新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)

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著者 : 福岡伸一
  • 小学館 (2017年5月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253012

新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)の感想・レビュー・書評

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  • ベストセラー『生物と無生物のあいだ』(2007年)を始めとする一般向けの科学書等の著者・翻訳家であり、雑誌や新聞の文化・読書面にも頻繁に登場する、分子生物学者の福岡ハカセが、自ら主著という2009年発表の作品を新書化したもの。新書化に伴い、生命科学研究の最前線の状況などについて大幅に加筆したほか、新章が加えられている。
    本書の題名にして、ハカセが「私自身のキーワード」という「動的平衡」の表すものについては、言葉を変えて、繰り返し説明されているが、端的に言うと、「秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。宇宙の大原則、エントロピー増大の法則である。この世界において、もっとも秩序あるものは生命体だ。生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、常に、酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。これが生きていること、つまり動的平衡である」ということである。
    また、分子生物学の見地から、以下のような多数の興味深い示唆がある。
    ◆歳をとると1年が早く過ぎるのは、分母が大きくなるからではなく、自分の生命の回転速度(代謝回転速度)が遅くなるから。
    ◆人類は進化の過程で、生き残るために有利なように、ランダムなものの中に法則やパターンを見出す能力を高めてきた。
    ◆我々が摂取したタンパク質は、元の情報が自分自身の情報と衝突しないように、アミノ酸まで解体されて吸収される。よって、コラーゲンを食物として摂取しても意味はない。
    ◆生命は単なる部品の集合体ではなく、その成立には時間が関わっており、それが柔らかさ、可変性、バランスを保つ機能のような機械とは全く異なるダイナミズムを生み出す。
    ◆生命のプロセスに関わる時間を逆戻りさせることは不可能。よって、遺伝子操作や生命操作を用いた生命科学研究には懐疑的。
    ◆生命現象を支えるsustainableな仕組みは総合的なもの。よって、エイジングと共存するには、sustainabilityを阻むような人為的因子・ストレスを避ける、つまり「普通」でいることが一番。
    そして最後に、「生命」について、「生命が「流れ」であり、私たちの身体がその「流れの淀み」であるなら、環境は生命を取り巻いているのではない。生命は環境の一部、あるいは環境そのものである」と述べているが、これはある意味、自らの死生観にも影響を与えるようなものである。
    自ら主著という通り、福岡ハカセの主張・問題意識が網羅的かつコンパクトにまとめられた良書である。
    (2017年6月了)

  • はい。なかなか難しい内容でした。
    そういう事ね。と思ったのは、年齢を重ねるたびに時間経過が早く感じる理由。新陳代謝が遅くなっていき、体内時計もその分遅くなるから・・・なるほどなるほど。
    タイトルはかっこいいですが、手にとって購入の決心まで時間かかりそう。素人的には、もう少しなじみあるタイトル(副題?)があれば良かったかなと。

  • 生きるとは何なのか。
    どのような活動を通して私たちは生きているのか。
    タンパク質の流れが生きている証拠。
    シェーンハイマーの動的平衡論によれば環境の中の分子は大循環の流れの中。

  • 11月25日読了。図書館。

  • 不思議な世界感.科学的なんだけど哲学的.でも確かに,科学と哲学は近いもの.そういう意味では原点回帰というか.
    印象に残ったのは,
    「人間は考える『管』である」
    「私達を規定する生物学的制約から自由になるために,私達は学ぶのだ」

  • ‹内容紹介より›
    「人間は考える『管』である」「私たちが見ている『事実』は脳によって『加工済み』」「歳を取ると一年が早く過ぎるのは、実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけないから」などの身近なテーマから「生命とは何か」という本質的な命題を論じていく。発表当時、各界から絶賛されベストセラーになった話題作に、最新の知見に基づいて大幅加筆。さらに、画期的な論考を新章として書き下ろし、「命の不思議」の新たな深みに読者を誘う。

    ――――
    人は(あるいは動物は)なぜ、他の動植物を食べるのか。
    それはエネルギー(炭水化物≒ブドウ糖)を摂取するだけでなく、たんぱく質(アミノ酸)を摂取することが必要だからである。
    なぜなら、常に生命は「分解」と「合成」を繰り返す「動的平衡」状態にあり、「合成」を行うためにはその材料であるたんぱく質を大量に摂取することが不可欠だからだ。
    さらに言えば、「消化」というはたらきは単純に「効率的に栄養素を吸収」するためだけではなく、摂取した生物が保持していたDNAの情報を分解し、自身の生体情報と反目しあわないようにするという意義がある(アレルギーやアトピーなどの反応は摂取したものの生体情報と自身の生態情報がぶつかり合う反応のことである)。

    他にも、「人間は『管』であり、消化管も「体の外」である」という主張や、先に述べた通り摂取したたんぱく質はバラバラに分解されて吸収されるため、「コラーゲン添加の食物を摂取しても、体内のコラーゲンを増加させることにはつながらない」などの主張は大変興味深い。

    さらに、なぜ人間は太るのか、といった身近な問いにもわかりやすく解説を加えている。

    人を「それぞれのパーツの集合体」としてとらえるのではなく、常に更新され続ける分子がゆるく集合しているもの、としてとらえる著者の生命観が論理的に紹介されており、とても面白い。

    p.260-「動的平衡」とは何か
    生体を構成している分子は、すべて高速で分解され、食物として摂取した分子と置き換えられている。身体のあらゆる組織や細胞の中身はこうして常に作り変えられ、更新され続けているのである。▽だから、私たちの進退は分子的な実体としては、数か月前の自分とはまったく別物になっている。分子は環境からやってきて、いっとき淀みとしての私たちを作り出し、次の瞬間にはまた環境へと解き放たれていく。▽つまり、環境は私たちの身体の中を通り抜けている。いや「通り抜ける」という表現も正確ではない。なぜなら、そこには分子が「通り抜ける」べき容れ物があったわけではなく、ここで容れ物と読んでいる私たちの身体自体も「通り過ぎつつある」分子が、一時的に形作っているにすぎないからである。▽つまり、そこにあるのは、流れそのものでしかない。その流れの中で、私たちの身体は変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っている。その流れ自体が「生きている」ということなのである。…(中略)…私はこの概念を…(中略)…生命の均衡の重要性をより強調するため「動的平衡」と訳したい。…(中略)…▽ここで私たちは改めて「生命とは何か?」という問いに答えることができる。「生命とは動的平衡にあるシステムである」という回答である。▽そして、ここにはもう一つの重要な啓示がある。それは可変的でサスティナブルを特徴とする生命というシステムは、その物質的構造基盤、つまり構成分子そのものに依存しているのではなく、その流れがもたらす「効果」であるということだ。生命現象とは構造ではなく「効果」なのである。…(中略)…▽一輪車にのってバランスを保つときのように、むしろ小刻みに動いているからこそ、平衡を維持できるのだ。サスティナブルは、動きながら常に分解と再生を繰り返し、自分を作り替えている。それゆえに環境の変化に適応でき、また自分の傷をいやすことができる。▽このように考えると、サスティナブルであることとは、何かを物質的・制度的に保存したり、死守したりすることではないのがおのずと知れる。▽サスティナブルなものは、一見、普遍のように見えて、実は常に動きながら平衡を保ち、かつわずかながら変化し続けている。その軌跡と運動のあり方を、ずっと後になって「進化」と呼べることに、私たちは気づくのだ。

    p.288
    私は、『生物と無生物のあいだ』などにおいて、生命とは絶えずその中の物質やエネルギーや情報が通り抜けていく「流れ」だと言ってきた。通り抜けるという表現も実は正確ではない。なぜなら生命とは、通り抜けるものの「容れ物」ではなく、容れ物自体が流れゆく動的な存在だからである。多摩川を多摩川と呼ぶのは、多摩川が岸辺でもなく土手でもなく川底でもなく、あるいは地図上の青い線でもなく、絶えず流れゆく水の流れそのものだからである。▽生命の単位である細胞もまた、絶えず合成と分解、酸化と還元、結合と切断、生成と消失を繰り返す「流れ」そのものである。

  • 生物と無生物のあいだをよんでから福岡さんの二冊目。わかりやすくかつ専門的で、どの章も面白く、示されていたことは考え方として色々な分野に応用できると思った。

  • 福岡伸一の科学エッセイは知的好奇心に対する刺激と、文学的な面白さ両方がある。他にこういうものが書ける人を知らない。


    47
    つまり、歳をとると1年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけていない。そういうことなのである。

    80
    合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」と言うことであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」である

    82
    コラーゲンをいくら摂っても、それは体内のコラーゲンを補給することにはなりえないのである。食べ物として摂取したタンパク質が、身体のどこかに届けられ、そこで不足するタンパク質を補う、という考え方はあまりに素人的な生命観である。

    90
    アミノ酸は20種あるが、人においてはそのうち9種が必須アミノ酸、11種が非・必須アミノ酸である。
    必須アミノ酸とは、動物が自分の体内では製造できないのは、非・必須アミノ酸は体内で製造できるものである。

    113
    スローフードは太りにくい

    212
    細菌には抗生物質
    ウイルスにはワクチン
    ※伝達性スポンジ脳症(狂牛病)はどちらでもない何かが原因の可能性があり、未だ解明されていない。

    238
    (もともとミトコンドリアは)私たちの細胞に寄生した別の生命体だったのである。ミトコンドリアの体内にDNAが確認された。DNAを持っていたということは、それが独立した生物だったことを意味するのである。

    248
    ミトコンドリア・イブ
    全ての人類が、アフリカにいた一人の女性のミトコンドリアDNAを継承している

    274
    人間の子供は七歳くらいまでに「他人にも自分と同じ心がある。しかし他人はそこに自分とは違う考え方を持っている」ということが理解できるようになる。

    276
    エントロピー増大の法則。エントロピーとは「乱雑さ」の尺度で、錆びる、乾く、壊れる、失われる、散らばることと同義語と考えてよい。
    生命はそのことをあらかじめ織り込み、一つの準備をした。自らを壊し、そして再構築するという自転車操業的なあり方、「動的平衡」である。

  • 生命現象は動的平衡、すなわちたゆまぬ「流れ」であり、私たちの身体はその「流れの淀み」である。決してパーツを組み立てたプラモデルのような機械ではなく、パーツの交換によって老化を止めたり、健康を維持することは出来ない、と言うのが著者の一貫したスタンス。

    今回新書版を出すにあたって追加された第9章では、動的平衡を記述する数理モデルが提案されてしいるが、生命がどう「エントロピー増大の法則」と折り合いをつけながら秩序を維持しているのか、難しくて直感的には理解出来なかった。このパートがもっと分かりやすかったら、星5つなんだけどなあ。

  • 第8章の象とクジラの話だけでも、この本を読んで良かったと思った。感動した。

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新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)の作品紹介

「生命とは何か」という永遠の命題に迫る!

●年を取ると一年が早く過ぎるのは、「体内時計の遅れ」のため。●見ている「事実」は脳によって「加工済み」。●記憶が存在するのは「細胞と細胞の間」。●人間は考える「管」である。●ガン細胞とES細胞には共通の「問題点」がある…など、さまざまなテーマから、「生命とは何か」という永遠の謎に迫っていく。発表当時、各界から絶賛され、12万部を突破した話題作をついに新書化。最新の知見に基づいて大幅な加筆を行い、さらに画期的な論考を新章として書き下ろし、「命の不思議」の新たな深みに読者を誘う。哲学する分子生物学者・福岡ハカセの生命理論、決定版!

【編集担当からのおすすめ情報】
『動的平衡』は発売当時から評判が高かった本ですが、今回、ES細胞やiPS細胞などについて最新の知見を踏まえ、加筆していただきました。さらに、『動的平衡』そのものについての、先生の研究成果を取り入れた画期的な論考を新章として追加しました。初めて読む方が面白く読めるのはもちろん、既に単行本で読んでいる方は、新章を読むことで「動的平衡」の深化がわかります!

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