「少年A」被害者遺族の慟哭 (小学館新書 254)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252541

作品紹介・あらすじ

それでも「少年」は守られるべきか

少年による凶悪犯罪が跡を絶ちません。統計によると少年犯罪は減り続けていますが、猟奇的な事件や、いわゆる体験殺人――人を殺してみたかったから殺した――など、動機が不可解なケースは、むしろ増えている印象があります。一方で、少年(未成年)、とくに18歳未満は少年法で手厚く守られており、重罪を犯して刑事裁判にかけられても短期間で出所するケースがほとんどです。遺族たちは口をそろえて「これでは無駄死にだ」「なぜ死刑や無期懲役にできないのか」と憤慨しますが、少年法の壁は厚く、犯した犯罪と量刑が釣り合っているとは言えません。
また、遺族に対する加害者側の対応も、ひどいケースが目立ちます。一言の謝罪もない、追い打ちをかけるような言動をする、民事裁判で決まった損害賠償を支払わない……挙げ句の果てには再犯を繰り返し、また罪に問われている元犯罪少年も少なくありません。本書では、少年凶悪犯罪の遺族たちに綿密な取材を重ね、そうした実態を明らかにするとともに、少年と少年法の罪について深く考察します。

【編集担当からのおすすめ情報】
1948年に成立した少年法は4度改正され、そのたびに厳罰化の方向に向かっています。しかしまだ遺族たちが満足するレベルには至っていないし、少年による凶悪犯罪は発生し続けています。「酒鬼薔薇聖斗」に触発されたのか、猫などの動物を殺す事件も頻発しており、不穏な雰囲気が漂っています。
選挙年齢の引き下げにともなって、少年法も改正されるとは思いますが、刑罰は年齢だけを基準にしていていいのでしょうか。少年院などの矯正プログラムは、本当に機能しているのでしょうか。
この本がそれらのことを考えるきっかけになれば幸いです。

感想・レビュー・書評

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  • 未成年者による犯罪があった際、いわゆる「特定班」と呼ばれる人たちが、匿名掲示板等を駆使して、「少年A」を特定する。もちろん、違う人を犯罪者にしてしまう危うさもあるが、たとえ本人だとしても、それは私刑にしかならない。未成年者の犯罪に対し、これからの社会がどうしていくかは、大きな問題だと思った。
    それにしても、未成年犯罪者とその保護者に対して民事裁判で勝ったとしても、その賠償金の徴収は被害者という事実には納得できない気持ちが湧いた。

  • 少年犯罪における様々な問題を被害者遺族側から指摘する本。

    少年法は改正が繰り返され、厳罰化が進んでいるがこれは「適罰化」だ、とする著者の考えはよくわかる。
    ただ、加害者の少年に発達障害がある場合もあれば、人を殺してみたいという欲求に支配されている場合もある。ケースバイケースだ。
    少年法をいくら厳しく、重いものにしたとしても、後先考えずに犯罪を犯す少年がいるのであれば、抑止力はそれほどないようにも思えた。

    加害者の親にどこまで責任を取らせるのか、という線引きも難しい。監督者としての役割はもちろんあるが、親と子は別人格であり、別の人間だ。
    被害者遺族の立場からしてみれば、加害者の親に責任を取らせたいのはもちろんわかる。とても難しい。

    本のなかで遺族の方が、「犯罪被害によって生じた損害金については国が立て替えて被害者(遺族)に支払い、加害者からは国が強制徴収していくというシステムを確立するべきです」とおっしゃっていた。
    奪われた命は戻せないし、犯罪自体を理解していない場合すらある。強制徴収システムが良いか悪いかはわからないが、色んな立場の人が納得できるシステムに変わっていくべきだ。

  • 神戸連続児童殺傷事件関連かと思って読んだが、考えてみれば「少年A」とは少年を特定しないための記号であった。もちろんその少年Aにも触れてはいたものの、ほとんどは他の少年犯罪について。またタイトルと中身が違う(自分勝手な理由だが)と思ってしまった。しかしながら「贖罪」というのは難しい。被害者も分からないのかも知れない。そもそも贖罪は、できないものなのかも知れない。

  • 大事な人を無残に殺されたにもかかわらず、その犯人が少年だったというだけで、ろくにお咎めもなく、加害者の情報すらも与えられない。彼らはそれでも守られるべき存在なのか。本当に考えさせられる。

  • 「息子は2度殺された」。神戸連続児童殺傷事件の「元少年A」が昨年
    出版した手記に対して殺された男児の父は語った。

    事件自体が衝撃的だっただけあって、この手記を購入して読んだ人も
    多いのだろう。「元少年A」が手にした印税は2千万円を超えているとも
    言われる。

    少年法で守られた「元少年A」の実名や顔写真は一部の写真週刊誌で
    の掲載を除くと報道されていない。未成年者の更生・矯正の為に設け
    られている少年法だが、この「元少年A」の手記の発表に続く有料ブログ
    の開設(既に閉鎖)などの行動を見ると彼は本当に更生したのだろう
    か…と思う。

    犯罪を、それも殺人と言う深刻な犯罪を引き起こした未成年者の更生・
    矯正は難しい問題をはらんでいるのだと思う。加害者たちは少年法で
    守られているのに、被害者遺族たちは二次被害・三次被害を受け続け、
    我が子を失った喪失感を抱えて生きて行かねばならない。

    なかには真摯に自分の犯した罪と向き合い、遺族への謝罪を続ける
    加害者もいるのだろう。だが、本書で取り上げられている加害者や
    その家族を見ていると他人事としてしか受け止められないのか?と
    感じてしまう。

    数多くの少年事件を取材して来た著者だからこそ、罪の意識もうわべ
    だけのような加害者と家族たちへの憤りが伝わって来る。

    「一度の過ちで、息子のあとの人生を棒に振りたくはない」と言う加害者
    の親。人生を棒に振るどころか、被害者の人生は奪われているのだが、
    分かっているのだろうか。

    同級生の女子生徒に付きまとった挙句に殺害し、遺族に対して事件を
    おもしろい小説に書いてみたいという内容の手紙を寄越した加害者は、
    少年院を出所後、成人になってから再度傷害事件を起こしている。

    遺族のせめてもの願いは民事訴訟での損害賠償請求だが、賠償額が
    決まっても1円も支払わないケースや、支払いが止まるケースのなんと
    多いことか。

    命はお金では賄えない。遺族もそれは分かっている。だが、賠償金を
    支払わせることでしか加害者に贖罪を負わせる術がない。

    幾度かの改正を経て、少年法は厳罰化されている。だが、それだけで
    いいのだろうか。被害者遺族への謝罪もない、賠償金も支払わない。
    いわば逃げ得になっていやしないだろうか。

    未成年にも極刑を…とは思わない。僅かでも更生が見込めて、家族共々
    犯した罪に対して真剣に向き合うことが出来るのであれば少年法も有効
    なのだろう。

    少年犯罪の加害者に対するシステムの、何かしらを見直さなければいけ
    ないんじゃないだろうか。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」「沖縄ひとモノガタリ」「誰も書かなかった玉城デニーの青春」など多数。

「2023年 『居場所をください 沖縄・kukuluの学校に行けない子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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