風立ちぬ/菜穂子 (小学館文庫)

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著者 : 堀辰雄
  • 小学館 (2013年11月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088779

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風立ちぬ/菜穂子 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

  • 言葉は、放ってしまえば、もう自分のものではない。
    あれこれと条件に照らして、最も適切な表現という安心を探し、それを放つのにもっともらしい心情を用意しても、言えなかったり、言った側からその不完全さに戸惑ったり、新たな情意がめまぐるしく立ちあがる。
    この侭ならなさの中で、近しさを続けるべき関係性だけが担保された空虚。潜在意識の奥底まで汚泥を流し込まれるような、家族という侭ならなさの再生。
    人を苦しみから解き放つのは、唯々悩むのではなく、悩み抜こうとする意志だと思う。それは身体を信頼させる。信頼された身体は心の緩みをせき止め、境遇を了知させる。そして行動を伴わせることだろう。
    それがなんなのか、観察しながら生きている。観察しながら、それがなんなのかわからないまま、ぼんやりと消えてゆくのを眺めていたり、いつまでもずっと燻らせ続けていたりもする。
    自分が望んでいることがわかったとして、何になるだろう。
    映画「風立ちぬ」との共通性は、結局のところそんな前提と結核という死の接近であって、宮崎駿は、そこに飛行機をドスンと持ち込み、顔を空に向けさせた。その空の、なんと青かったことか。
    侭ならない偶然の充満と、ほかの人にはわからないナイスキャッチと、それをとても大切にできるというファンタジー、その中に生きることの悟性、それを失って了知してゆくという救いのプロセスが示された映画の着想が、この小説からどのように抽出されたのか、腑に落ちきれないものが残った。

  • ジブリの「風立ぬ」を観て以来、ずっと読み直したいと思っていた二編。都合よく一冊にまとまってくれていて、ありがたい(それを願う人は当然他にもいたことでしょう)。それぞれの作品への感想はさておき、ここでは備忘的に、映画と絡めたとりとめのない思いをひっそり呟いておきたい。

    ジブリの「風立ぬ」のヒロインの名は「菜穂子」であり、パンフレットにも小説「菜穂子」がモデルだと書いてあったと思うが、小説「風立ぬ」の節子もモデルであるには相違ないと思う。冒頭の、絵を描く場面からしても。
    雪の中、菜穂子が突然サナトリウムを抜け出してくる場面は、映画の中でもとりわけ印象的だった。必死さが切なかった。小説「菜穂子」の菜穂子も、突然同様の行動に出る。何かを変えるきっかけが欲しいと願う思いもまた、切実なものだ。彼女は、夫が一緒に暮らそうと言ってくれるのではないか、とひそかに期待するが、願いは叶わない。それを言ってくれるのは、映画の菜穂子の夫(この時点では婚約者か…)だ。
    一方で、小説「風立ぬ」を読むと、考えてしまうのだ。設計士としての十年が、この十年でなかったら。映画「風立ぬ」の主人公はきっと、小説「風立ぬ」の主人公が節子にずっと付き添っていたように、菜穂子とともにサナトリウムで暮らしただろうと。それは菜穂子の願いでもあったかもしれない。
    映画「風立ぬ」の菜穂子は小説「菜穂子」の菜穂子の一瞬の夢であり、小説「風立ぬ」の節子は映画「風立ぬ」の菜穂子の儚い夢であり、けれども、病を抱えていようが随分気まぐれであろうがしっかと前へ進んでいく小説「菜穂子」の菜穂子は、2人にとっては夢の夢であったかもしれない。

    名作は読むたびに少し印象が変わるもの。またいつかきっと読み直すとして、同じ印象は二度と残らないのでしょう。映画に引き摺られながら読んでみるのも、再読ならば良いものです。

  • 山口百恵主演の映画を観た後に、原作を読んでみた。
    たぶんジブリの風立ちぬを想像してると痛い目にあう。はず。
    ちゅーか、ジブリの後半あたりがこの話かも…
    とりあえず純愛。
    映画よりもジブリよりも、やはり本は純粋。
    サナトリウム(末期の保養施設)に新婚ホヤホヤだけど
    そこから暮らしが始まり、そこから命が終わる。
    終わる場面など存在しないのだけど、愛とはなんぞや
    という「私」と節子のやり取りの中で
    自分がこうしたい、あぁしたいという感情がもろに出てるというか。
    “人間に大きな衝動を与える出来事なんぞと云うものは却ってそれが過ぎ去った跡は何んだかまるで他所の事のように見える”
    何という素晴らしい言葉。
    そうだ、確かにそうだなと何度も思った。

  • 死と常に隣り合わせ。とてもきれいな恋愛小説。

  • ※ジブリとは別です

    夜、朗読したくなる本。

    サナトリウムと言うモチーフ、好きです。
    良いのか悪いのか、ジェンダーについて時代を感じるかも?

  • 完全に2人の世界、という設定は他の本でもありますが、これは個人的には好きになれませんでした。残念。

  • 場所も登場人物もわずかなのに豊かな表現と切なさが身に沁みる。古い文体は万人向けではなく、物語は特に何も起きないので星は少なめです

  • 『風立ちぬ』
    ジブリの映画は観ていないのですが、あらすじだけはなんとなく知っていて、
    飛行機設計者のお話なんだよなぁと思って読んだら、
    全然飛行機設計者が出てこなくて、
    主人公はたぶん小説家っぽい感じの人で、
    ヒロインの名前も菜穂子じゃなくて節子という名で驚きました。
    ヒロインの節子さんは病気のためにサナトリウムに療養していて、
    主人公はそれに付き添っています。
    死がすぐそばにある状況で、今が幸せだと言っている二人がなんとも言えず、
    文章には書かれていない二人の心情を想像すると切なかったです。

    『菜穂子』
    この作品はすごくバラバラバラっとしている印象です。
    菜穂子の母親の手記から始まり、それを読んだ数年後の菜穂子の描写があり、
    菜穂子の幼なじみの描写があり、さらに菜穂子に戻るというような構成で、
    章ごとに独立しているとも言えるし、
    それを通して読んでいくと菜穂子という女性の少女時代から大人になった後の姿が浮かび上がります。
    この菜穂子の心情というか、ぽろっと思ったことを書いてある部分にすごく共感しました。
    改めて、女心って複雑ですよね。

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風立ちぬ/菜穂子 (小学館文庫)の作品紹介

今に伝えたい、時代を超えた普遍の愛の形

宮崎駿監督「風立ちぬ」が大ヒットし、再び注目を集める作家・堀辰雄。ぜひ若い人にも、映画を観るだけでなく、堀辰雄の愛にあふれる作品世界に触れて欲しいと、刊行しました。
この文庫に収録されている作品は、「風立ちぬ」と「菜穂子」。映画のモチーフとなった「風立ちぬ」の物語を楽しめると同時に、映画「風立ちぬ」の主人公の名前となった「菜穂子」という作品を併せて読める、他にはない文庫となっています。堀辰雄の作品世界のみならず、宮崎監督へ思いをはせながら読んでみるのは、いかがでしょうか。
カバーは、累計1200万部を誇る大ヒット漫画「僕等がいた」を執筆された小畑友紀氏にお願いし、堀辰雄の世界を美しく透明感溢れる、そして今までにない装画で飾ってくださっています。
明治、大正、昭和、平成という時代の流れは変わっても、人を愛するという気持ちに違いがないということ、誰かを守ることで、自分が守られ強くなれることを感じる作品です。どうして今、堀辰雄作品なのか、是非一度手に取って読んでみてください。


【編集担当からのおすすめ情報】
以前、読んだはずの「風立ちぬ」。今回、再読にもかかわらず新たな発見の連続でした。全体を取り巻く透明な空気感、一途な思い、文体も物語も登場人物もすべてひっくるめて、2人といない堀辰雄という作家の溢れんばかりの才能を感じます。そして、この本を刊行するにあたり、初めて読んだ「菜穂子」。「風立ちぬ」と、全く違う作品世界が繰り広げられています。この二つの作品と小畑友紀さんのカバー、新しい堀辰雄の世界を感じて欲しいです。

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