Art 1 誰も知らない「名画の見方」 (小学館101ビジュアル新書)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098230112

作品紹介・あらすじ

「名画」には、絵画鑑賞をより楽しく充実させるための、「見方」があります。本書では、八つのテーマに分類された「名画の見方」に基づき、日本を代表する美術史家である著者が、巨匠たちの手になる名画の数々を例に、具体的にわかりやすく解説。「名画」は、なぜ「名画」と呼ばれるのか?「巨匠」は、いかにして「巨匠」になったのか?本書を読めば、名画と巨匠にまつわるそれらの疑問が、目から鱗が落ちるように、解決します。美麗な図版満載。

感想・レビュー・書評

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  • 大原美術館の館長である高階秀爾氏(2020年5月現在)が、小学館版『週刊西洋絵画の巨匠』全50巻(2009年1月~2010年2月刊)で、毎号連載形式で発表されていた小論がもとになっています。全50巻ということで、50名の西洋画家が取り上げられていましたが、本書ではそのうちから24名が選ばれています。そして、3名×8テーマで分類された「絵の見方」についてさまざまな視点から解説されています。
    例えば、第4章「見えないものを描く」では次の3名で構成されています。
    ・科学者の目で美を見出したレオナルド・ダ・ヴィンチ
    ・人を物のように描いたセザンヌの革新的な絵画
    ・音楽を表現したクリムトの装飾的な絵画
    このように国や時代や〇〇派などでくくられていません。各章ともに圧倒されるような文字数ではありません。ほかの書籍ではあまり横並びにされない画家同士のつながりのため、心地の良い場面転換のように読み進めることができます。
    また、いわゆる大御所だけを集めていないのもおもしろいです。例えば、印象派の代表とも呼べるクロード・モネは取り上げられず、ベルト・モリゾがいたりします。
    記述内容をもとに年表化してみたのですが、はじめの一行は「1390年頃ヤン・ファン・エイク誕生」となり、最後は「1973年ピカソ死去」となりました。
    さて、勉強不足の私が本書で発見させてもらったのが、ヒエロニムス・ボスです。目次は第2章「時代の流れと向き合う 時代を代弁する告発者ボス」。
    目に飛び込んできた作品が、《快楽の園》祭壇画(右翼中央部分)。第一印象はシュールレアリスムみたいで情報量がすごい、でも制作年は1505~16年頃。しかも写真で紹介されていたのは「地獄」と呼ばれる右パネルの中央部分のみ。実際には3枚セットの三連式の作品でプラド美術館で展示されています。
    全般的に作品写真も多くきれいに印刷されており、解説も作品主体だけではなく、画家の背景を探るものであったり、なるほどこんな風に名画と向き合う方法もあるんだなと教えてくれる1冊です。

  • クラシック音楽の奥深さを知ったときと同じようなわくわく感があって、難しく考えないで絵を楽しめそうと思った。美術も音楽も同じ芸術、形が違うだけ、親しめそうな気がする。

  • 最近若手(?)美術史家の、木村泰司、池上英洋、中野京子などの「名画の見方」の類の本が多く出回っているが、やはりこの道の大御所である高階秀爾のオーソドックスな西洋絵画の入門書は、一味違う感じがしました。

    冒頭に「美術の専門家にとっても、画家について、作品について、調べれば調べるほどわからないことばかりと言ってもいい。だが、そのようにして多くの作品に接し、互いに比較し、また歴史や背景を探っていくうちに、まるで山道で突然、眺望が開けるように、今まで気づかなかった新しい視点が浮かび上がってくる。それは思いがけない細部の特質であったり、歴史とのつながりや、あるいは画家の仕掛けた密かな企みなど、さまざまだが、そのことに気づいて改めて絵を見直してみると、そこに新たな発見があり、理解が深まり、喜びと感動は倍加する。『絵の見方』というようなものがもしあるとすれば、そのような視点を見出すことにほかならないだろう」とある。
    こういう長年に渡り絵画を見つめてきた人だから出来る濃厚な入門書に仕上がっている。

    取り上げられているのは、ルネッサンス前後~現代にいたる24人の画家が取り上げられている。
    不満だったのは「ミケランジェロ」が取り上げられていないことだが、ミケランジェロ本人はシスティーナ礼拝堂天井画を描いた時のサインに「彫刻家・ミケランジェロ」とサインしているなど、常に彫刻家であることを自認していたが、著者もミケランジェロは画家ではないと判断したのであろうか?

    絵画に興味のある人には、是非一読をお勧めします。

  • ちょっとした画集としても楽しめた。

  • 『ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?』がとても面白かったので、これも読んでみた。
    『ダ・ヴィンチ…』よりは知っていることも多かったが、やはり面白かった。
    基本的に絵画を全く知らない人向きではない。が、ちょっと知っているくらいの人にはちょうどいい。
    例えばボッティチェリと言えば「春」や「ヴィーナスの誕生」が代表作だと知っているくらいの。
    ボッティチェリが生きていた時代、この2つはメディチ家の所有物だったので、一般の人は見ることはできなかった。だから、同時代の人々が彼の代表作だと考えていたのはシスティーナ礼拝堂の壁画であり、これは、「ヴィーナスの誕生」とは違って力強く男性的なイメージである。時代によって代表作は変わるし、画家のイメージも変わる。
    こういった「代表作」や「○○派」という先入観があると見えてこないもの、「新しい」と評価される画家のどこが新しいのか、などを分かりやすく説明してくれる。
    取り上げられている画家は有名人ばかりなので、見たことがある絵ばかりだから、納得できる。

    個人的にはカラバッジョがミケランジェロの技法を用いながら、神の空間と人間の空間を分けない、より臨場感のある独自の描き方をし、見るものに「奇跡の場面に立ち会って」いるような衝撃を与えるというところ、ブリューゲルの描く農民が生き生きしているのは、経済の担い手が王侯貴族から市民に移ったからだ、とかが「なるほど!」だった。
    著者も書いている通り、こういったことを知って絵を見る「視点」を持てることで、さらに深く絵画を楽しめる。絵画好きなら読んで損はない。

  • ①最もらしく見せる工夫

    フェルメール「真珠の耳飾りの少女」、目に白いハイライトで生命感を増す→今でも代表的なイラスト技法。
    →こちらが見られていると錯覚する。こちらの世界と繋ぐ

    こちらを見ている目を描いている

    ヤンファンエイク「ファンデルパーレの聖母子」瞳に窓の反射を書き込む。

    「ロランの聖母子」→画面奥に窓の外を見る子供たち。鑑賞者の視線も、奥の風景へと誘導されていく仕組み

    メインとは別に、サブに仕掛け。

    「アルノルフィーニ夫婦の肖像」中央の丸鏡に、来訪者が写っている。

    床を下に向けて広げる→現実世界との接続のため

    ベラスケス→背景を使わずに、わずかな影で奥行きを表現。

    細部は意外と適当。描写ではなく、印象で描いている。なのにリアル。

    ②時代の流れと向き合う

    ゴヤ、フランス革命の動乱の最中、パトロンを変えつつ活動。我が子を食らうサトゥルヌス

    ミレー、待つ人や落ち穂拾いなど。農民画家。宗教画、歴史画に比べて低く見られた。斬新な題材

    ボスの快楽の園。腐敗したキリスト教批判。

    ③代表作の舞台裏

    ピカソ「絵画は私よりも強い、絵画はいつも自分を引き回して好きなようにさせる」
    →人が作品の奴隷になっている

    ゴーガン「我々はどこから来たのか…」

    イブ主題。西洋文明のタブーである母親情景。生命讃歌。生命の象徴と結び付けられる。

    ボッティチェリ「モーセの試練」

    一つの画面に複数人登場。異時同図法。

    ④見えないものを描く

    レオナルド「自然は絶えず変化する。美は変化の中にある」
    →輪郭線を描かない手法。『スフマート』物体に明確な境界はない。

    クライアントから評価が非常に高いルーベンス

    『キリスト降架』など。

    工房を運営、弟子と分業体制。

    依頼を受ける→下絵(つまりはラフ)を描く→工房に回して完成。修正も加える。

    ドガ、ドラマティックな一瞬を、計算尽くで演出する。

    ルノワール、色白でふくよかな女性から好み? 屋外での肖像画。繊細で美しい、明るい主題。黒を効果的に用いる。元々陶磁器への絵付け職人。産業革命で失業。

    ムンクは画家の名前。
    ムンクの「叫び」である。

    汝、自らの人生を語れ「クリスティアニア・ボヘーム」という前衛的な芸術団体に所属。

    ミレイ(オフィーリア)

    王立アカデミーに反抗→結局会長になる

    敵対勢力の重要人物にあえて権威を与え、仲間に引き入れ、相手方の崩壊を招く。

    ⑦受け継がれるイメージ

    ミレーの庶民絵画『昼寝』とか。好き。

    ウルヴィーノのヴィーナス。リアルな女体画。)

    ⑧新しい時代を描き出す

    モリゾ。女性をテーマにした女性画家。女は画家になれないという社会的制約。

  • 2022.12.24 サラッと読み終えた。とても参考になったが、ところどころ少し泣けた。

  • 昔からもっていたが、大塚国際美術館に行ったのをきっかけに読了。絵もいろいろな見方をしっていると鑑賞も面白くなりそう。

  • 新たな視点を得ることが出来ました。
    ただ、初心者向けではないですね。
    時代があちこち行くよりも、
    年代順のほうが分かりやすいと思います。
    と、初心者のくせに思いました。

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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