多くの日本人がそうであるように、東京に住む平凡なサラリーマン・野田圭介の人生もまた一変した。原発事故、錯綜するデマ、希望を失い心の闇に囚われてゆく子供たち。そして、世間を震撼させる「ある事件」が、震災後の日本に総括を迫るかのごとく野田一家に降りかかる。傷ついた魂たちに再生の道はあるか。祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語―。『亡国のイージス』『終戦のローレライ』の人気作家が描く3・11後の人間賛歌。すべての日本人に捧げる必涙の現代長編。

  •  福井晴敏 著「小説・震災後」を読みました。

     東日本大震災後、東京に住む平凡なサラリーマンの家庭が舞台。原発事故を経て、希望を失い心の闇にとらわれてしまう息子。その息子に希望を取り戻すためにあがいていく家族。そして、祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来の物語」が語られていく。

     フィクションでありつつも、そこに描かれている世界はまさに現実の世界、現実の家族であり、自分の家族や子供たちのことを考えずには読めませんでした。

     あの震災後、どの家庭でも今の生活のあり方やこれからのことをそれまで以上に考えずにはいられなかったと思います。

     そこに、未来や希望を見つけることは大変なことでした。

     しかし、作者が描くように、これからの世代の子供たちに前に進むべき未来を見せていくことが、今社会を支えている私たちには必要なのだと強く感じました。

     この小説で知った明るい未来を感じさせる新技術が現実のものとなることを一人の大人として期待したいです。

     自分の子供たちにもこれからの未来が思い描けるように自分自身の生き方を見つめていこうと思います。

     作者福井晴敏の熱い思いが描かれた小説でした。

  • 不勉強なものでこの小説に書かれていることがどこまでが現実なのかはわからない。
    しかし、ページを進ませるエネルギーは半端なかった。
    野田の最後の演説は福井さんの作品だなーと思わさせられるが読み切らせるだけの力があったように思う。

    あと、いつものことながら福井さんの作品は親父がかっこいい。
    そして女が強い。

    震災から少し時間がたち少しずつ忘れかけていた3.11あたりの記憶がよみがえった。
    また、時間がたったら読みたいとおもえる小説であった。
    次は自分の子が生まれたときにでも。

  • 出版社が違うからと油断していたら、ダイスシリーズとちょっとリンクしていたー!とても嬉しい。

    小説の中の震災の話がいまいち実感できなかった。
    地震当日は情報がほとんど入ってこない状況で徹夜で仕事していたし、原発の話も理解しようとしないまま毎日過ごしていたから。
    小説を読んで、非常事態だったんだと驚いた。

    息子に未来を示す主人公。
    それに共感できないのは自分がまだお子様の立場でしか物を考えられないからだろう。

  • 最初にハードカバーでこの本を見たとき、胸が震えた。
    文庫本になって、美しい装丁を手にしたとき、充分な重みを感じた。
    でも読み終えたいま、その短さが心惜しい。
    文庫本295ページの小説が、決して短いわけはないのだが、
    従来の福井作品と比べると短編のようにすら感じる。

    (短編集の「6ステイン」と比べたら長いはずなんだけど。
    ・・・とりあえず、今度また「6ステイン」も読もう 笑)

    短編に感じるほど、この作品は大変読みやすい。
    多くの人が関心を持たざるを得ないテーマをかかげ、
    多くの人の心に伝わる正確な言葉で、
    多くの人に共感を得やすいストーリーを語り、
    多くの人へ向けたメッセージでラストシーンは埋め尽くされる。

    正統的な小説だと思う。
    解説の言葉を借りれば、
    「世代間の断絶と理解」「公と私のあり方」「個と社会のあり方」がテーマ。
    まさしく、福井作品の特徴的なテーマが並ぶが、
    決して、使い回しの表現を感じさせない点にも、驚く。

    唯一、「男とは・・・」の語りは、おなじみの話。
    「生きること、働くこと、死ぬこと……。
    なんにでも意味を見つけ出さなきゃ気が済まない。
    見つからなきゃ、自分で作ってでもなにかに自分を賭けようとする。
    その点、女は自然体だよな」
    わたしは女で、確かにいろんな意味付けはしないわね、と思う。
    でも、すべてに意味を見出そうとするサガに惚れるのは、
    わたしが女だからなのかしら、と考え、
    ま、意味なんてどうでもいいわね、とただ文字を見つめてみる。

    『他人が他人に示せる善意には限度があり、
    それを踏み越えた先には個人生活の破綻が待っている。
    まだ社会のなんたるかを知らない少年には、
    そんな不文律も大人の欺瞞としか聞こえず、
    世界をまるごと救おうと突っ走ってしまうものなのか』

    これは中学生の息子を語った、父の言葉。
    福井氏が描く、若者と中年男性の関係性は見事なバランスと形だといつも思うが、
    今回は息子と父、そして祖父の三世代である。

    如月行、フリッツ、一功と朋希・・・
    いわゆる女性読者が惚れるスター(笑)の役割が、今回はこの息子かと思いきや、
    さすがにそこは中学生。
    もっとたくさん動いてくれればいいのに、と思ったりもしたが、
    もし彼が歴代のスター並みにかっこよくて、
    わたしが惚れちゃったりしたら、それはもう年齢差から言って、
    犯罪になりかねない 笑

    もちろん、中学生の息子によって、このストーリーは動き出したこと、
    未来の象徴として、重要な人物であることは明らか。
    さらりと、若者の特徴を香らせているところも、いい。
    惚れはしなかったけど、彼のことをとても好ましく思った。

    福井作品ファンとして、祖父には、いろんな人物の面影が重なる。
    あの小説のあの人の老後は、こんな感じかしら、と
    こんな感じだといいな、と願う。

    「日本人を日本人たらしめる感性は失われ、
    欧米的な合理精神のみが人を動かすようになる。
    それはつまり、わしのようなつまらん人間が増えるということだ。
    いつでも最善の対処方法を考え、切り捨てたものには見向きもしない。
    そうしなければ生き残れないという理屈で自分を正当化して、
    誰もが孤独の穴に落ちてゆく……」

    「これを最後の任務と思っとったが、結局なにもできなかった」

    ファンにとっては、しびれる台詞。
    この言葉だけで、いろんな背景をイメージできる。

    この作品だけを読む人間には、どんなふうに映るのか想像もつかないが、
    きっと深い人間性は、誰の目にも読み取れることだろう。

    そして無辜の民の代表である父。
    リアリティあふれる無辜の民が、
    自然で驚きの変貌をする点もすばらしい。
    成長物語ともいえる作品です。

  • 福井晴敏が描く震災後の小説。
    著者の作品は『動』が多いが、この作品は『静』の中に強く訴えるものがある。
    強い未来を演説する主人公には共感。

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