- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094512984
作品紹介・あらすじ
サイオン島には「魔犬」がいる-。ヴィクトリア海海戦より半年後、帝政天ツ上軍の撃墜王・千々石は、神聖レヴァーム皇国軍の飛空士たちにそう呼ばれ恐れられていた。しかし、物量に劣る天ツ上の兵士たちは、レヴァーム軍の果てしない攻撃を前に次々と命を散らしてゆく。そして、ついに東進を開始したバルドー機動艦隊。迎え撃つべく、空母「雲鶴」に再び乗り込んだ千々石を待ち構えていたのは、最新鋭科学兵器に守られた海の要塞と、あの男の技だった…!魔犬と海猫-ふたりの天才は決着を求め、天空を翔る!「夜想曲」完結。
感想・レビュー・書評
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一人の飛空士が戦況を一変させる…というのはファンタジーに近い話なんだろうけど、良かったです。
戦争は二度と起こってほしくないし、あって良かったとはちっとも思えないけど、戦争を戦っていた人たちの思いは、もっと知っていなければならなかったのかな、と思いました。
大体聞くのは、こんな被害にあった、こんなひどい目にあった…という話ばかりなので、戦争を戦った人がどんな思いでいたのかということを考えたことがなかったです。
普段ならば目を背けたくなるような話なのですが、その人たちの努力の上に今の生活があるのだと思うと、感謝していかなければならないことですよね。
…って、完全に過去の戦争のことを考えていますが、このお話自体は架空の世界の架空のお話です。
一人の飛空士の生き様…という言い方が本当に似合う。
何度も泣きそうになりました。
ホント、このシリーズにはうかうか通勤中には読めませんね(苦笑)。
「左捻り込み」の飛び方の軌道がイマイチわからない自分は、読解力がないなぁ…と思います…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かっこ……よすぎだろ!(ToT)
泣いた。その清々しさと誇り高さに、幾度となく本を持つ手が震えた。
帝政天ツ上と神聖レヴァーム皇国の
己の全力をかけて戦った中央海戦争
その決着がつく時が、ついにきた。
次第に物量で押しはじめてきたレヴァーム軍に
疲弊していく天ツ上軍の飛空士たち。
極限状態にありながらもその胸に燃える闘志と誇りは消えることなく、彼らを奮い立たせる。
空では無敗を誇る千々石も、度重なる出撃に疲労の色は濃い。
しかし、満身創痍の千々石の前に
とうとう
再会の思いに焦がれて止まなかった男の、その両翼が煌めくのだったーーー。
追憶を読んだ時には、ただひたすら敵対するものとして恐怖の対象だった真電と、天ツ上に繰り広げられたドラマを見て
悲しくて仕方がなかった
彼らのうちに宿る思い、願い
そしていかにレヴァームが差別の眼差しでこちらを見ていたのか
ひたすらショックだった
戦争は一元的ではない
誰が諸悪の根源というのでもない
起こるべくして起こったただの事象としての戦争にもはや意味などなく
無駄に命が散華していく
ほんとに戦争は虚しいものだと、読みながら痛感した
それでもその戦いの空に、流れる血に、交わされる意思のやり取りに
言い様のない格好よさを覚えて高揚する自分は、やはり残酷なのだろうかと
ちょっと思ってもみたり
あんなにかっこよかったシャルルにはつい
必死で、来ないで!!と祈ったw
そして何度となくファナに、早く戦争を終わらせてくれと願った…
これ以上誰かが犠牲になる前に…
虚しいばかりに命は散って
海も空も大地も、砲弾と鉄屑に汚れ
ほんとに失うばかりで何も残らなかった戦争だけど
読了後のこの清々しさは、いったいなんだろう…
彼らと駆けた空はすぐ目の前に見え、彼らの命の軌跡を刻んでいる。
どこまでも変わらず続く
自由の青い空 -
殺し過ぎ、殺され過ぎで、戦時中の話だから仕方ないのかもしれないけれど、戦闘のロマンも含め、これを楽しんだり格好良いとして読むことに違和感があった。最後のまとめ方にも肯定しているみたいでモヤッとしてしまうのは、でも、史実を元にしていると思われる辺り、わたしの受け取り方が間違っているのかなと更にモヤッとする。魔犬vs海猫の部分だけは生死を懸けているのを少し忘れられて、一対一の誇りの勝負として抵抗も薄くて、読み易く、森博嗣さんのスカイクロラシリーズを連想したりした。
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別の作品では悪役だったキャラが主人公。ちくしょう、嫌いになれなかった。むしろ好きだ。
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ライトノベルらしからぬライトノベル、というのが一番の感想
最近目頭が熱くなる事が多いのも要因かもしれませんが、戦争というものを重すぎず、かといって軽くと言う訳でもなく絶妙な重さで綴ったものだと思いました
読んだ者にしかわからない何とも言えない複雑な気持ちがあります
おすすめの本として周りに薦めたい本です -
作者の趣味思考をフル稼働させた作品。
それだけに主人公・千々石への愛が半端ない。
戦場を駆けるために生まれたこの男、生き様がアツい。
宿敵・海猫こと狩野シャルルとの前時代的な対決模様もこれまたアツい。
中央海戦争という荒波に立ち向かった、天ツ上という船は沈むことなくその航海を終えることができたのか、それは読んで確かめてほしい。 -
天ツ国人を見下し圧倒的な物量で攻勢をしかけるレヴァーム海軍司令長官のヴィルヘルム・バルドーに対して、千々石たち「音無航空隊」はすくない人員で善戦をつづけます。その後、千々石と会えないことを悲しむ美空から波佐見真一(はさみ・しんいち)に面会の申し出があり、波佐見は彼女のために二人の仲をとりもつことになります。
一方で、海猫によって千々石の同僚たちは戦死し、バルドーが千々石の希望にこたえて海猫との決戦の舞台が用意されたことで、戦いの舞台にみずからの身をささげるという千々石の決意はかたまります。
戦闘シーンにかんしてはわたくしには批評する能力はありませんが、千々石と美空の恋愛描写については、ライトノベルらしく仕上げられているように感じました。ただ、個人的な意見をつけ加えるならば、最後のシーンで新しい命に特定の意味づけをあたえることにはすこし戸惑いをおぼえてしまうところもあります。 -
空にしか生きられない男たちの物語。
今私たちが平和に暮らしていけるのは昔の人たちが戦争で辛い思いをしたから。
私たちに同じ思いをさせまいと世界を変えてくれたから。
この物語はフィクションだけど、そんなことを思い出させてくれた。