祈りの回廊 (小学館文庫 G の- 2-1 VISUAL SERIES)
- 小学館 (2004年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094115710
感想・レビュー・書評
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野町先生の写真には迫りくるものがあります。
そのようなものを追体験したい方には本当にお勧めします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宗教が人を動かしうるポテンシャルの大きさを改めて知った。とりわけ、メッカでおおぜいの人が集まった広場を尖塔(ミナーレ)から見下ろしたような写真が素晴らしかった。あれは本当に圧巻だ。
そうしたエネルギーの大きさも本質だけれど、このエネルギーが結局排他性(他の宗教との対立)をもたらしているのだろうと思うと、問題は簡単ではあるまい。一方で、他宗教との対話を唱えたヨハネ・パウロ2世(ローマ法王)とか、牧歌的な仏教国ブータンの豊かの生活のことも知り、また少し、この世界も捨てたものではないと思うのである。 -
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チベットのチベット仏教徒、イスラム教の聖地メッカとメディナの イスラム教徒、エチオピアの古代ユダヤ教直系のキリスト教徒、カトリックの 総本山ヴァチカン。巡礼し、祈る信者達の写文集。 115点の写真が見とれてしまうほど、とてもきれいです。
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(2006.01.23読了)(2006.01.15購入)
活字が好きで、暇があれば活字を読んでいますが、さすがにくたびれることがあるので、そういう時は、写真や絵の多く入ったものを見て息抜きをします。
野町さんのものは、エジプトに行くときに「ナイル」を読みました。今回が二冊目ということになります。「チベット」「メッカ」「エチオピア」「ヴァチカン」と今まで撮ってきて、それぞれ発表してきたものを宗教の聖地と言う観点から一冊にまとめたものです。
チベットは仏教、メッカはイスラム教、エチオピアとヴァチカンはキリスト教です。
風景も人物も、我々の日常ではお眼にかかることのない強烈な印象を残すものです。自分でも写真は撮るけど、この本に収められているようなものは、とても撮れません。
●チベット(8頁)
ヒマラヤの彼方にチベット高原が広がっている。平均標高3500メートル、日本の約4.5倍の国土は、谷沿いの農地を除き、わずかな牧草が芽吹く寒冷高地が大半を占める。人々は高地に適応したヤクに依存して放牧に生きている。
・カイラス山(16頁)
仏教の宇宙観で、須弥山と呼ばれるのが西チベットのカイラス山のことです。
カイラス山とマナサロワル湖は、インドで誕生した仏教、ヒンズー教、ジャイナ教、それに仏教以前からチベットに栄えていたボン教の聖地として、熱烈な信仰対象となってきた。
・カイラス山巡礼(25頁)
一周52キロの山道の巡礼路を、チベット人たちは十数時間をかけて右回りに巡り、夕刻に憔悴してキャンプ地に戻ってくる。(52キロを16時間かけて歩いたとすると1時間当たり3.25キロのスピードになります。標高5千メートルの山道ですので、驚異的な速さです。五体投地でお祈りをしながら巡る人もいますが、その場合は2週間かかる。)
●メッカ(86頁)
イスラームの信徒数は、現在約12億人、全地球人口の6人に一人がメッカを軸とした共同体に属している。
(メッカのカアバ神殿の周りに集まった100万人の大群衆が祈る様を地上96メートルのミナレット(尖塔)の上から撮影した写真には驚いた。一人一人の人間が太い糸で織り上げた布の糸のように見える。)
・ハッジ(104頁)
ハッジを前に、巡礼者は身分や属性を表す一切の衣服やアクセサリーをはずし、定められた場所で沐浴して身を清めた後、イフラームと呼ばれる縫い目のない二枚の白布からなる巡礼着に着替えなくてはならない。靴も脱ぎ、ゴム製のサンダルに履き替える。これは、属性をすべてはずし、裸の一個人に返って一対一で神と向き合うことを意味している。
●エチオピア(142頁)
エチオピアの伝承によると、「旧約聖書」が語る、ソロモン王に会うためにエルサレムに登ったシバの女王とは、エチオピアの女王で、その時ソロモン王との間に身籠った王子、メネリク一世が後にエルサレムを訪れ、神殿の聖櫃を偽物とすり替えエチオピアに持ち出したとされる。(シバの女王は今のイエメン辺りと言う説もある。)
・古代エチオピア(149頁)
エチオピアは、ブラック・アフリカよりも、紅海を隔てたアラビア半島との交流が歴史的にも濃密で、そもそも古代エチオピアの文明は、南アラビアから移住してきたセム族によって始まった。
・エチオピアの宗教(153頁)
エチオピアの全人口の45%がイスラーム教徒、キリスト教徒は40%である。エチオピア北部の山岳に住んでいた約5万人の黒人のユダヤ教徒は、1984年以来の飢餓に直面する中で、イスラエルに移住してしまった。
●関連図書
「写文集 ナイル」野町和嘉著、講談社文庫、1997.03.15
著者 野町 和嘉
1946年 高知県生まれ
1972年 サハラ砂漠取材
1984年 「バハル」「サハラ悠遠」により土門拳賞を受賞
(「BOOK」データベースより)amazon
地球上には多様な“祈りのかたち”がある。人々はなぜ祈り、かくも篤い信仰に生きることができるのだろうか。過酷な風土に生きる「チベット仏教」、イスラームの二大聖地「メッカ・メディナ」、古代ユダヤ教直系のキリスト教が息づく「エチオピア」、カトリックの総本山「ヴァチカン」。“風土と宗教と人間”を軸に、壮大なスケールの作品を発表し続ける写真家・野町和嘉の代表作を一冊に。祈りの熱狂と厳しさ、そして優しさを鋭く捉える一一五点の力強い写真と、現場の臨場感を伝える書き下ろしエッセイを収録。人と宗教の“今”を考える写文集。 -
祈ることって美しいですね。 この本の最後の一文です。「多様な思想が共存できるところから、生き延びてゆくための知恵は生まれるのであろう。」
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この人の本はじめてちゃんと読みました。やっぱ写真がいいわ。他のも読みたいです。
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日本人にとっては曖昧だけど、世界には宗教は非常に大きな意味を持っている。そんな各国の聖地を巡るドキュメント。結構レアな場所やイベントにいっているので、記録としても貴重。写真もすばらしい。