海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

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著者 : 村上春樹
  • 新潮社 (2005年2月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001555

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  村上春樹は読んだことがなかった。別に食わず嫌いだったわけでもなく、ただ何となく。そこへ、先日友人からのこの本を薦められ、読んでみた。初春樹だ。
     先が気になってやめられず、一気読みしてしまった。時間は計ってなかったけれど、ものすごく速かった。ストーリーが面白かったのもあるけれど、話の密度が低いのも速く読めた一因ではないか。一見深いことを言っているようなシーンも多いのだが、その背景にあるのは著者の感覚に過ぎないように思える。論理的な説得力が感じられず、全体的に話が軽い。なので、どんどん読み飛ばしてゆける。
     軽いと言えば、登場人物も軽い。性格が軽いのではなくて、存在感が軽い。まず人が存在して 彼らが動いてストーリーが生まれるのではなく、まずストーリーがあって それに基づいて人物が動かされている感じがする。それぞれ葛藤があり悩みがあって、その中でもがきながら動くのが人間だろう。しかし、この本では「あ、台本にこう書いてあるから次はこう動かなきゃ」みたいな感じで登場人物は行動する。だから、存在感が軽い。俳優が舞台の上で役を演じてはいるが、それはあくまで舞台上だけの役割で、舞台を降りたら別の生活がある。その、舞台の上の部分だけを描写しているような感じ、とでも言おうか。人物に厚みがなくて、こっち側から見えている面は人間だけれど、それは皮一枚で、裏に回れば空っぽではないかとさえ思う。これはぶっ飛んだストーリーのせいではなくて、著者の問題だと思う。もっとぶっ飛んだストーリーでも、実在感にあふれた作品を書く人もいるのだから。
     軽さに拍車をかけているのが、ブランド志向な描写だ。レヴォのサングラスとか、VWのゴルフとか、トミーヒルフィガーとか、クルマやガジェット・ファッション関係で妙にブランドにこだわった描写が目につく。それが、ブランド物ばかり置かれた住宅展示場の生活感のない空間のようなイメージで、作品全体の実在感をさらに希薄にしている。
     何だかボロクソに書いてしまった。まぁ、ストーリーはよく出来ていた。

  • 主人公の15歳の少年が、幼い頃、母親と姉に捨てられた記憶を辿り、繰り広げられる抽象的かつ象徴的なキーワードを並べつつ、村上春樹的非日常空間を描く。
    ここに描かれている人物像は性格的にも性的にもマジョリティではなく、一貫して陰鬱でもの悲しい雰囲気が漂う。
    人の内面の弱さを全面に出すことを意図しているんだろうと考える。きっと学生の頃に読んでいたとしても内容は理解出来なかったろうと思う。

  • 後半の物語の方が好き。 ナカタさんとホシノさんのストーリーがたまらなくいい。 二人の会話もそうだが、二人の信頼関係というか、友情がとてもいい。最後にホシノさんがナカタさんの為にしてあげた事、中々出来ないよね。この物語はカフカ中心の話なんだろうけど、ナカタさん、ホシノさんが素晴らしい脇役を演じていると思う。

  • 様々な古典文学を抽象化しエッセンスを複雑に混交させ具体化的物語へ昇華する、村上春樹氏の凄さが作品からは伝わってくる。が、読み終えてもこの物語が一体何であったかの総括は難しい。村上春樹氏の他作品と比べてより現代小説的であり、所々差し込まれる残酷的であり肉感的であり直接的な描写が不思議な感覚を与える。カフカ少年の新たな旅立ちを感じさせる終わり方も特徴的であろう。本作品はカフカ少年を軸とした並行世界のようでありながら、ひょっとすると全てカフカ少年の幻想もしくは可能性であった世界なのかもしれない。最終的には各自の喪失を持って大人へ脱皮したカフカ少年に収斂し現実社会へ復帰する形で幕を閉じる。

    但し本作品は現実と非現実との区切りが比較的はっきりかつ唐突なところがあり、村上作品の持つ浮遊感みたいなものは少なめであったように感じる。

  • 大変惹きつけられる内容だったが、レビューを書くとなると難しい。ただ村上春樹にとって、男女の性的な関係は生きて行く意味から切っても切れない関係なんだなと言う事は改めてわかった。

  • 深い。ブログで書評を書いている方の記事を読んで、ほーーと。この世界観深すぎます。そしてノルウェイの森を読みたくなりました。
    なんなんだ、読みおわったあとに考えさせられるこの感じ。村上春樹ワールドをもっと知りたくなりました。

  • 47章のところで涙腺が崩壊しました。

    号泣しました。本読んで涙がでることは今回が初めてです。
    カフカ少年の佐伯さんとの恋とナカタさんと星野青年による旅の話が交互に進んでいく話です。ちょっと物語として読むと「???」ってなったけど登場人物から哲学を教えてもらってるという感覚で読んでました。
    47章と48章の共通していたことは亡くなった人の記憶や一部は生きている人の中で生き続けることみたいなのが素敵だと思えた。
    死んだら終わりじゃなくて、誰かの中で生きているみたいな。

  • 村上さんワールド全開でしたね。音楽や哲学、歴史などといった知識は勿論、真似できない表現の数々、改めて小説家の並外れた能力を思い知らされました。私にとって村上さんの作品を読むのは二つ目となりますが、夢中になっちゃいましたよ(笑)。
    さて、内容は母親が姉を連れて家を出ていくことで、父と二人きりになった主人公の15歳の少年、カフカ。父は芸術にしか興味がなかった?ために出て行ったんではないかと思います。何の事情も知らされていないカフカは当然、心に深く傷を負ってしまいました。一見冷静でしっかり物事を考えるカフカですが、学校で暴れていたことからやはり荒んでいたのでしょう、まだ15歳のかわいい少年です。その少年が家出を決意し、旅に出ます。すべては定められた運命のように話は進んでいきます。
    実は私の家族も離婚しており、兄だけが父のもとに残りました。私は小さかったので分からなかったのですが、その時の兄は荒れていたそうです。優しい兄だからこそ、私にそういう姿を全く見せませんでした。そのためどうしてもカフカに兄を重ねてました。やはり、離婚というのはどんなやむを得ない状況でも子ども達にとって親の身勝手な行動なんだと思います。そんな理不尽なことに立ち向かって行くことができたカフカはとても格好良かったです。
    登場人物はみんな大好きですね。特に大島さん。どうしたらあんなに話が上手になるんでしょうか、羨ましい限りです。カラスと呼ばれる少年とは一体何者なのでしょう。カラスは戦争と死を司る神だったり、太陽の象徴だったりしますからね。
    ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」、この作品で初めて聴いたという方は多いと思います。まだ聞いていない方は是非、聴いてください。泣くのは苦手という方は要注意ですよ(笑)。

  • ナカタさんが好き。ホシノさんも好き。2人の関係が徐々に変わっていく様子などがカフカの動きよりも気になりました。

  • <この世界に、確かな足場がなかったとしても>

    フランツ・カフカは1912年に『変身』という奇妙な小説を書いた。未完の長編『城』が書かれたのは、その10年後だという。表題作のレビューに、どうしてカフカ本人の著作が出てくるのか。でもこれはなかなか重要なことなんじゃないかとおもう。

    『変身』の主人公グレーゴル・ザムザは、絶命の直前も自身の生に執着することなく、自分のことを疎んじる家族への愛情すらにじませて息絶える。対して10年後に書かれた『城』の主人公Kはどうか。主人公が時折覗かせるのは、不条理を受け入れず居場所や権利に執着する強烈なエゴだ。

    カフカがどんなことを思って物語を書ていたかは知る由もない。
    だけど『城』は、カフカ自身がずっと抱えていた迷いに対するひとつの答えだったんじゃないか、という人がいる。僕もおおむねその意見に賛成している。(未完だから、答えと言い切ることはできないけれど)

    本作の主人公は「そこにいるとなんだか自分がそこなわれていくような気がして」、東京から遠く離れた高松の地に導かれるようにして旅をする。世界でいちばんタフな15歳になろうとする。

    しかし彼は、進むことも引くこともできない思いを抱えながら、世界の隅で彷徨い続ける。世界の暗黙の了解として「自分」と「他者」はあまりにも個別的で、互いに孤絶しているものだということを思い知らされる。そしてまた、誰もがその生を引き返せない。

    彼だけでなく、一連の登場人物たちもまた「自分とはなんなのか」「どっちに行けばいいのか」という思いに悩みながら生きる。ホシノさんの「自分はからっぽなのかもしれない」という言葉や、佐伯さんの「何もかもを受け入れ、無感覚に世界をくぐりぬけても、すべては意味のないことだった」という言葉は、それを象徴しているような気がする。

    個別的な“傷痕”を抱えて、そのうえでどう進むか。あるいは、進まないのか。主人公は思い煩いながらも、多くの関係性のなかで「進む」ことを選択する。幕はそこで降りる。

    ここらへんに、僕はどうしてもフランツ・カフカの『変身』から『城』への歩みがダブる。自分を受け入れられなくても、自分が恥ずかしくても、あるいは世界のルールが受け入れられかったとしても、なんらかの形で折り合いをつけて、地に足をつけていく。個人的には、本作はそういうところがひとつ主題となっているんじゃないかなあと思った次第です。

    あまり関係ないけど、村上作品をいつ読んでも思うのは、
    登場人物が物語から退場するときの静けさの妙。
    いやはや、素晴らしい作品です。

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海辺のカフカ (下) (新潮文庫)の作品紹介

四国の図書館に着いたカフカ少年が出会ったのは、30年前のヒットソング、夏の海辺の少年の絵、15歳の美しい少女-。一方、猫と交流ができる老人ナカタさんも、ホシノ青年に助けられながら旅を続ける。"入り口の石"を見つけだし、世界と世界が結びあわされるはずの場所を探すために。謎のキーワードが二人を導く闇の世界に出口はあるのか?海外でも高い評価を受ける傑作長篇小説。

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)の単行本

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