競馬感性の法則 (小学館新書 す 8-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252961

作品紹介・あらすじ

名調教師が語り尽くすサラブレッドの世界

ウオッカ、ヴィクトワールピサ、シーザリオ、カネヒキリ、エピファネイアなど開業15年でJRA通算600勝を達成、うち重賞68勝、G1勝利は歴代3位の23勝という実力派調教師が語り尽くす競馬の真髄――レースそれぞれが持つ意味や戦い方はもちろん、トライアルから条件戦、新馬戦、未勝利戦まで、馬を使う側の戦略とレースに向かう準備を詳細に解説。いまだから明かせる愛馬の秘話から調教の工夫、トレセンでの調教から厩舎の役割、さらに競馬場のパドックや返し馬の見方まで、目から鱗の理論とエピソードが満載。調教師ならではの視点での丁寧な解説は、競馬ファンのみならず、厩舎関係者の間でも注目されています。
さらに、クラシックディスタンスにこだわるトップトレーナーならではの矜持や、引退後のサラブレッドのセカンドキャリアにも奔走するなど、その人柄がにじみ出る馬本位の考え方に触れることで、競馬の面白さや奥深さを感じ取ることがきます。巷に溢れる”必勝法本”では掴み取ることができない、競馬の本質をわきまえたうえでの馬券検討の重要性に気づき、実践することができる、真に競馬を愛する人々のための一冊です。


【編集担当からのおすすめ情報】
馬主・クラブ会員・POGファンも必読、厩舎関係者も注目しています。

感想・レビュー・書評

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  • ウオッカやシーザリオなど、数々の名馬を育てた角居元調教師の著書。各レースの考え方や思い出、エピソードが読み応えがある。ウオッカの厩務員さんがアイルランドまで会いに行った際、ウオッカも覚えていて喜んで駆け寄ってきたなんていうエピソードも知れてほっこりした。また、後半は調教についても言及されていて勉強になった。今後、調教の見方が変わりそう。

  • 雑誌連載からの本なので、説明の流れは淡泊。水素水を使ってたのに驚いた。水としての効果はさておき、そこまでこだわる意識はさすが

  • この厩舎には、いろんな名馬がいたな

  • 日本競馬で指折りの調教師であり、引退後の馬生を支援するプロジェクトにも尽力している角居調教師により、レース毎の特徴や馬、調教、返し馬の見方や考え方について概説された一冊。
    前半のレース毎のコラムは個人的には退屈だったが、3頭併せの狙いやライバル馬の存在、馬の心が折れる負け方、ブリンカーの効果など、競馬の見方が変わる、たくさんのネタがあり、大変勉強になりました。

  • これまでスポーツ新聞の競馬欄だけを見て馬券を買っていたが、この本を読んでみて、それでは馬券も当らないし、競馬観戦自体を楽しめていないことを感じた。もう何冊か関連本を読んでから競馬場に行きたいと思った。
    本書では、現役の調教師が、GI全レースの特徴から、競走馬の一生やそれを取り巻く人間と環境、そして競馬場でのポイントを紹介している。

    ・牝馬3歳の春はとてもデリケートです。フケ(発情)の出る時で、体調管理が難しい。鞍上が馬の腰元あたりに触れると、過剰反応してスタートが遅れたりすることがある。そこでフケを早めに促すのです。1~2月の寒い段階から、夜でも白熱灯で馬房を明るくし暖かくする。フケは排卵と密接に関わっていて、馬はそれを日照時間の長さで認知する。
    ・スタミナよりもスピード重視が時代の流れです。ならば海外を目指すこしが当たり前になった今、国内の3000mより1800m、2400mがあるドバイのほうがより魅力的なのは仕方のないところでしょう。
    ・「女馬は春に、男馬は夏に強くなる」といわれるように、ヴィクトリアマイルに照準を合わせて調教することで、牝馬はより強くなります。
    ・ここで強い競馬をして、秋のGI戦線に殴り込みたいわけですね。天皇賞(秋一やマイルチャンピオンシップは、夏にどれだけ成長したかが問われますが、牝馬の場合は夏前に強くなる。まさに「今!」です。
    ・皐月賞馬は「もっとも速い馬」、「菊花賞馬はもっとも強い馬」と言われます。対してダービーは「もっとも幸運な馬が勝つ」。広くて直線の長い重示芝2400mは小細工の入る隙間のない力勝負となる。ここを勝つことで馬の価値が大きく上がります。
    ・安田記念は古馬が走るマイル戦として目標にしやすいのです。やはり、東京のマイル戦というところが大きい。東京の1600mは広くて直線が長く、道中できちんとタメを作ることができれぱ、最後は鋭く切れる。馬と騎手にとっては仕掛けどころが2000m、2400mとそれほど変わらない。東京ならではの特徴で、中距離馬でもここでスピードを試したくなります。力比べがしやすいので、多彩な資質を持ったメンバーが集まるし、牡馬の場合、ここで結果を出せば種牡馬としての価値がぐんとアップします。
    ・骨折と聞と大事に思えますが、若駒の場合、小さな剥離骨折は結構あります。見過ごしてしまうようなケガですが、そのときにすぐにレントゲンを撮ってケアをしてやる。すると馬は人間を信用します。若いにうちにそういう関係ができあがると、その後がぐっとやりやすくなります。
    ・競走馬は、短期間に同じ相手に3回競り負けるとダメ。「あいつにはかなわない」と自ら順位付けをしてしまう。頭がいい馬ほどそうです。強い3歳馬なら同じレースに出ることも多く、気の弱い馬だと戦意喪失なんてことにもなりかねません。
    ・能力のある馬が新馬戦を勝つと、競馬をナメることがめる。楽に勝てるから遊んで走ってしまう。その場合は、各上挑戦で強いメンバーの中を走らせてやる必要がある。ただし、逆に委縮してしまう馬もいるので気性やタイミングを見極めが重要です。
    ・マイルチャンピオンシップの京都競馬場は、時計が早く直線に坂がないため究極のスピード勝負になる。
    ・マイルは馬の距離適性を見る分水嶺です。マイル以下(1200m、1400m)のレースでは、スピードだけの一本調子の競馬でも勝てる。しかしマイルはスピードも必要ですが、どこかでタメを作らなけれぱいけない。ジョッキーの指示をきちんと聞けるかどうかここに適性が顕われる。ヨーロッパではマイル以下の距離の競馬は重要視されません。
    ・ジャパンカップのような強力なメンバーが揃うタフな競馬では、2400mを走っている問ずっと、騎手の指示をきちんと聞けるかどうかが大事です。いいスタートを切って道中をじっと我慢し、仕掛けどころで素早く反応できるかどうか。
    ・パワーとスピードのある馬が、引つ掛からずに走るには騎手にもパワーが要ります。大きい馬体で上下動が大きく、日本人騎手の細い体と腕力では制御が難しいこともある。それで仕方なく馬群の一番後ろにつけざるをえない。しかし外国人騎手は引つ掛かっても”押して”中団くらいで我慢できる。身長も体重もあり、足が長くて下半身に力があります。馬の上下動の振幅を、足と下半身の力でうまく吸収できる。馬に不自由な思いをさせず、膝の動きでスピードをコントロールするのです。
    ・有馬記念が行われる中山競馬場には、コース形態の問題がある。コーナーが6回ある2500mは単純な力勝負になりません。駆け引きする局面が多く器用な馬が勝つ。
    ・カがあると分かっている3歳馬ならば、むしろ古馬と走って勝ち上がって、今は古馬とのレースのほうが厳しくなっていて、3歳だけで競った馬と、古馬にもまれた馬はりはり違います。逆に力量が定まっていない馬ならばトライアルに使う。
    ・毎日王冠が行なわれるのは東京競馬場1800m。馬の能力が存分に発揮でき、紛れの少ない勝負に持ち込めるので、競走馬の力関係が顕わになります。
    ・2歳時に2勝というのが理想ですが、1つ勝っていれば、まずは合格です。闇雲に勝ちに行くということもない。調教でビシビシ叩くことはしません。体に力がない馬は強く調教すると走りがよれてくるし、叩いた次の調教から急に引つ掛かり出したりすることもある。
    ・2歳馬は馬主さんの意向もあるが、年末から逆算して、中距離の新馬戦を勝って、次の特別を勝っと、もうクラシックを意識するようになります。2勝した馬は1、2月の馬場が硬い時期には使わず、クラシックのトライアルに照準を合わせます。
    ・2歳でデビューできる馬というのは、もともと体が強く、調教にも耐えられた馬です。2歳時に勝ち上がることができた馬というのはいわばエリートです。さらに500万やオープン特別を勝ったりすれば超エリートで、早くも「クラシック候補」などと言われます。重賞でも勝とうものなら、世代のトップ争いに参戦です。あくまで「この時点で」の話です。
    ・3歳未勝利戦は9月の中山、阪神開催まで。ここでの未勝利戦は「前走5着以内」または「前走までのキャリアが5走以内」という馬に限って1回のみの出走しなります。「スーパー未勝利戦」などと呼ぱれています。
    ・春の競馬は、ーか月半から2か月に3回走らせる。無理のない使い方ですね。競馬では馬に相当に負荷がかかるので、特に春の無理強いは禁物です。
    ・レースで悪い負け方をした場合、調教も崩れて、下げても強く走れない。馬券検討のひとつとして、降級馬が、そこまでのレースで崩れていないかどうかを見極めることが大事です。
    ・休み明けの馬の気配を、馬券を買う側はど,フ察知すればいいのでしよう。、ドジクを比較して、馬体の動きが違っていると調教が崩れている可能性があります。それでも初戦で好走した場合、前述のように2戦目は危ない。逆に調教が崩れていないのに初戦で走らないほうがcv走目に期待が持てます。
    ・スタート後、馬が行きたぴったり、前の馬との距離が詰まっていたりすると、騎手はスピードを抑えたくなるのですが、そこで強く手綱を引くと馬はよけいに引つ掛かってしまう。行きたがっている馬の気持ちを酌み、手だけでなく膝や腰を巧く使って馬のエネルギーを抜いてやる。それが「拳が柔らかい」というこし。代表格は武豊騎手、福永祐一騎手、浜中騎手、四位洋文騎手などなど。
    ・パドックでは、落ち着いて周回できない馬。これは見ていても分かります。騎手の指示にきちんと従わなくては競馬には勝てません。パドックで馬に指示をするのはひいている人間(主に厩務員)。そのもののいう事に耳を貸さずに興奮している馬は期待できません。同様に、鳴いたり色気を出したりする馬も集中力を欠いている。馬つ気を出す「私が一番強い|」という主張は幼さの裏返しで、じっと我慢できない証拠です。やはり我慢できる馬が強い。ぴんぴん鳴いたり、馬つ気を出したりするのは、指示待ちの時の仕草ではない。物見をしている馬も同様。初めての競馬場が珍しかったり、お客さんの中に気になる人がいるのかもしれないが、レース前の競走馬に「好奇心」は必要ありません。人の指示に従う落ち着いた精神状態にあるかどうかをチェックしたいところです。
    ・体重はある程度あった方ががいい。馬体の重さと大きさはストライドの大きさにつながるし、接触時の安定にも有効です。逆にデメリツトは脚元のケガが多くなることです。前走からのプラスマイナスだけではなく、何走か前までさかのぼってみてください。馬体に脂肪が乗ってくる冬場は体重が増たやすく、夏場は減りやすい。この場合10キ口程度の増減に神経質になることばありません。大事なのは馬齢。4歳半ばまでの体重増は成長分であることが多い。休み明けに大幅な体重増があっても、馬のシルエットが太くなければ問題ありません。体が絞れているのに体重が増えていくのが理想です。だいたい4歳半から5歳までに体格が完成きれるので、そのときのレースで結果が出た「連対体重」などが目安しなります。古馬になってからの馬体重の増減には注意が必要です。何走か続けて減というのは筋肉が衰えている「馬体が寂しい」状態。逆にずっと増え続けるというのもよくありません。
    ・明らかによくないのは、返し馬でロを割って走る場合。「掛かってしまう」感じが顕わになってしまう。
    ・掛かりグセのある馬ならば、ジョッキーの姿勢を見る。折り合いがついているときこま、膝が柔らかく曲がっている。掛かっているときには、膝が伸びている。どうしても足にカが入るんですね。馬は行きたいのにジョッキーが抑えている。エネルギーを殺し合う状態となり、馬も鞍上も体力を消耗します。直線、大丈夫かなと不安になりますね。

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