国を愛する心 (小学館新書)

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著者 : 三浦綾子
  • 小学館 (2016年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252671

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国を愛する心 (小学館新書)の感想・レビュー・書評

  • 法律は怖ろしきかな秋ふかみ誤判の処刑を想ふ朝なり
     佐藤 誠

     冤罪を訴えながら、死刑囚として30年以上身柄を拘束され、病死した歌人である。10冊の歌集があり、作家の三浦綾子もエッセーでその作品にふれていた。この4月に刊行された新書でも、これらの短歌が引用されていたので紹介したい。

     三浦綾子著「国を愛する心」は、単行本未収録を中心としたエッセー集である。「戦争と平和」「家族と教育」の2章立てで、三浦綾子記念文学館特別研究員の森下辰衛による丁寧な解題もあり、時代性や背景もわかりやすい。

     戦時中、三浦綾子は小学校教員として軍国主義を熱心に説いていた。戦後、それを悔いて退職したが、生涯しこりを残した実体験をもとに、国家による戦争、人権、教育についても率直に持論を述べていた。

     所収のエッセーは、1966年から90年代のものだが、今日にも通ずる話題が少なくないことに気付かされる。

     たとえば、キリスト者として、「目を覚ましていなさい」という聖書の言葉を引用したもの。掲出歌のように「怖ろし」いことや世界的な危機は、誰かが教えてくれるものではない。だからこそ、私たちは意識的に目を覚ましている必要がある、ということなのだろう。普遍的な、大切なメッセージと思われる。

     さまざまな思想信条を持つ人々の存在に配慮し、「号令」で一斉に同じ行為をさせることを躊躇する夫光世の姿を描いた「号令の恐ろしさ」も、短いながら、拠【よ】って立つ所を鮮明に示しており、印象深い。
    (2016年7月24日掲載)

  • キリスト者の視点で戦争と平和、家族と教育への思いを語る
    単行本未収録原稿を中心に厳選されたエッセイ集

    執筆から二十年以上のときを経ているとは思えないことばの数々は
    心にしみるというより心に突き刺さってくる

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国を愛する心 (小学館新書)の作品紹介

“今を生きる”私たちの魂に響くエッセイ集

『氷点』『塩狩峠』『銃口』――。数々の名作を発表してきた三浦綾子はまた、多くの良質のエッセイも書き遺している。幅広いテーマのなかから、戦争や平和、人権、教育といった社会問題について書かれたものを厳選してまとめた一冊。大半が単行本未収録の、“今を生きる”私たちの魂に響く提言集になっている。
三浦綾子は、戦争中に教師という立場にあった自らの罪を認めながら、次代を生きる者たちのために、さまざまな問題に言及する。太平洋戦争を「侵略戦争」と言い、「過ちを過ちとしない限り、幸いな次代をもたらすことはできない」と書く。平和憲法を評価し、安保条約や国家機密法、自衛隊の海外派兵に異を唱える。原子力発電所については、「一日も早くこの世界から原発のなくなる日を」と結ぶ。また、「愛のないところに、真の教育が成り立つはずがない」と、人間が人間を教えることに心を寄せ続ける。
本書で取り上げられた多くのテーマは、解決できていない。原発事故を経験し、安保関連法案が成立、憲法改正も現実味を帯びてきた今だからこそ、胸に鋭く突き刺さる言葉の数々。つねに弱者の立場に立ち、キリスト者のまなざしで語られたエッセイ集。

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