ひねもすのたり日記 (第2集) (ビッグコミックススペシャル)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098603350

作品紹介・あらすじ

国民的作家ちばてつやがマンガと出会った頃

中国大陸での苦難の引き揚げの旅を終え、千葉一家はやっと全員無事に日本へ帰ってきた。引き揚げ先の千葉県・飯岡で、てつや少年はすくすくと育ってゆく。ある日てつやは、田んぼのあぜ道で初めて「マンガ」と出会った! 運命に引き寄せられるようにひと筋の道を歩み始めた少年の心の中と、現在の作家としての日常をユーモアたっぷりに描くオールカラーショートコミック。夭逝した実弟ちばあきお氏の想い出など、切実な思いが胸にしみる。

【編集担当からのおすすめ情報】
第1集では、旧満州ですくすくと育ち、7歳の時に敗戦。そして中国からの引き揚げの苦労を描いた内容でしたが、この第2集ではマンガと出会い、それを生きる道と思うまでのちば少年の成長が読めます。そしてマンガの世界に案内してくれた大事な友・木内くんの想い出。実弟の夭逝した作家・ちばあきおさんの想い出。コマから溢れる想いに胸打たれます。

感想・レビュー・書評

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  • 毎回4Pのたり連載だから、ゆっくりと読んでゆくと決心してからいつのまにか2年半近く経ってしまった。図書館にもネットカフェにも置いていないので、これは買うことにしている。

    おそらく、ちばてつやの代表作のひとつになると思う。老齢の漫画家が、何処まで描けるのか、その一つの典型を、ちばてつやは、史上初めて我々に見せてくれつつある(杉浦茂は例外)。老齢だからこそ描ける世界があることを、本書で我々は初めて知るのである。葛飾北斎は88歳まで現役だった。ちばてつやは、あと7年は頑張ってもらいたい。

    とは言いながら、1話目は高井研一郎の生前葬の葬儀委員長をやった時の思い出で、2回目の委員長をやろうとしたら本葬になったというエピソードだった。そうだった。山口六平太の新しい話はもう読めないんだ、と突然寂しくなった。ちばてつやも、いつ亡くなってもおかしくはない。

    実弟のちばあきおの話も、全て器用になんでもこなす弟が、漫画を描いてみると四苦八苦して半年もかけて一作描いたというエピソードだった。兄からすると、漫画家になったことが弟の命を縮めたのではないか?という想いは(書いて無いけど)あったのかもしれない。「あの時引き止めなかったことに、少々悔いが残ります」と呟いている。でも、ちばあきおの描いた「キャプテン」「プレイボール」「チャンプ」などは、全て一つのテーマを「不器用に」追ったもので、作者の方はスポーツも勉強もそんなにも優秀だったとは、私は思いもしなかった。兄は書いている。「でも(略)多くの人々に長く愛される作品をたくさん描きあげたよ。‥‥ごくろうさま。」

    その他、心にじんわりと響くエピソードがいっぱい。

    前作は満洲からの引き揚げ体験がメインで、あれ以上のとっておきの話はないかも、と心配していたのだが、そうではなかった。今回の主な話は、漫画に初めて出会って、描き出して、初めて貸本屋から原稿料を貰ったところまで。ひとつひとつを丁寧に描くことで、此処まで読ませる漫画になるのか、と感心する。もしかしたら、ショートコミック形態で、テーマはなんでもあり、時々思いついたようにストーリーが流れるという形式が、ちばてつやには1番合っている形式なのかもしれない。全面カラーなので、アシも使っているはずだけど、色使いも目配りが届いている。アマゾン川で観た満天の星空の描写は、肉筆を展覧会に出したならば、必ず人々の足を止めることだろう。そして何よりも殆どの登場人物に生命が宿っている。特に父親、母親、兄弟、全部の登場シーンをその歳ごとに描き分けて、しかも何を考えているのか想像できるように描いているのは凄いと思う。

    それから、小学3年で木内くんに勧められて初めて描いた漫画や、小学6年の時の漫画を見せてくれている(←物持ちが良い)。私は私の小学5年の時の漫画を持っているが、それとのレベルの違いをまざまざと見せつけられて、改めて漫画家にならなくて良かったと思った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      引き揚げの話は、アンソロジーか何かで読みました。真っ当にしていれば見てくださる人が居る。と見てシミジミ感じました。
      N...
      kuma0504さん
      引き揚げの話は、アンソロジーか何かで読みました。真っ当にしていれば見てくださる人が居る。と見てシミジミ感じました。
      NHKのノーナレで、ちばてつやの回があったのに録画し損ねた。再放送まちです!
      2020/09/28
    • kuma0504さん
      猫丸さん。
      アンソロジーで見た満洲引き揚げ話は、おそらく全く別の作品で、それとは違うエピソードが満載です。

      それは1巻目ですが、この2巻目...
      猫丸さん。
      アンソロジーで見た満洲引き揚げ話は、おそらく全く別の作品で、それとは違うエピソードが満載です。

      それは1巻目ですが、この2巻目でも突然満洲引き揚げ話が出てきて、非常に重要な場面が描かれます。80歳を過ぎると、後から後から思い出が湧き出てくるのかもしれません。
      2020/09/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      「それとは違うエピソードが満載です。」
      読まなきゃ、、、はぁ追いつかない。。。

      NHKオンデマンド | ノ...
      kuma0504さん
      「それとは違うエピソードが満載です。」
      読まなきゃ、、、はぁ追いつかない。。。

      NHKオンデマンド | ノーナレ 「屋根裏のちばてつや」
      https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020107820SA000/?spg=P201700168700000
      2020/09/30
  • 終戦後まだまだ食料不足が解消されず、世間では子供たちが牛乳配達や新聞配達をして家計を助けていた頃の話です。
    ちば一家は隅田公園近くに移り住んできます。てつや少年は小梅小学校で絵の上手な木内君と出会い、マンガを描くきっかけが作られます。

    高校生になってすぐに日用雑貨を売り歩くアルバイトなんかをしています。
    いわゆる"押し売り"ですが「学生援護会」という組織が斡旋していたりしてまだまだ怪しげな時代でしたね。

    ちば青年はまだ高校生の時、貸本屋の漫画家募集広告を見て店に出向き、テストだよと言われて描いたマンガで当時のサラリーマンの初任給に相当するお金を貰います。
    その時手にした、昭和30年に発行されたばかりの(現行のアルミニウム硬貨の)1円玉の輝きが忘れられないとのことです。
    そういえば4年程前から一般流通向けの1円玉は作られていませんが、令和の1円玉はこれから目にすることはないのでしょうかね?

    ちば一家は八百屋で生計を立てていたようですが、店の中に吊り下げられたザルのお金入れに懐かしさを感じちゃいました。
    さて2巻が終わってようやく漫画家デビューまでこぎつけましたが、このシリーズいったい何巻まで続くのでしょうか。

  • 今回も面白かった。

    何をやってもうまくいかなかった学生時代にお母さんの知り合いから教えてもらった小さな出版社で描いた漫画がお金になった時の喜びは大きかったと思う。

    漫画家仲間の話があったり子供時代の話があったり、本当に飽きさせない本だと思う。

    もちろん3巻目もポチッとしてしまいました。

  •  第2巻は「ちばあきお」の思い出です。イヤ、ほかにもいっぱいあるんですがね。ぼくらの世代では、やっぱり気になるんです。レビュー、ブログに書きました。読んでみてください。   https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202004190000/

  • お父さんが仕事用に調達した自転車を隅田公園で弟たちと乗り回し、自転車の乗り方を教えようと一緒になって遊んでくれた気の良い大学生が、実は自転車泥棒だったという大事件。誰もが過不足なく暮らして行くには時間が必要だった戦後の生活を感じました。

  • 命がけの引き揚げの道中、学校入った時困らないようにってちばてつやに九九教えてたっていうお母さんのエピソードが強すぎて、なんてかもう見習える域を超えている……人間って簡単に死んじゃうんだというてつや少年の学びと、人間ってこんなに強靭なんだという事実が同時にやってきて、に、人間……と頭ぐるぐるしちゃいました。
    漫画家さんたちとの交流エピソードも相変わらずほっこり〜アマゾン川の泥水に指浸してミルクコーヒーみたいね‼︎って仰る望都先生かわゆすぎかな。

  • 退職した0代の♂は無価値、どころかマイナスの存在でしかない。

  • いい感じ。往年のマティスの風格。

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著者プロフィール

ちばてつや(本名:千葉徹弥)1939年(昭和14年)1月11日、東京築地の聖路加病院で生まれる。 同年11月に朝鮮半島を経て、1941年1月旧満州・奉天(現中国・遼寧省瀋陽)に渡る。 1945年終戦。翌年中国より引揚げる。 1950年、友人の作る漫画同人誌「漫画クラブ」に参加。1956年、単行本作品でプロデビュー。1958年「ママのバイオリン」で雑誌連載を始め、1961年「ちかいの魔球」で週刊少年誌にデビュー。 主な作品に「1・2・3と4・5・ロク」、「ユキの太陽」、「紫電改のタカ」、「ハリスの旋風」、「みそっかす」、「あしたのジョー」、「おれは鉄兵」、「あした天気になあれ」、「のたり松太郎」など。 公益社団法人日本漫画家協会会長。 東京都練馬区在住。

「2022年 『わたしの金子みすゞ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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