夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

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著者 : 又吉直樹
  • 小学館 (2016年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098235018

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夜を乗り越える(小学館よしもと新書)の感想・レビュー・書評

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  • 「小学館よしもと新書」の第一弾となる書で、又吉直樹さんがそれはそれは
    真摯に文学と向き合い、読書論を展開している。
    これまでこの方の作品を読んできた人でも、この真摯さには胸打たれるだろう。
    難しい表現をさけて、丁寧に言葉を選んで紡ぐ姿勢には尊敬の念さえ抱く。
    それが、冒頭の言葉によれば『本を読む理由がわからない方、興味はあるけど
    読む気がしないという方々の背中を、頼まれてもいないのに全力で押したい』という
    本人の意思によるものだとしても。

    本当の自分と周囲からの評価とのギャップに悩みつつも笑いをとる快感を知った
    少年時代。
    その頃の内面の葛藤を和らげてくれた芥川や太宰の作品との出会い。
    『火花』誕生の舞台裏を振り返る章では、執筆状況を日々報告に行ったバーの
    マスターとの交流に、妙にじんとしたり。
    発表後、かつてのコンビ「線香花火」の相方が語った愛にあふれる感想も印象に
    残る。
    後半は近代文学のみでなく現代文学にもふれて、作家と作品の魅力を語っている。

    「登場人物の心情や世界観への共感だけが読書の喜びではない」と語るその部分は
    納得の章で、現在長くて苦しい夜を乗り越えようとしているひとの助けになると、
    読書はそういうものでもあると、最後までやさしく真摯に語り掛けてくれる。

    不思議なもので、読みつくしたはずの作品たちなのに、ここで紹介された文章を
    読むと今一度開いて読み返したくなってくる。
    うん、きっとそうするだろう。

  • 珍しく図書館から借りるのではなく自腹で購入しました。そこら辺のタイトルだけの新書よりも立派な内容で驚きでしたが、1,2章で読むのに時間がかかってしまった。(ひたすら過去形で書かれている文章がつらかった…マジでつらかった。)

    『第2図書係補佐』の読みやすさ、『新・四文字熟語』でのユーモアさとは違った面が書かれていて好感が持てた。

    4章の「僕と太宰治」で太宰作品に対する真摯な眼差しに つい泣きそうになってしまったし、まさか『夜を乗り越える』というタイトルがこの章につながると思っていなかったので驚いた。

    紹介されている本を手にしてみたいと思わせる力はさすがだなぁ…と思った。(けど町田康の『告白』の分厚さにひるんでしまった)。いつかは読んでみたいと思う作品が本棚に置きっぱなしなので、いつかじゃなくてまず手に取ってページを開いてみようと思いました。

    キラキラした想いだけではなく、黒い(悪魔な)本音も書かれていて(133ページあたり)嬉しかったし 感動した。欲を言えば紹介されている本が『第2図書係補佐』とかぶっているのが多かったのでちょっぴり残念だった。又吉さんお薦めの作品をもっと知りたいな。

    (本棚保存)

  • 生きていると、ただ夜が明けるという時間の経過が「乗り越える」という程の重みを持つことが誰にでもあると思う。長い人生を振り返ればただの一瞬でも、その一瞬を一人で乗り越えることはとても辛い。それを、会ったこともない、もしかしたら今は生きていない他人の言葉が支えてくれることがあるということ。本の存在、読書という行為の持つ力を様々な角度で、色んな言葉で伝えている本でした。又吉さんの36年の来し方、執筆の過程、そして何よりも受賞後の怒りにも似た葛藤が如実に書かれていて、それはこれまでの又吉さんからはとても珍しいことだと思います。
    これからも沢山の夜を乗り越えて、これからの時代で抱えるであろうより複雑な葛藤を、近い未来に、新しい作品として世に出してくれることを、何よりも楽しみに応援し続けます。彼の素直で複雑な文章は、ずっと味方でいたくなるような、不思議な気持ちになるんです。

  • 又吉さんが「なぜ本を読むのか」という問いに、真剣に向き合った1冊。
    丁寧だけれど話し言葉に近い文章のせいか、テレビでお話されているそのままの口調で頭の中で再生されました。

    読書家であることは知っていましたが、本当にたくさんの近代文学・現代文学を読みこんでいらっしゃいます。
    太宰や芥川を読みながら笑いやボケを意識したことはなかったので、その視点が新鮮でした。

    そして、それらの作品が又吉さんの表現の下地を作っていることもわかりました。
    本書を読みつつ、『第2図書係補佐』(幻冬舎)の巻末対談の「本をたくさん読んでいる人の中には変な海みたいなものが出来上がる」というお話を思い出しました。
    さまざまな価値観やわからないことも、とりあえず自分の中に取りこんで熟成させてみる。
    いろいろなものが混じり合い、互いに影響しながら形成される自分の素地を、これからも大切に育てていきたいと思いました。

  • 「又吉さんは目がきれい」
    年配の詩人の女性が云いました。
    又吉さんが芥川賞を受賞したニュースを話題にした時のことです。
    云われてみれば、たしかに又吉さんはきれいな目をしていると思いました。
    人間を、上辺ではなく、根本のところで信頼している。
    そんな人に特有の目ではないでしょうか。
    「だから『火花』のような小説が書けるのだな」と、それで合点がいったのです。
    私は又吉さんの芥川賞受賞作「火花」を読んで、いたく感動しました。
    お笑いに賭ける若者たちの情熱が、時に痛々しくもひしひしと伝わってきました。
    登場人物は、一様に器用に生きられない人ばかりです。
    だけど、作者である又吉さんが一人ひとりの登場人物に向けるまなざしは一貫して優しい。
    表面的に優しいのは世の中にいくらもあります。
    又吉さんの優しさはそうではなく、まるで身を賭すような献身的な優しさです。
    件の女性は続けて云いました。
    「だから、これからもいい作品を書いていくと思う」
    目がきれいだというのは、作家に必須の要件なのだと信じて疑わない様子でした。
    いつも通り、前置きが長くなりました。
    本書は、「お笑い界きっての本読み」としても知られる又吉さんが本の魅力について語り尽くした新書(小学館よしもと新書の第1号!)。
    一読して、又吉さんが途轍もない本読みだということが分かります。
    途轍もないというのは、単に多くの本を読んでいるということではありません。
    1冊1冊の本を、本当に丁寧に心を込めて読んでいるということです。
    特に、太宰治に対する愛は尋常ならざるものがあります。
    「人間失格」を読んだ人の多くがそうなるように、又吉さんもやはり主人公・大庭葉蔵に自分が重なったそうです(余談ですが同業者の大手新聞社の底抜けに明るい女性記者が「共感した」と語るのを聞いて少し驚いたことがあります)。
    「『人間失格』からは、太宰がこの作品を事実の垂れ流しではなく小説にしよう、物語として、小説という形式の力を使って真実に近づけよう、としている意識が伝わってきます」
    なんて、本当に深い読み方をしていると感服します。
    私は読んだことがないのですが、太宰に「芸術ぎらい」というエッセイがあり、こんな興味深いことが書かれていて括目しました。
    「創作に於いて最も当然に努めなければならぬ事は、〈正確を期する事〉であります。その他には、何もありません。風車が悪魔に見えた時には、ためらわず悪魔の描写をなすべきであります。また風車が、やはり風車以外のものには見えなかった時は、そのまま風車の描写をするがよい。風車が、実は、風車そのものに見えているのだけれども、それを悪魔のように描写しなければ〈芸術的〉でないかと思って、さまざま見え透いた工夫をして、ロマンチックを気取っている馬鹿な作家もありますが、あんなのは、一生かかったって何一つ掴めない。小説に於いては、決して芸術的雰囲気をねらっては、いけません」
    思わず粛然とする文豪の戒めです。
    又吉さんも肝に銘じて「火花」を執筆したことでしょう。
    そんなことも考えながら本書を読むと、本当に面白いです。
    本書ではこのほか、芥川龍之介や織田作之助、谷崎潤一郎、現代では町田康、西加奈子、中村文則ら影響を受けた作家とその本の魅力が、又吉さん自身の言葉で瑞々しく語られていて読ませます。
    個人的には、渇仰して止まない町田康さんについて書かれたところが最も興味を引きました。
    私は町田さんを伝統や形式に抗うアウトローと見做して敬愛していたのですが、又吉さんは「枝分かれしていった日本の文学の中で、町田さんは近代文学からの系譜を受け継いだど真ん中にいる小説家だと僕は思っています」と書いています。
    又吉さんが云うならそうでしょう、私の勉強不足で不明を恥じました。
    本がもっと好きになる特別な1冊です。

  • 本に命を救われたことはありますか?
    わたしはありますし、著者もそうだったようです。そういう本好きは是非手にとってください。

  • 困った。回りくどくて同じことをいろんな表現で言っていて。更にどこか卑屈。
    途中で読み進めることが難しくなってしまった。
    だって、他の楽しそうな本を勧めるんだもん。
    困った時はみんなのレビューを読んでみるんだけど、びっくりするくらい好意的で、更に困る。
    この本はもっと若い人向けなのかも。
    そして、残念ながら、私、又吉さんに興味ないんだわ。
    10代の頃、夢中で読んだ「車輪の上」(米米の)を30になって読み直した、あの感覚に似てる。
    納得して、途中で断念しました。
    太宰治への愛、熱かったけど。
    「第2図書係補佐」は楽しかったんだけどな。


    「悪意で読む者より、感情に流されずフラットに読む者より、本に対して協力的におもしろく読める者の方が読書を楽しめてる」

  • まず何と言ってもタイトルが秀逸。誰しも「明日という日が来なけりゃいいのに。はたして今夜を乗り越えることができるのか…」という辛い思いに苛まれることがある。そんな夜を救ってくれたのが、又吉くんの場合は本であり、太宰治であった。

    上京して安定した仕事が入るまで、ただただ本を読み続ける日々。彼にとっての読書は、芸人として売れるのか、その不安と焦りと対峙する時間であった。本を読めば「覚悟」が湧いてくる。大好きな太宰も売れたのは晩年ではないか。自分の生きる道にそんなに悩まなくてもいいのでは…という立ち向かう勇気を与えてくれたと吐露する。文学に出会い、助けられ、いかに様々な夜を乗り越えてきたかを笑いも散りばめ、時にはシニカルに本と小説について真摯に熱く語る。

    書を捨てスマホ片手に街に出る昨今、内省への旅路に最適なツールは読書。高校・大学時代によく読んだ近代文学(かつては文学然とした作品しか文庫本化されなかった)を再読してみなきゃと思わせてくれた好著。

  • 高橋源一郎さんが、「僕も太宰は好きだけど、又吉くんには負ける!よく読んでるよ、彼は。」と感心していたのをラジオで聞いた。なるほど又吉さんの文学好きは幼い頃からだったのだ。小六で「火垂るの墓」で文体を感じ取り、高校生で遠藤周作の「沈黙」を読みこなす。そんな下地があっての文筆活動なのでこの説得力も当然。「夜を乗り越える」「答えは自分の中にしかない」などキイワードの置き方もうまい。芥川賞作家ということを別にしても読む価値のある読書論・文学論だ。

  • こういう本も書けちゃうのが凄い。
    自分が読んできた本を紹介したり、本に関する様々な事を又吉さんなりの言葉で表現していて、「火花」よりこういう内容の方が書くのが大変だし(「火花」も大変だったろうけど)、やっぱり作家さんなんだな~と感心します。
    芸人も頑張って欲しいけど、この先の文筆活動も楽しみ。

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夜を乗り越える(小学館よしもと新書)の作品紹介

芸人、芥川賞作家・又吉直樹 初の新書

芸人で、芥川賞作家の又吉直樹が、
少年期からこれまで読んできた数々の小説を通して、
「なぜ本を読むのか」「文学の何がおもしろいのか」
「人間とは何か」を考える。

また、大ベストセラーとなった芥川賞受賞作『火花』の
創作秘話を初公開するとともに、
自らの著作についてそれぞれの想いを明かしていく。

「負のキャラクター」を演じ続けていた少年が、
文学に出会い、助けられ、
いかに様々な夜を乗り越え生きてきたかを顧みる、
著者初の新書。

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)はこんな本です

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