村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001456

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹によって私が癒されることはないけれど、あいだに河合隼雄を挟むことにより、村上春樹の思考と言葉によって癒されることがあると分かった。メンタルとフィジカルが物語にどう関わってくるのか、意外と小説について語られている部分もあったのでよかった。

  • 箱庭療法に詳しい河合隼雄さんとオウム真理教について話したい村上春樹さんの対談本。

    『ねじまき鳥クロニクル』の意味深な箇所を河合さんが考察したり、村上さんが言われてみればそうかもしれません、みたいに応えてたりしていて、なんだかとても勉強になった気分。たくさんのカタカナ言葉が並んでいて、意味が分からない部分も多かったけれど、気分だけは勉強できたから良し。

    1995年。阪神淡路大震災が起こり、地下鉄サリン事件が起き、Windows95が発売された年。なんとなく暗い雰囲気の平成初期。
    河合さんと村上さんが眺めた当時の日本社会。

  • 村上:でも、紫式部はなんのためにあれを書いたのでしょうね。
    河合:紫式部だって、やっぱり自分を癒すためでしょう、そう思いますね。

  • "「何かのメッセージがあってそれを小説に書く」という方もおられるかもしれないけれど、少なくとも僕の場合はそうではない。僕はむしろ、自分の中にどのようなメッセージがあるのかを探し出すために小説を書いているような気がします。”(pp.79-80)

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    なるほど。あらゆる活動はそうかもしれないと思い始めた。何かルーツ(根っこ)のようなものでつながっている。それは言い換えれば、自分の中にあるメッセージのようなものかもしれない。

  • 110

  • いくつか興味深い点について振り返っていく

    <コミットメントとデタッチメントについて>

    コミットメント(献身、かかわり)とそのマイナス方向の性質としてのデタッチメントは、日常における全ての出来事(人間関係、仕事、趣味)についてかなり重要な意味がある。その関わりの深さで人生のシェイプが決まるよな、とも思う。

    元来人はアウトプットしなくては生きていけないと思うし、コミットメントとはアウトプットという概念の1つ下の階層にあたるという意味でも、かなり重要度が高いよなと思う。

    <箱庭療法について>

    河合隼雄さんといえば箱庭療法なんだなと、何冊か著書を読んで印象づいてきた。

    患者に箱庭を作らせ、できた箱庭からその人の精神状態やおかれている状況を読み取るという、変わったアプローチの療法なのだけど、その抽象度が鍵なのだという。

    アメリカでは臨床心理のケアを行う際、言葉を用いた論理的なアプローチで患者の精神状況などをとことん分析しようとする傾向があるらしいが、言葉を用いて自分の症状を認知させるようなやりかたを取ると、患者としては逆に傷ついてしまうことがあるらしい。

    そこで箱庭を用いた分析アプローチを利用することで、ことを用いずに具体的に患者の精神状況を把握することができるという。

    詳細を記載されているだろうからないが、これはやはり経験則に頼るところも大きい治療法なのではないかと察する。

    <人間の暴力性について>

    村上春樹は戦争以降、日本は平和憲法などを用いて徹底的に暴力性を排除し、その結果として現代人は自分の内に潜む暴力性に気づかず成熟し、その暴力性が顔を出した時に悲惨な結果になってしまうような事件などが怒っている状況について言及していた。

    自分はお笑いがとても好きで、中でもサイコパスが現れるよな内容のものを好んだりする傾向があるのだけど、これはここでいう暴力性に対する認知のことなのだなぁと勝手に納得した(笑)

    この本は、現代人が生きるにあたって突きつけられる巨大なトピックをかなり本質に近いところで扱っている。

    河合さんも村上さんも、職業的にも人柄的にもそこに対して
    バシッと答えるようなことはしないけれど、やはりかなり鋭い目線を持っていて、そういうことを認識しておくと、どういうことに自分が悩んでいるのか、突き当たるかという状況に対してメタ認知できる状態になるので、かなり良いと思った。

  • 村上春樹は訊き、河合隼雄が「教える」ために多くを語っている。その結果、村上も語らざるを得なくなる。この構図を楽しむ本。日本社会と西洋社会の違い、そして現代人の生き方を考えていくうちに「暴力性」をテーマにせざるを得なくなった村上の軌跡が興味深い。
    とくに目をひかれるのは「井戸を掘る」という視点。
    それについては物語をつくるということについて、面白い対話がある。物語については作り手として、また批評家としてプロのふたりなので、短い言葉で“言いえて妙”、示唆に富む。

  • 2020.3
    再読。なんで人は物語に癒されるんだろう。井戸掘り。ずるさ。自分の物語をつくっていかないと。

  • 村上春樹が小説を書く理由が自分の中に内在する葛藤を整理する為というのには納得出来た。
    河合隼雄のカウンセラーとしての患者の向き合い方が優しく中立的だと感じた。
    貴重な2人の対談は理解できない部分もあったが面白かった。ページの前後にお互いの考察が書かれていたが読みにくかった。

  • メディアと小説についてお二人が述べている、第二夜が好きです。

    小説のメリットは、その対応性の遅さと情報量の少なさと、手工業的しんどさ。にある。(メディアはその反対で、そのスピードにのみこまれる。。)

    「フィクションは力を失っておらず、何かを叫びたいという人にとっては、むしろ道は大きく広がっているのでは…」

    と、春樹さん。

    そして河合隼雄先生は
    「小説や映画を見るときに、主人公と同定しちゃって一喜一憂している場合が多い」
    と仰っていて、すごく嬉しく感じた。

    「深く病んでいる人は世界の病を病んでいる」
    それで社会に発言するようになったという河合隼雄先生。

    なんだか本当に似ていたんですね、お二人の考えは。。

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