夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098235018

感想・レビュー・書評

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  • なぜ本を読むのかをテーマとした新書。自伝部分で本との出逢いや、文章を書くということや、あの『火花』が書かれ世間で話題となるまでが綴られます。その部分は他のエッセイなどでも書かれていたこともあり、もう一度なぞるようになるのですが、やはり『火花』以後というのがあるのでしょうか。同じエピソードから同じ気持ちが汲まれているのに違う印象を受ける部分もありました。
    後半はなぜ本を読むのかという主幹となる部分。本を読むことの魅力について、太宰治について、近代文学や現代文学の書評へと繋がります。
    本を読むことに真摯でありながら、本を読むことを精一杯楽しんでいる姿勢が見られます。「本に対して協力的におもしろく読める者の方が読書を楽しめている」という言葉が示すように、作品の中から面白さを貪欲に引き出そうとします。判らない部分がある、その判らない部分というのはなぜ判らないのか。今まで自分の中になかった感情を刺激するから判らないのではないか。ならばその判らないということ自体が面白いことになる。だから一度だけ読むよりも二度目三度目に新たな面白さがある。そんな考えに今まで自分がおぼろげに感じていたことを明文化してもらったような感覚を得ました。
    純文学はわかりにくく書かれていると思っている人が少なからずいます。しかしそのわかりにくいとされるものは言い表したいことを文章として表わすために必要なものであり、小説という形をもってしか表せないものが書かれているからなのではないでしょうか。それは一言で言い表せるようなものではないのです。だからこそ小説という形が必要なんです。
    また小説に対して「共感」だけを評価の基準とすることへの警戒のようなものも書かれています。共感するものだけを読むということは、自分の中にあるものにしか目を向けないことになり、自分の中にないものに出逢うことができない。ひとつの事象に対して書かれることが共感し得ないものだからこそ感じるものもあり、それ故の面白さもあるでしょう。なるほど本を読むことは実に楽しいことなのです。

    新書のタイトルとしては帯にある「なぜ本を読むのか?」の方がストレートでしょう。しかし敢えてそこを「夜を乗り越える」とする。これは余りに「文学的」過ぎるとの揶揄を受けるものではないでしょうか。しかしそんなことはきっと覚悟の上の想定内なのでしょう。読後やはりこのタイトルでしかないという思いを叩き付けられたのでした。

  • 自分がお喋りだからか、頭の中に言葉がいっぱい浮かぶのにそれを吐かずにいる人って、どうなってんのかな……と、常々思っていました。
    でも、喋らない人も頭の中ではいっぱい喋っているんだということがわかった気がしました。

    頭の中のイメージが口にした瞬間、ちょっと違うっていう感覚は誰にでもある気がしますし、それをバチーンと表現されたものを見たとき「あぁあぁぁぁ!」っとなるのもよくわかります。

    文学=学校でやるもの、みたいな感じが自分の中にもありますが、それでも(本当は覗いてみた方がいい世界なんだろうな)って思いは中学生の頃の自分もボンヤリと思っていたんだろうな、とこの本を読んで思ったりしました。
    『こころ』『人間失格』『車輪の下』『海と毒薬』こういったものは、どれも夏休みに親の実家に帰ったときに読んだ記憶があります。
    祖父母宅で、友人も近くにいないしやることもないので、こういう時に、ちょっと取っつきにくそうな本と向き合ったんだろうな、と。で、読み始めたら一気読み。
    それならもっと読めばいいのに。

    でも、読書は楽しむもの って又吉さんも言ってることですし、その時その時にあった本に出逢えれば、それでいいのかな、と思った次第。

    人間に興味があれば、どんな本でも読書はきっと楽しい、私はそんな風に思います。

    あ、それから『書いてみたら読むのがもっと楽しくなった』っていうのは、わかります。
    でもやっぱり、書くより読むほうが楽だし楽しい。

  • 2016/06/05
    何のために本を読むのか。
    一言で言ってしまえば、「面白いから」なのだけれど、何で面白いのかというと、又吉が言うように、普段言葉にできない思いを言葉にしてくれるからであって、それを見事に言葉にしてくれたのがとても良かった。
    そして、それが物語である理由も、とてもすんなり腑に落ちた。
    やっぱりこの人すごい人だと思う。

  • 本書で筆者が述べている「子供からみた大人の残酷さ」というのは大変ユニークな視点だと思う。感じやすい少年だったのかもしれないが、確かに「考えすぎやん」という言葉ですまされて傷つく、というのはありえるかもしれない。
    読書によって、自分だけがこんな考え方をしているわけではない、と感じるとは生きていくうえで不可欠だと思う。人はそれを感情移入と表現するけれど。

  • 本をたくさん読んできた又吉だからこそ、小説の中のキャラクターやそれを書いた時の作者の気持ちを繊細に捉えていて、その能力こそ、彼が日常において他者を思いやる優しい気持ちに繋がっているのだろうなーと思う。人間として深い人だなぁ。心に残る言葉がたくさんあり、だから私は又吉が好きなんだな、と改めて思った。

  • ふと手に取って読んだ本ですがめちゃくちゃ面白かったです。本を読みたくなる本でした。
    又吉さんの本に対する愛情が伝わってきました。

  • カテゴリ分けできないタイプの本。
    又吉らしさがすごく出ている。
    本読みが表現しにくい、本を読む理由をあえて、手を変え品を変えて伝えようとしてくれる。
    うん、うん、、よくわかるよ、ご同輩。ありがとう、言葉を尽くしてくれて、って気持ちになった。

    もう一回きちんと読もう。歯磨き本にはもったいなかった。

  • デートして彼女面白くなかった、
    「俺がおもろくしてやるねん!」
    これが良い

  • 太宰治や芥川龍之介をはじめとして、ここに書かれたいろんな小説が読みたくなった。おもしろく読もうと思って読んだほうが小説はおもしろい、という当たり前のことを、この本で言われて初めて納得した。あと近代文学読めるようになりたかったら背伸びして100冊読んでみるといいのだなとわかった。読めるようになりたいからがんばろ。

  • 又吉さんが好きで色々本も読みましたが、これは中でも1番好きな本です!

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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