短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために (小学館文庫)

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著者 : 穂村弘
  • 小学館 (2013年11月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088694

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短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

  • タイトルと著者からどれだけラジカルなお話かと期待するが、なんと本当に歌人になりたい人へのレクチャーなのである。しかしやはり、なぜ爆弾が欲しいのか、扉を吹き飛ばす呪文が欲しかったのだ、という原動力が描かれていて、そこにとても惹かれるのです。製造法、設置法、導火線、構造図と、爆弾のように描かれている。どんな出版社から出すか、紹介文を誰に書いてもらうか、なんてくだりまで。短歌がつくりたかったわけではないが、僕も爆弾を作りたかったのかなあ、と思った。説明がうまくできない「力」というか、そういうの。

  • 以下引用。孫引のためページ数は記さない。

    俵万智
     思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ
     シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分らは解きおり
     砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね

    正岡子規
     吉原の太鼓聞こえて更くる夜にひとり俳句を分類すわれは

    渡辺松男
     われらウェイトトレーニングする日曜日はるかなる氷河に遺体がねむる

    高野公彦
     我を生みし母の骨片冷えをらむとほき一墓下一壺中にて

    吉川宏志
     我を遠く離れし海でアザラシの睫毛は白く凍りつきたり

    寺山修司
     亡き母の真赤な櫛で梳きやれば山鳩の羽毛抜けやまぬなり

    早坂類
     かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりひとりで歩く
     サラダより温野菜がよいということがよみがえりよみがえりする道だろう
     あなたへの供物のように澄んでいるくつぬぎ石は五月の庭に
     ブティックのビラ配りにも飽きている午後 故郷から千キロの夏 

    伊藤保
     足音疲れし妻が髪結より帰りくれば襤褸の中より鈴振りて呼ぶ

    葛原妙子
     草上昼餐はるかなりにき若者ら不時着陸の機体のごとく
     白鳥は水上の唖者わがかつて白鳥の声を聴きしことなし
     一匹の蛾を塗りこめし痕とも油彩のひとところ毳だちてをり
     わが連想かぎりなく残酷となりゆくは降り積みし雪の翳くろきゆゑ
     早春のレモンに深くナイフを立つるをとめよ素晴らしき人生を得よ

    斎藤茂吉
     ガレージへトラックひとつ入らむとす少しためらひ入りて行きたり
     街上に轢かれし猫はぼろ切か何かのごとく平たくなりぬ

    大滝和子
     春あさき郵便局に来てみれば液体糊がすきとおり立つ
     まだ発見されない法則かんじつつ深ぶかと吸う秋の酸素を
     白鯨が2マイル泳いでゆくあいだふかく抱きあうことのできたら

    塚本邦雄
     さみだれにみだるるみどり原子力発電所は首都の中心に置け
     五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤独もちてへだたる
     ずぶ濡れのラガー奔るを見おろせり未来にむけるものみな走る

    東直子
     廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て
     駅前のゆうぐれまつり ふくらはぎに小さいひとのぬくもりがある

    前川佐美雄
     三本の足があったらどんなふうに歩くものかといつも思ふなり
     牛馬が若し笑うものであつたなら生かしおくべきではないかも知れぬ
     壁面にかけられてある世界地図の青き海の上に蝶とまりゐる
     胸のうちいちど空にしてあの青き水仙の葉をつめこめてみたし
     遠い空が何んといふ白い午後なればヒヤシンスの鉢を窓に持ち出す

    加藤治郎
     ひどくあいしたあとはコーラの缶のあかビールの缶のぎんならぶだけ
     ここにいる疑いようのないことでろろおんろおん陽ざしあれここ
     限りなくつらなる吊輪びちびちと鳴りだすだれもだれもぎんいろ
     手をひいて登る階段なかばにて抱き上げたり夏雲の下

    奥村晃作
     次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く

    大村陽子
     枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会わぬ不思議
     砂嵐(ハムシーン)かすかに吹き出づ君からの航空書簡の封の隙より
     永遠に拒食と多食をくりかへす月の童話を書きて眠りぬ
     熱湯に煮えゆく蛸のたましひが吸ひだされゆく換気扇より

    横山未来子
     胸もとに水の反照うけて立つきみの四囲より啓かるる夏

    山田航
     鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る

    木下龍也
     コンビニのバックヤードでミサイルを補充しているような感覚
     B型の不足を叫ぶ青年が血のいれものとして僕を見る

    穂村弘
     風の夜初めて火をみる猫の目... 続きを読む

  • 短歌の入門書のようでいて、けっこう難しいところまで踏み込んでいます。歌の読み込みや歴史的な説明など中盤は私には難解過ぎましたが、「これいいなあ」と思う歌にたくさん触れることができたのは嬉しかったです。
    私が短歌を作ってみる起爆剤になってくれたわけで、やはり名著と呼ぶべきなのでしょう。これから「爆弾」を作り続けたら難しく感じた部分も素直に読めるようになるかもしれないと思うと、ワクワクしてきました。いや、違った。短歌だけに、和歌和歌してきました。

  • 歌人穂村弘による短歌の創作論集。実作演習など詩や小説を書く時にも役立つ要素がいっぱいある。

    <印象的な箇所のまとめ>
    ・愛情や善意だけでは、詩として見た時、物足りない。世界には明らかにもう半分があって、そこには不吉な暗いものが充ちているんだっていうことを同時に感じさせる詩がやはり本物。
    ・オートマティックからの離脱が必要。オートマティックというのは、自分で書いているつもりで実は何かに書かされてる言葉なのでよくない、ということ。
    ・短歌においては時に意味以上に韻律感(リズム)が重要。
    ・普通の文章なら説明する。短歌の場合は説明してしまうことで詩的インパクトが弱まってしまうことがある。
    ・共感と驚き。素人になくてプロの作品にあるのは驚きである。読者より先にまず作者が自分で自分の作品に共感してしまうと、他人と共有できる感動を生み出せない。他人に共感するのに比べて、自分で自分の気持ちに共感するのはたやすい。この容易さは、自分自身の本当の心に向かって言葉を研ぎ澄ますということから限りなく遠いところにある。共感=シンパシーの感覚に対して、驚異=ワンダーの感覚とは、「今まで見たこともない」「なんて不思議なんだ」という驚きを読者に与える。

  • 歌人になりたいとは思わないけれど、本書を手に取った。穂村弘の本気度、短歌を身を以て生きているのがひしひしと伝わってきて、短歌というのは彼にとって酸素のようなものなのだということがわかった。
    さまざまな短歌の引用を読んで、形式や型との付き合い方(や、戦い方)にもいろいろあるのだなと思った。5、7、5、7、7は崩さずに、その中で勝負する人、音律すら崩そうとする人、技巧や言葉に凝る人、まず気持ちありきの人。形式の縛りがあることで、かえってくっきりと浮かび上がるものがある。

  • 2015年3月16日読了。

  • 短歌の書き方詠み方のヒントだけでなく、選評会や朗読会の様子や、結社と同人の違いなど、素人には知れない場面でのやりとりが分かり面白い。(しかし自分の読みが浅すぎ、プロが良いという歌がなぜ良いのか分からない…。)歌人を目指す人には実践で役立ちそうだと思った。短歌の構造を紐解く項では、歌人には「入力型」と「出力型」がいる、という指摘に目鱗。個人的には「入力型」の歌が好きな気がする。

  • 卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 穂村弘 
    白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水 
    その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった 早坂類
    うつくしい午前五時半ころころと小石のように散歩をします 〃
    さみだれにみだるるみどり原子力発電所は首都の中心に置け 塚本邦雄
    廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て 東直子
    なにゆゑに室は四角でならぬかときちがひのやうに室を見まはす 前川佐美雄
    イヌネコと蔑して言ふがイヌネコは一切無所有の生を完うす 奥村晃作
    枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会わぬ不思議 大村陽子

    面白い、面白いと読んでいたら、「終章」で涙がぶわわーと湧き出して。「宇宙とは何か、時間とは何か、生命とは何か。一刻も早くそれらを知らなければならない。そうしないと、このままでは、いつか僕はほんとうに死んでしまう」「不気味世界」「そして何よりも、これらの考えのすべては単なる自意識過剰な怠け者の妄想かもしれないのだった」「この不気味さには確かに何か意味がある。」

  • 不安や衝動を歌にして爆弾とするための、方法ときっかけの話。
    方法のところは多彩な歌人の作とともに熱心な解説がよめて初心者にもやさしい。
    きっかけの話となる「終章 世界を覆す呪文を求めて」が一番印象的だった。人は何か熱狂的になるものを探して、そうと気付かずはまり込んで行くものなのかもしれない。いや、そうならいいと思った。

  • 密度の濃い第3章が読んでいて最も面白かった この章では様々な秀歌を例に挙げながら、どのようなポイントがそれらを秀歌たらしめているのか、実存的な読みを通じて論じている そのため、読者として短歌を鑑賞する時の参考にもなり、短歌への関心をより高めるような論考となっている しかし本稿を読むことは、秀歌を詠む上での具体的な難しさをいくつも突き付けられることでもあり、これから自分で短歌をつくってみようと考えている者としては、その奥深さに目眩を覚えるような気さえした 特に章の後半の節に進むと、理屈は何となくはわかるが、その作成法を実際に習得するための途方もなさについては、今の私には理解しきることが出来なかった "宙の知恵の輪"を持つ短歌へは果てしなく遠い

  • 穂村さんのエッセイが面白いということから短歌に興味を持ったが、この本を読んで、到底僕には短歌を作ることは無理であるということを思い知らされた。

  • 不思議な本でした。
    おもしろいようなおもしろくないような、つかみ所がないなあと思いながら、一気に読んでしまいました。

    そもそも僕は短歌を良く知らない。
    そんな男に一気読みさせる本なのだから、不思議な本です。

  • 「短歌という爆弾」実存的→「短歌の友人」歴史的。
    生の一回生。一人称。

  • タイトルに惹かれて読んだ。
    穂村弘さんの名前は、短歌の書籍コーナーなどで、良く目にする。
    日経新聞の文芸で短歌投稿のコーナーでも選者をされてる。

    読了して、とても肩の力が抜けた。
    短歌を難しく感じていたこの頃。
    もっと、自然体でいいんだ、と思えた。

  • とりあえず、とりあえず、文字を追った、という読了を果たしました。
    万葉古今を学び、近代短歌を放置してニューウェーブ以降の短歌を読んでしまった私にはなかなか実感として歌が入らず、三章目が難しく思われてしまいます。
    ひとまず、納得のいく連作を並べて、こういうことを穂村弘が言っていて、なるほどと思えるのかどうか考えてみたいと思います。

    わたしは、個人的で構わないので、大爆発を起こして、命乞いをされるような短歌をつくるのが夢です。

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短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために (小学館文庫)の作品紹介

人気歌人が放つ、衝撃の短歌入門書!

人気歌人、穂村弘による衝撃の短歌入門書が待望の文庫化。冷たく不気味な世界のすみっこで「短歌という爆弾」を炸裂させて、世界の心臓を爆破しよう。短歌の「製造法」(レッスン)、「設置法」(作った短歌をどう広めるか)、「構造図」(現代短歌の魅力の解剖)を、都市を疾走する歌人、穂村弘が熱く語る。文庫化にあたって、21世紀の短歌についての著者ロングインタビューと、歌人枡野浩一氏による解説を収録した。

【編集担当からのおすすめ情報】
穂村弘の爆笑エッセイ『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』も、小学館文庫から好評発売中です!

短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために (小学館文庫)はこんな本です

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