生物多様性のウソ (小学館101新書 109)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098251094

作品紹介・あらすじ

これまで地球温暖化、原発事故の「ウソ」を指摘してきた著者が、生物多様性の欺瞞を暴く「目からウロコ」の最新刊。

感想・レビュー・書評

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  • 10年程前から多くの生物が絶滅していていると以前に本で読んだことがあります。また日本の国鳥である「トキ」は絶滅寸前で、人工的に生かされている状態です。この本の著者である武田氏は、そのような状態は「トキ」にとって果たして良い状態なのかと問題を投げかけています。

    二酸化炭素の温暖化の問題等、武田氏の書かれる内容には注目してきた私なので、この本も手に取ってみました。人類(ヒト科)もいずれは滅びるのかもしれませんが、誰かに保護されている状態なのでしょうか、等と空想に浸ってしまいました。

    また、3章に書かれていた内容で、「命は無生物からできた」ということ、「石油に似た炭素資源」は500万年分ある(p199)というのは驚きでした。

    以下は気になったポイントです。

    ・生物の分類は、大きい方から、界(動物界)門(脊椎動物門)網(哺乳網)目(霊長目)科(ヒト科)属(ヒト属)種(ヒト種)、亜種に分かれている、ヒト科には、チンパンジー・ゴリラ、ヒト属には、ネアンデルタール人等が属している(p20)

    ・属は複数の種を含むので、容易には絶滅しないので長い歴史で見るときには、属で整理する(p22)

    ・古生代まで遡ると、いままでに5回の大きな絶滅があり、最近は中生代末期(0.5億年前)のEnd Kで、巨大隕石がメキシコ湾に落ちて恐竜が絶滅したもの(p29)

    ・最後の隕石が降ってきたのは、1000万年前、2600-2700万年毎に一度、巨大隕石が落ちて生物が絶滅する(p30)

    ・現在と中生代の終わりを比較すると、少なくとも2000万種ほど多い(p34)

    ・12年目に地表に出てきた蝉は、2,3,4,6で割り切れるので、2,3,4,6年前に地中に潜った「違う種類の蝉」と遭うことになり、同じ種類の蝉との出会いが減ることになる。素数の13年目に出てきた蝉は、同じ種類の蝉としか遭わない、結果として13,17年蝉が残った(p49)

    ・抗生物質は細菌が増殖するときに細胞膜を作るのを邪魔する、すると細胞膜ができないので細菌は増殖できなくなり、その結果、人間にとっては「病気が治る」ということになる(p55)

    ・日本の紅葉が極採色になるのは、その色の種類が27色になるから、赤くなるカエデ、漆が9科20種、黄色になるイチョウ、ヤナギが7科10種、褐色になるブナが4科6種の合計36種もあるので(p61)

    ・生物が進化すると絶滅が減る理由は、絶滅により強い生物が誕生し、気候変化・食糧不足に耐えられるようになったから、その結果、生物種の数も増えた(p85)

    ・一時期、セイタカアワダチソウが目立ったのは、黄色の花が咲くこと、土の中にモグラやネズミが多く、土の中に栄養分があったから、根から他の植物の生長を抑制する物質を出すため、最近は土地がやせてきたので、伝統的なススキが勢いを増してきた(p95)

    ・オーストラリアにとって、イギリス人は侵略的外来種だが駆除されていない、自然の中に人間は入っていないから、それ以外にも、牛、羊、ウサギ、赤狐も外来種だが、赤狐のみ侵略的と呼ばれるのは、人間の役に立たないから(p102)

    ・アメリカは、地球温暖化と、生物多様性条約は、当初は熱心だったが未だに批准していない、特に後者の条約については、アフリカ側が、ABS条項(植民地して以来の利用してきた利益を戻すべき等)が入ったから(p132)

    ・水道の水が安心して飲めるのは世界で7か国、戸籍が整っているのは6か国、現金書留が必ず届くのは日本、ジュースの販売機を全国津々浦々におけるのは日本のみ(p144)

    ・ペストは周期的に襲ってくる病気で、欧州では全人口の3分の1が死んだ、天然痘は航海中の船で蔓延して船員が全滅した、アメリカインディアンは免疫を持たない天然痘により死亡率は9割を記録したこともある(p162)

    ・ダイオキシンは、一時期、「人間が作り出した史上最強の猛毒」と言われたが、毒性研究の結果、1999年に結果が出た、それは「一般的には毒性あるが、人間はダイオキシンに対する防御があり毒物とは言えない」であった(p178)

    ・1970年には石油の寿命はあと40年であると言われたが、それから40年経過した2010年も同様に40年と言われている(p195)

    ・現在では、「命は無生物からできた」ことが確定している、地球上に生命が誕生したのは、「地球に二酸化炭素と水があり、それで化学反応を起こすだけのエネルギーが太陽の光として与えれたから」(p198)

    ・地球上にある「石油に似た炭素資源」を計算して、世界の石油消費量で割ると、500万年となる(p199)

    ・資源の寿命とは、資源会社が自分の持っている鉱山の寿命を発表し、それを合計して平均したもの、鉱山会社は資源を探査するのにお金がかかるので、100年後の山は探さず、せいぜい30年程度のものしか探さない。従って、鉱山会社の発表する数値はいつも30年程度になる、さらに長い年数を発表すると資源の相場が下がるため(p200)

    ・Y遺伝子は男のみが持っているので、欠陥があればそのまま父親から男の子供へ伝わる、このY遺伝子は哺乳動物特有のもので、今から1.6億年前にできて、それから徐々に傷ができて最初の1000個ほどの情報が、70程度に減少している、これがゼロになると男性という性が怪しくなり、人間と言う種族の寿命はあと500万年程度と推定される(p226)

    2012年8月19日作成

  • 1

  • 1年で4万種、1日で100種の動植物が絶滅

  • 「と」本かと思って買ったが違った。今までと考えが変わった。

  • 三葛館新書 468||TA

    たとえば絶滅といえば「トキ」が例に上がることが多いですが、繁殖している鳥もいるのに、なぜトキは絶滅の危機に瀕しているのか→それはトキが生きづらい世界だから→そしてその生きづらい世界を作ったのは人間かもしれない→根本の生きづらい世界は変えないのに、トキは絶滅させないでいようとする→トキは生きづらいので本当は絶滅したいのかもしれない。というように、世間では当たり前とされていることを、違った方向から考えさせられる1冊です。

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=60954

  • 確かにこれまでの“常識”とは違う主張が並んでるけど、論理立てて説明されているのでよくわかる。ただ少なくとも自分の周りで「生物多様性が大事」と言っている人たちはもっと単純な思いだと思う。。。

  • 最近、売れっ子作家の武田邦彦氏の著作である。
    生物多様性を生物誕生からの歴史の中で考えると、生物多様性は高まっているらしい。
    「生物多様性」も実は利権であり、先進国が、発展途上国の生物多様性を利用して新薬の開発等に役立てたいという目的があった。しかし、途上国もその利権の分け前を主張しだしたため、米国はやる気を失っている。
    生物多様性が減少し、生態系が破壊されると人類にも被害が及ぶので、自然保護ということが叫ばれているが、この考え方は正しくないというのがこの本の主な主張である。
    「成長の限界」とか「沈黙の春」といった本についても独自の解釈があり興味深い。

  • 何を正しい考え方とするのか。それはこの本にも書かれている通り、個人の自由であって、自分の考えを他人に押し付けるものではない。それを前提として、この本を読み、生物多様性の考え方の一つとして捉えるべきだと思う。一概に否定したり、自分の考え方に拘泥するのではなく、冷静に自分の考え方を検証しなおすいいきっかけになる本ではないか。
    ただ、私はこの本を読んで生物多様性に対する知識も深まったし、納得する面も多々あった。非常に論理的で、多面的に環境(人間のための)をとらえ、生物圏との関係を示している。読んで損はないと思う。
    評価は読む人によって異なるので星は付けないが、個人的には星5つだと思う。

  • 20110830st

  • 空気で判断したり、権威の発言を鵜呑みにせず、自分で考えるという事の重要性を教えてくれる本。
    著書の主張としては先ず生物多様性の定義を疑う。菌類や細菌類は未知のものが多く、生物全体の種類は分かっていない。三葉虫等の生物は滅んでしまって、新しい種の生物が誕生している。これはいけないことなのか?
    生物多様性が叫ばれた時期がアメリカの農業政策の曲がり角と一致し、それにのっかった欧州、日本の利権が見え隠れする。そもそもイノベーションを含む長期的な未来は、そのイノベーションが想像できない限りにおいては予測できない。これからの生活では「人間、科学、自然」の調和が必要ではあるが、著者が解説してきたような今までの「生物多様性」や「環境保護」のような浅はかな考えのみで進むべきものではない。

    感性や感情に訴えかけやすいものや、無批判に受け入れてきた先入観は哲学の先人の言う通り方法的懐疑を持って排除すべきである。
    そのような契機を与えてくれるこの本や武田氏自身のコメントは大変有用である。しかしながら、彼の言説にも適切な懐疑心を持たなければならないと思う。生物の進化で弱肉強食の世界が今日の世界を作り、発展させてきたし、今後も続くとされている。
    が、人間においてはその他の生物で適用される物理的な「強さ」や「弱さ」が適用できないものであることを望む。それこそここは予測できないところなのではないだろうか?

  • 無理やり連れてきたトキを放鳥しても、育てる環境を変えないとダメだね。納得。

  • まだ、途中であるが、生態系の問題に関して、属の保存という一方向の視点でしか捉えていないことに疑問を感じる。生態系は、生物の多様性も大事だが、それに加えて、それぞれの種における個体数のバランスと生息地の変化、生息環境の保全状況、さらにはヒトとの関わりや四季の変化を感じる文化的側面まで要素として含まれている。

  • 「偽善エコロジー」などで知られる著者による、生物多様性というテーマについての考察。彼のロジックはまず「近年人間の手によってたくさん生物種が滅亡に追いやられている」という前提を疑うこと。さらに、「人間も自然の一部である以上、人間の行為で絶滅した種というのは滅びる理由がある」ということ。環境問題には人間の「善意」や「優しいイメージ」が大きく絡んで、科学だけでは割り切れなくなってしまいがちであり、注意する必要がある。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。工学博士。専攻は資源材料工学。
東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。
同社ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年より中部大学教授。
テレビ番組「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)などに出演。
著書『ナポレオンと東條英機』(KKベストセラーズ)、『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』3部作(洋泉社)他ベストセラー多数。

「2017年 『武田邦彦の科学的人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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