永遠の詩(7) 萩原朔太郎

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  • 小学館
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784096772171

作品紹介・あらすじ

現実を超えた天上的な美しさと子供のような残酷さ。内省と虚無。言葉にできないものをこそ、詩にあらわそうとした詩人の傑作を現代仮名遣い、鑑賞解説付きで収録。

感想・レビュー・書評

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  • 萩原朔太郎の詩集ですね。
    萩原朔太郎の詩集を見たのは久しぶりにでしたが、飄々としたイメージがあったかのように感じていたのが、一変しました。
    森鴎外も認めた才能は確かだと思います。今の時代に読んでみてもさほどの古さを感じないように思います。
    解説の高橋順子さんも「近代詩と現代の、美果がともにみられよう。」と述べられています。
    朔太郎は『詩は人間の言葉で説明することの出来ないものまでも説明する。詩は言葉以上の言葉である』と《月に吠える》の序文で語っています。
    読んでいてかなり内省が激しく、時として無力感の投げ出しのような言葉で綴られて虚無感を感じさせられます。が、美しい言葉使いもあり、詩の表現にかなり試行錯誤を詩人は重ねたようにも見受けられます。
    高橋順子さんは、また、
    「 誰にも書けない独得の文語体で、詩人ゆえの悲劇を言語化した。
     生涯にわたって、詩の言葉と闘い、言葉にいのちを吹き込んだ無二の詩人だった。」と結ばれています。

     虚無の鴉
     
     我はもと虚無の鴉
     かの高き冬至の屋根に口を開けて
     風見の如くに咆号せむ。
     季節に認識ありやなしや
     我の持たざるものは一切なり。

    詩人のまさに吠えるような詩集の一部に圧倒されました。
    このシリーズは、朔太郎の全詩より五十八篇を選ばれているそうです。もとより一部にすぎませんので、機会があれば各詩集を読んでみたいですね。

  • 萩原朔太郎は、高校の頃に憧れて、岩波文庫を他の何人かの詩人とともに買って読んでいた記憶があります。
    解説の高橋順子さんは巻頭の「言葉以上の言葉」という文章で、日本の近・現代詩は萩原朔太郎抜きにしては何も語れないといってよい。生涯にわたって、詩の言葉と闘い、言葉にいのちを吹き込んだ無二の詩人だったと歴史的にも内容的にも大変褒めていらっしゃいます。
    しかし、今、また読み返してみると、これは一介の、田舎の高校生が読んでわかるといった詩ではないのではなかったのかという気がものすごくします。
    だいぶん背伸びをして、カッコいいからとか(誰かに読んでいることを話した訳ではありませんが)そういう浅はかな気持ちだったのではないかと思いました。
    なぜなら、今読むと、はっきり言ってかなり病的な詩が多く含まれているような気がします。
    文学的価値とか、そういう難しいことを考えずに読むとですが。
    もちろんもの凄いほとばしる才気をかんじることは確かなのですが。


    「遺伝」
    人家は地面にへたばって
    おおきな蜘蛛のように眠っている。
    さびしいまっ暗な自然の中で
    動物は恐れにふるえ
    なにかの夢魔におびやかされ
    かなしく青ざめて吠えています。
      のをあある とをあある やわあ

    もろこしの葉は風に吹かれて
    さわさわと闇に鳴ってる。
    お聴き! しずかにして
    道路の向こうで吠えている
    あれは犬の遠吠えだよ。
      のをあある とをあある やわあ

    「犬は病んでいるの?お母さん。」
    「いいえ子供
    犬は飢えているのです。」

    遠くの空の微光の方から
    ふるえる物象のかげの方から
    犬はかれらの敵を眺めた
    遺伝の 本能の ふるいふるい記憶のはてに
    あわれな先祖のすがたをかんじた。

    犬のこころは恐れに青ざめ
    夜陰の道路にながく吠える。
      のをあある とをあある のをあある やわああ

    「犬は病んでいるの?お母さん」
    「いいえ子供
    犬は飢えているのですよ。」


    <解説より>
    犬の遠吠えを詩人は「のをあある とをあある やわあ」と聞く。非常に耳のいい人である。薄気味悪いが面白い。犬が「あわれな先祖のすがたをかんじた。」というのは、つまり、犬は犬の亡霊を見たということだろうか。
    『月に吠える』の犬よりも確かな線描をもち、影を濃くしている犬である。「犬は病んでいるの?」と子供は母親にたずねるのだが、健康で強圧的な母親は、野良犬だから飢えているに決まっている。と思うのである。実母の面影があるか。



    「旅上」「冬」「殺人事件」「陽春」「愛隣」「見しらぬ犬」「閑雅な食慾」「蝶を夢む」もよかったです。


    萩原朔太郎(はぎわら・さくたろう)
    1886年(明治19)~1942年(昭和17)
    群馬県前橋市に医家の長男として生まれる。
    文学や音楽の才能に恵まれながらも、
    学業では中退を繰り返す。1917年刊の
    第一詩集『月に吠える』は大きな反響を呼び、
    以後の日本の近現代詩に深い影響を与えた。

    • まことさん
      やまさん♪
      お薦め本ありがとうございます!
      今、調べたら、図書館で貸し出し中になっているので、少し先になると思いますが、読んでみます♪
      やまさん♪
      お薦め本ありがとうございます!
      今、調べたら、図書館で貸し出し中になっているので、少し先になると思いますが、読んでみます♪
      2019/11/12
    • やまさん
      まことさん
      おはようございます。
      いいね!有難う御座います。
      やま

      【レビュー番外】
      続揺(ぞくよう) 禁裏付雅帳シリーズの9...
      まことさん
      おはようございます。
      いいね!有難う御座います。
      やま

      【レビュー番外】
      続揺(ぞくよう) 禁裏付雅帳シリーズの9作目です。
      上田秀人さんの本は、「勘定吟味役異聞」シリーズから読み始めたのかな?
      はっきりは覚えていませんが、旗本・水城聡四郎(本の主人公)が最初だったと思います。
      新刊が出たら読んでいますから、もう10年以上読んでいると思います。
      読んでいてあまり面白くないが、ついつい読んでいる、読める字の大きさの本は、ほぼ全て読んでいると思う。
      中でも好きなのは、「妾屋昼兵衛女帳面」シリーズと「百万石の留守居役」シリーズです。
      妾屋昼兵衛女帳面シリーズは、完結していますが。
      百万石の留守居役シリーズは、まだ続いています。
      上田秀人さんの本は、物語を楽しむというよりは、人の心の裏を見るよう本が多いです。
      この本は特に、人の心の動きを書いています。
      読後感が良いとは言えない本です。
      しかし、出版されるとすぐ読んでいます。変な作家です。
      2019/12/11
    • まことさん
      やまさん♪こんにちは!
      こちらこそ、ありがとうございます。
      やまさんの、おかげで、よく知らなかった、時代小説の世界に少し詳しくなれそうで...
      やまさん♪こんにちは!
      こちらこそ、ありがとうございます。
      やまさんの、おかげで、よく知らなかった、時代小説の世界に少し詳しくなれそうです(*^^*)
      2019/12/11
  • 個人的にはあまりぴんと来ないというか、わからなかった
    解説があるのはありがたかったけれど、詩そのものより解説が頭に残ってしまう

  • 最近、詩に興味を持ち始めて図書館で見つけた。
    「竹」「こころ」など教科書で読んだことがある詩のイメージがあったけど、もっと生々しい感じの詩も書いてたんだと知って驚いた。

    「雲雀料理」「亀」「閑雅な食慾」「虚無の鴉」は意味がよくわからないけどなんかかっこいいと思った。
    もっと年を取った時に腑に落ちそう。

    「くさった蛤」「死なない蛸」はなんか気持ち悪いけど目が離せなくなる。何度も読んでしまう。

    「青猫」はおしゃれ。

    萩原朔太郎の詩をもっと読んでみたいと思った。

    ブログでもう少し詳しく感想を書きました。
    https://kon-yorimichi.com/imawoikiru/

  • こころをば何にたとえん を表紙にもってくればよかったのに!と思いました 笑
    今まで読んだ詩人さんのなかで一番ピンとくるひとでした。
    「言葉にならないものを言葉にしようとした」という説明がすべてのような気がします。
    表現が大変たおやかですね。
    第一詩集の「月に吠える」をまとめて読んでみたい…

  • 高橋順子さんの解説がなんだかあまり気に入らなかった。

  • 病みついた感性。
    子規によって写実に進んだ和歌短歌とは異なり、近・現代詩は朔太郎によって心象を描き出す口語詩になったのね。

  • 【詩をたのしもう(日本編)】
    日本の近・現代詩史に燦然と輝く詩人たちの作品を選り抜きでご紹介します。
    新学期、新生活にお気に入りの詩人をみつけてみませんか?

    <閲覧係より>
    萩原朔太郎(1886-1942)。
    「詩は言葉以上の言葉である」とは第一詩集『月に吠える』の序文の言葉。まさに朔太郎の詩は言葉の力を引き出すことで、聖櫃かつ残酷な静けさやユーモアに満ちています。
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    所在番号:911.568||エイ||7
    資料番号:10205743
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  • このシリーズ好き。
    萩原朔太郎に関しては筑摩書房のが一番好きだけど。
    でも手軽に入ってもらうにはこれがお勧めです。

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著者プロフィール

萩原朔太郎
1886(明治19)年11月1日群馬県前橋市生まれ。父は開業医。旧制前橋中学時代より短歌で活躍。旧制第五、第六高等学校いずれも中退。上京し慶応大学予科に入学するが半年で退学。マンドリン、ギターを愛好し音楽家を志ざす。挫折し前橋に帰郷した1913年、北原白秋主宰の詩歌誌『朱欒』で詩壇デビュー。同誌の新進詩人・室生犀星と生涯にわたる親交を結ぶ。山村暮鳥を加え人魚詩社を結成、機関誌『卓上噴水』を発行。1916年、犀星と詩誌『感情』を創刊。1917年第1詩集『月に吠える』を刊行し、詩壇における地位を確立する。1925年上京し、東京に定住。詩作のみならずアフォリズム、詩論、古典詩歌論、エッセイ、文明評論、小説など多方面で活躍し、詩人批評家の先駆者となった。1942年5月11日没。

「2022年 『詩人はすべて宿命である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩原朔太郎の作品

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