女であること (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001166

作品紹介・あらすじ

女人の理想像に近い弁護士夫人市子や、市子を同性愛のように慕いながら、各自の恋愛に心奥の業火を燃やす若い二女性を中心に、女であることのさまざまな行動や心理的葛藤を描いて女の妖しさ、女の哀しさをみごとにとらえた名作。ここには、女が女を知る恐怖、女の気づかぬ女の孤独と自負が、女の命のなまなましさと無常の美とをたたえながら冷酷に照らし出されている。

感想・レビュー・書評

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  • 「朝日新聞」への連載開始は1956年で、1巻をその年に、2巻を翌年に刊行。
    とはいえ佐藤碧子による代作の疑いあり。
    どおりで川端にしては長い。
    ただしきちっとした構成がなくダラダラと続いていくのは川端っぽいといえばいえる。
    また、美しい令夫人の市子、気の強い割には気弱なところもあるエキセントリックなさかえ、暗い影を背負った妙子、という女性の三角形と、
    彼女達に振り回される佐山、光一、有田という男性の三角形が組み合わさる関係性で話が持続していく作りは、結構川端っぽい。
    マンネリの極致なのだ。
    で、小母様が好きだとか小父様が好きだとか中年男性の夢のような展開をさせておいて、結局はさかえの奔放が結果的に夫婦を(性的に)盛り上がらせたという、夢の夢みたいな展開にしていくという、悪しき中年男性作家のドリームばかり。
    正直結構辛かった……。
    ネットで感想を漁ると、結構真正面から感動したという人がいてびっくり。
    まあ1956年という「第二の十年」の初期にあたるピースを把握しておくためには、読んでよかったが。
    代作問題については、「真似しやすい文体」であったこともまた要因のひとつなのかなと、思ったりした。

  • 川端康成の現代物。
    昭和30年代の東京を舞台に、子供のいない弁護士夫妻、身を寄せる被告人の娘、大阪から出奔してきた友人の娘が織りなす出来事。

    小説として深いものはないが、戦後間もない、豊かになりゆく昭和の世相が面白い。有楽町のキネラマ、キャバレー、デパートなど。映画化されてたら観たい。

    また、女性の描き方もど昭和で、男女交際の進み方とか「純潔を奪われる」みたいな表現、21歳くらいなのにすぐ結婚相手にどうかとか周りがソワソワしたりとかが面白い。女性の生き方は本当に限られていて、成人して結婚するまでの数年しか自由はなかったんだなと感じる。

  • 自由奔放で現代的なさかえが、弁護士夫人の市子の元に家出してきたことで、殺人犯の娘と負い目を感じている妙子や佐竹夫婦が変わっていく。 700ページ近い大作でしたが、物語に惹き込まれてあっという間に読了しました。女性を取り巻く社会通念は当時と大きく変わっている部分もありますが、女として生まれ生きていくことの困難や哀しさは実は変わっておらず、それは最早「女であること」の業なのだと深く感じました。人間関係を引っ掻き回すさかえの複雑な人物描写が素晴らしく、流石は川端康成だなあと思いました。

  • 結構前に読んだからちょっとあいまいだけど、
    読むの結構時間がかかった!
    嫉妬の様子とか恋に走る感じとかすごくおもしろかったです。
    美少女しか出てこなかったような、、
    なんか、古き良き日本の女性って感じやった、一歩ひくみたいな

  • 弁護士の佐山と妻の市子のもとにさかえがやって来る。夫婦は、妙子という死刑囚の娘をひきとって暮らしていた。市子は流産をしていたらしい。子供がなかった。さかえと妙子と市子という三人の女性。市子には清野という戦前に?恋仲だった浮気相手がいて、シネラマ(映画)に行った時に偶然再会する。さかえには光一、妙子は有田と同棲、そして結構までいくのだが、どうもしっくりしない。さかえは実は、佐山(夫)にほんとうは惹かれているのだということがわかるし、妙子は死刑囚の娘であるというところが決定的にネックになっている。それに、やはりさかえと妙子はうまがあわない。最後には、なんと市子が子供を産むことになるのだが、お腹が大きくなったりしていた気配がなかった気がするのは読み落としであろうか。

    連載小説のかたちだからか、どこまでも続けられそう。小さな絵が積み重なっている、並列に展示されているのを順番にみていくという感じの長編。退屈でもある。女性が読んだらどの程度、川端康成の描く女性に共感するのだろうか?

  • 分厚くてとても読む気にならなかったけれど、落ち着いてやっと読めました。
    妙子と有田の、愛を考えるシーンがとても印象的で、家族愛や夫婦愛を自身の体験に重ねて読むことができてとても感銘を受けました。愛は誰しもが与えられて育っているのにそれに気づかなく、生きてしまうもの、愛は無償に誰しもが与える事が出来るんだと気づくことが出来て、とても満たされました。

  • こんなに面白い小説があったのか!というくらい久々に一気に読んだ。
    文体は易しく、会話文が多くてテンポがいい。会話文では言い争ったりする中で少しの流れの変化で気持ちが揺れるのがよく伝わった。
    三人の女性が対照的に描かれているようで三人ともが似ているように思えてくる部分がある。
    特に市子とさかえは一部重なるように描かれていて、そういう部分が見える度にさかえは市子を理想化したり見損なったりを繰り返しているようだった。

  • いつの時代も女は変わらないんだなぁと思った。これを男が書いてるのがすごい。

  • 2016.10.14

    川端康成は女性か?!と思わせるほど、それぞれの女性の心の描写が細かく、生々しかった。それでいて、全体に漂うお行儀のよい雰囲気、物腰柔らかく、品があるのはやはり川端康成の言葉の使い方なのかしら?

    終盤のサカエちゃんの様子はちょっとイメージがつかみきれなかった。

    ノーベル文学賞作家の作品と気負って読み始めたが、昼メロのような展開に少し拍子抜けしたのも事実。しかし年代の違う三人の女性のその時々の心の葛藤が、今の年齢だから深く理解できたといえる。素直に面白かった。

  • 何度も読んでいます。
    男性である著者がなぜこんなにも女性を深く掘り下げられるのか。
    妙子の飲んだ薬がなんなのか気になります。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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