文豪ナビ 川端康成 (新潮文庫)

制作 : 新潮文庫 
  • 新潮社
3.38
  • (9)
  • (11)
  • (40)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 254
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001005

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『水晶幻想/禽獣』は微妙だったものの、先日『雪国』にガツンとやられた。
    次は何がいいのだろう…と思い、取り敢えずコレを手に取った。
    初心者向けに短めにザーッと紹介してくれているので助かる。

    本書によるとやはり『伊豆の踊子』スタートで、次に読むと良いとされているのが『雪国』だったので、さてどうするか…。
    気になっていたのは『眠れる美女』と『山の音』。
    『雪国』が良すぎて、次でがっかりしたくない感があるというのが正直なところ。

    齋藤孝が、川端の文章が如何に官能的で美しいかを巧みな言葉で表現されていて良かった。
    が、直後に『雪国』を名古屋弁でやってみるという暴挙に出ており、流石に引いた。
    なんてことを。
    齋藤先生ご本人も"暴挙"と仰られているし、"破壊"がどーたらとお話になられてはいたけれど、
    それにしてもあんまりだ。
    正直私には、そうして壊すことの意味がわからなかった。
    壊してみなくとも、川端の描く女性の美しさは明確だからだ。

    石田衣良は川端の小説を、"美しい「あいまい」さ"と表現していた。
    角田光代は、高校一年の時に『伊豆の踊子』を読んで"まったくつまらない"との感想を残したとのこと。
    だが、"つまらないのは「伊豆の踊子」ではなく私自身であった、と気付くのは、感想文から十五年後の………"と続く。
    "そうして川端康成は、映像よりも確かに、映像よりも美しく、映像よりも強烈に、その光景を読み手の内側にねじこんでくる。あんなに短い言葉の連なりで。"

    『禽獣』には不快感を抱いたので気にしなかったが、川端が犬や鳥が大好きだったことを、島内景二先生の評伝で知った。
    そして"川端が執着したのは「少女」であって……"、"お人形さんのような美に心ひかれたのだ。"
    そして"性愛"という意味ではなく、"温かい肌と肌との接触"を願う。
    そうだよねぇ。
    それはもう、初心者の私でさえ感じる部分だもの。

    『夕景色の鏡』という作品の、"……つまり写るものと写す鏡とが、映画の二重写しのように動くのだった"という汽車の窓の描写を取り上げており、本書文中にもある通り、『雪国』でも使われた技法じゃん!と興味深かった。

    昭和五年の雑誌インタビューに答えたアンケートも面白かった。(P68に写真あり)
    1~10の回答で、既に川端康成という人の輪郭が見えるようだ。
    「1.妻はなしに妾と暮らしたいと思います」
    「6.仕事は一切旅先でしたいと思います」
    等々。

    "昭和四十七年四月十六日、逗子の仕事部屋でガス管をくわえて自殺している川端の姿が発見された。"

    本書を読み終えて、当初から思っていた、次は『眠れる美女』か『山の音』にしようという思いは固まった。
    どちらにするかは決めてないけれど、再び川端作品を手に取るときは、どちらかにしようと思う。
    『夕景色の鏡』も少し気になりつつ…。

    • 本郷 無花果さん
      こんばんは。
      川端、良いですよね。私の最推し、徳田秋聲をベタ褒めした作家でもあるので、違う意味でも好きです(笑)
      『山の音』良いですよ。
      戦...
      こんばんは。
      川端、良いですよね。私の最推し、徳田秋聲をベタ褒めした作家でもあるので、違う意味でも好きです(笑)
      『山の音』良いですよ。
      戦後の日本文学の最高峰と言われるだけあります。
      個人的にまた読みたい作品です。
      『眠れる美女』は現在積んでいますが、楽しみで仕方ありません。
      どちらも外さない名著だと私は思います。
      存分に迷ってください(笑)
      2023/10/23
    • 傍らに珈琲を。さん
      本郷 無花果さん、こんばんは。
      川端、良いです~。
      (徳田秋聲は存じ上げないのですが。)
      『山の音』『眠れる美女』、無花果さんのお墨付きであ...
      本郷 無花果さん、こんばんは。
      川端、良いです~。
      (徳田秋聲は存じ上げないのですが。)
      『山の音』『眠れる美女』、無花果さんのお墨付きであれば間違いないですね♪
      そうなんですよね、最高峰と言われているのは『山の音』なんですよね。
      揺れるなぁ。。。
      楽しみながら迷いたいと思います。
      2023/10/23
    • 本郷 無花果さん
      おはようございます。
      僭越ながら布教活動を。(笑)
      「日本の小説は、源氏に始まり、西鶴へ飛び、秋聲に飛ぶ」と言われています。漱石でも鴎外でも...
      おはようございます。
      僭越ながら布教活動を。(笑)
      「日本の小説は、源氏に始まり、西鶴へ飛び、秋聲に飛ぶ」と言われています。漱石でも鴎外でもない。
      近代文学、特に小説において決して無視できない作家(のハズ…)です。
      秋聲の作品はとにかく地味。物語に起伏が無い。文章も飾り気が一切無い。そして読み難い。これらが要因で読まれなくなりました。
      しかし、地味ではあるが、滋味なのです。
      川端も「秋聲氏の作品は読み難い。だが、時間をかけてじっくり、本当にじっくり読んで貰いたい」と言っている程です。
      例えるなら、どん兵衛(赤いきつね)のお揚げを一口噛んだ時に溢れ出るお出汁が、腹の底に染み込んで行く。(個人的感覚)
      そんな味わい深い文章が特徴です。
      強いることは致しません。ご興味が出て来たら読んでみてください。
      朝から煩わしいコメント、失礼致しました。
      2023/10/24
  • 谷崎潤一郎のエロティックさと、彼のそれは、別種のような気がする。

  • 角田光代先生!僕も同じです!
    中学だか高校の頃、「伊豆の踊子」を読んで「まったくつまらない」と思い、以来、川端康成には近づきませんでした。
    角田先生と違うのは、川端康成を再読するきっかけとなった本。僕は「眠れる美女」でした。角田先生と並んでエッセイを収録されている石田衣良先生と一緒です。
    ほんっとに川端の踊子とか、漱石の猫とか、太宰のメロスを子供に薦めるのはやめてほしい。
    子供には判りそうになくても、内容が不謹慎でも、最高の物を読ませてほしい。所詮芸術なんてインモラルなものなのだ。解らなくても何かを感じ取っていくだろう。

    「ノーベル賞なのにィこんなにエロティック?」という副題に惹かれて本書を手に取りました。残念ながら副題について解き明かされている部分は僅かです。巻末の島内景二先生の文章がこれに触れてはいましたが、これだけでは論拠に欠ける気がします。
    しかしながら、まったくつまらなかった伊豆の踊子を再読してみようとは思えました。面白かったら、今更ながら「伊豆の踊子」のレビューも書いてみようと思います。

  • なぜ、川端康成の文章が優れているのか。若い人は、読んでもさっぱりわからないのも多かろう。著者の文体の解説、人となり、人生を紹介した本書を読んでから、作品に臨むのもありだと思う。2014.8.21

  • 写真が綺麗

    川端康成の入門書にはピッタリでしょう

  • このシリーズも6冊目。川端康成は成功して、結構長生きをしてノーベル賞ももらってさぞかし幸せだったのかと思ったら、最後は自殺してました。わからないものです。「美しい日本の私」はいずれ読んでみたい。201312

  • 結構代表作には眼を通していると再確認。
    川端の人生を手軽に覗ける後半部がよい。



    2022年10月再読。
    評伝よくできている。

    目次
    超早わかり!川端作品ナビ
    10分で読む「要約」川端康成
    声に出して読みたい川端康成
    川端にぶっとんだ作家による熱烈エッセイ
    評伝 川端康成

  • 雪国 伊豆の踊子のダイジェスト付き

  •  川端康成初心者のために、川端康成文学の楽しみ方を教えてくれる1冊。「ノーベル文学賞受賞したエラい作家さん」だと身構えている人間に、敷居を低くしてくれるのが嬉しい。 収録されている角田光代のエッセイに、共感しまくり!その昔読んだ『伊豆の踊り子』の良さが判らなかったのは、私が青臭い小娘だったからなのか!「大人にならないと川端康成を読むことはできない」 この言葉に背中押されて、少しづつ作品を読んでいこうと思う。読もうかどうか躊躇している人間の背中を、どーんと押してくれる1冊です。 断定的に決めつけてる点が引っかかるが、結局は読む人次第。まず読まなくちゃ、お話にならないもんね。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×