海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001555

感想・レビュー・書評

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  • 大変惹きつけられる内容だったが、レビューを書くとなると難しい。ただ村上春樹にとって、男女の性的な関係は生きて行く意味から切っても切れない関係なんだなと言う事は改めてわかった。

    • アテナイエさん
      私もこの作品は大好きです。レビューを拝見して、なるほどぉ~と思わず頷いてしまいました(^^♪
      私もこの作品は大好きです。レビューを拝見して、なるほどぉ~と思わず頷いてしまいました(^^♪
      2017/02/13
  • 深い。ブログで書評を書いている方の記事を読んで、ほーーと。この世界観深すぎます。そしてノルウェイの森を読みたくなりました。
    なんなんだ、読みおわったあとに考えさせられるこの感じ。村上春樹ワールドをもっと知りたくなりました。

  • 初めて読んだ村上春樹の本。哲学や人文科学的な土壌を別にすれば、独特な世界観があって現実と現実でない世界が並行するという点で、あるゲームのノベライズ版に近い印象を受けた。
    中国人留学生が、「村上春樹の小説に出てくる人物は"落ち着きがない"。それが今の中国人と共通したところがあって、中国で(村上春樹は)とても人気がある」と言っていたのが興味深かった。

  • 読み終わって、現代じゃなくファンタジーカテゴリにしてみた。幻とか別世界とか、森を抜けて、何かに導かれて、身近な人の急死とか。

    結局石をひっくり返すとか、入り口がなんだったのかよくわからなかったけど。メタファー。

    この人の書く音楽の描写は好きだ。音って文章で表現できるんだ!登場人物の雰囲気もよい。芯はあるのにふわっとしていて、ちょうどいい具合に踏み込んでおいて、あとは近くても呼ばれるまで背中を向けている感じ。
    こんな友達、いたような気もする。なぜか懐かしい。

    ・なんか好きになった大島さんの台詞
    「誰もが恋をすることによって、自分自身の欠けた一部を探しているものだからさ。だから恋をしている相手について考えると、多少の差こそあれ、いつも哀しい気持ちになる。ずっと昔に失われてしまった懐かしい部屋に足を踏み入れたような気持ちになる」
    とくに月が蒼く見える季節には。
    とくに鳥たちが南に渡っていく季節には。

    わかったこれ…!!!!
    自分の友達じゃなくて、小さいときに出会ったスナフキンだ!

  • 下巻。
    上巻より面白かったですね。イッキに読み抜いてしまいました。

    「多崎つくる」も、読み始めるとアッと言う間に読んじゃったんですけど。
    あっちの方がなんだか、もやっ、・・・としました。
    「海辺のカフカ」、面白かったですね。ほんと。面白かったです。
    あまり文句ないっす。

    下巻は、トラック運転手の星野さんと、中野区から来たナカタさんが四国に渡るあたりからでしたね。

    なんとなく備忘録としておくと、

    ①中野区から家出してきた15歳の田村カフカ君(もちろん偽名)は、四国に来て高松周辺で、甲村図書館という素敵な私立図書館に出会う。
     そこで働く <女性だけど性同一障害で男性としての同性愛者である若い女性・大島さん> と、
     <かつて「海辺のカフカ」という歌謡曲を大ヒットさせた、恋人と死別した悲しい過去を持っている50代の女性・佐伯さん>
     の二人と仲良くなって、Hをしたりしなかったりする。
     カフカ君のお父さんは中野区で殺人事件にあって殺されてしまう。
     警察がカフカ君を探し始めて、カフカくんは高知の山奥に隠れる。
     そこで山奥の森の中で戦時中にその森で行方不明になった日本兵2名と出会って、導かれて、よく分からない死者の国っぽいところに行く。
     そこに佐伯さんがやってきて、この世の方に戻りなさいと言われて戻ってきた。
     戻ってくるとやっぱり佐伯さんは死んでいて、カフカくんは東京に戻って学校に行きなおす気になったので、新幹線に乗る。おしまい。

    ②なんだか良く分からないけど使命感に燃えて四国にやってきた、字の読めないナカタさんと、付き添いの星野さん。
     高松に入って、石を探す。カーネル・サンダースと名乗る男が現れて、おかげで石を発見。
     石をひっくり返すことで、何かの入口が開く。
     ナカタさん甲村図書館を見て、ここだ、と思う。入って佐伯さんと会う。なんだか意気投合して、佐伯さんが書いた原稿を燃やすように言われる。
     で、燃やす。燃やすと佐伯さんもナカタさんも、ぽっくり死んじゃう。
     星野くんはなぜだか猫と話せるようになり、石によって開いているらしい何かの入口に向かってくるよく分からないモノと戦った挙句に、
     もういちど石をひっくり返す。つまり閉じる。
     で、地元の名古屋に帰ることにする。

    というふたつのお話が交互に進行していきます。
    これだけ読んだら、何が面白いかサッパリ分かりませんよねえ。
    でも面白いんです。
    ある種のミステリーだし、冒険譚なんですよね。
    ただ、通常の、なんていうか新宿鮫みたいなモノのつもりで読んだら、腹が立つでしょうけど。

    で、カフカさんの小説がそうであるように、
    「ソレは何を表しているのか。何を隠喩してるのか」みたいなことを語りたくなるような小説ですね。
    なんだけど、そういうのはどうなんでしょう、と感じます。

    母親に捨てられた、と思っている15歳の少年。父親からまともに愛されなかった田村カフカ君。
    むしろ父親に、お前はいつか俺を殺す、と言われ続けた中学生。
    自信のなさと無謀さと理屈っぽさと愛情への飢えとハードボイルドでありたいプライドと、どうにもならない性欲に、
    なんだかんだ言いつつ七転八倒する主人公なんですね。
    それってやっぱり切ないし、過酷な運命だし、そんな彼が家出してローリング・ストーンなコトになる。

    そして、やっぱり世間の誰からも求められず愛されなかった、
    頭の弱いナカタさん。
    そのナカタさんが何か天啓を受けたかのように動き出す。
    それに付き合ってしまう、愉快な星野さん。

    このナカタ=星野コンビが探す、<石>。
    あるいは<入口>。
    あるいは、ナカタさんと、佐伯さんとの、なんだか意味深そうな会話。

    僕は正直、分かるのかと言われれば、サッパリ何がなんだかわかりません(笑)。というか、分かりたいとも思わない。
    だって、分かるために読んでるわけじゃないから。僕にとって面白いか面白くないかだから。
    (その面白さを言い表せるのかって言われるとそれは疑問ではあるけど。だからもし僕が職業的な評論家であるなら、僕の態度はちょっと問題かもしれないけれど。)

    そういうわけで、どうでもいいんです。僕にとっては。面白いから。
    ただきっと、春樹さんにとっては、ソウでなくてはならない何かがアッタんだろうなってだけですね。

    そんなこんなが描かれます。
    で、この小説の魅力は、そういう物語っていう入れ物が、ちゃんと入れ物として、面白い語り口を受け止めていられる強度がある、ということだと思います。
    あくなきレイモンド・チャンドラー風及びフィッツジェラルド風の、というかもう独特の引用とユーモアに満ちた村上春樹節、ハルキ節。と、でも言うべき文章。とにかく文章。語り口。その切れ味。
    微妙に現在形で押しちゃったりする、アノ感じ(笑)。まあ、読む人によっては、キザって言えばキザなのかもですけどね。
    でもねえ、あのキザさっていうの自体を、日本語という意味では、かなりこねくり作り上げたのが、70年代からの春樹さんの創作の足跡だったりしますからね。

    閑話休題。文章が、素敵!っていうことですね。
    もう、そのキレキレで自由自在なボールさばき、疾風怒濤のドリブル突破を、受け止めて、ちゃんとプレイさせてあげられる、枠組みとしてのチーム。
    そのチームみたいなものなんですよね。物語って。あらすじっていうのは得点場面ダイジェストみたいなもので(笑)
    別に、チーム全体とか、あるいは試合結果、得点場面、で感動するんじゃないんですね。ちゃんと、生で観戦している人は。
    もう春樹さんの、キレキレのドリブル、絶妙なため息の出るトラップ、感性でしか有り得ないダイレクトパス、そういった一つ一つが、醍醐味なんですよね。
    うん、なんか自分で納得が行きました。
    ただ、この「海辺のカフカ」は、その春樹さんのプレイをがっちり受け止めることが出来るだけの、強度のある枠組みなんですね。
    あるいは、その枠組み、土台のお陰で、春樹さんの文章という一個一個のプレイが、切れ味が良くなってる。

    という訳で。
    この本は大好きでした。ひょっとして春樹さんの中で、「風の歌を聴け」を除けば、僕にとっていちばんかもです。
    (多分、あれだけは特別だと思います。自分の中で。どうしてかっていうと、新刊で読んだわけじゃないんですけど、僕にとっていちばんはじめの春樹さんの作品だったからでしょうね)
    なんだけど、別にこの小説のなんていうか・・・お話の扱っている事件や、「なんだか意味ありそうで感動そうな場面」が好きな訳じゃないんですよね。
    なんていうか、とにかく語り口が僕は好きです。たまに、「ちょっと嫌味じゃないかなあ」とか思ったりもしますけど。

    それから、ぽろっとまとまらない感想を言うと、
    ●猫としゃべれるナカタさんと猫たち、のあたり(上巻)
    ●ナカタさんと、付き合ってしまう星野さん、のあたり(下巻)
    が、いちばん好きでした。
    特に、トラック運転手の青年男性・星野さん、大好きでしたね。ナカタさんとふたり、春樹さんが創造したキャラクターで、いちばん好きです。
    とにかく、下巻のふたりのやりとりは、ホントに面白いんです。
    漫才より爆笑で、にやにやしっぱなしでした。
    コレだけでも読む価値ありますよ!

    それだけでも、「多崎つくる」より、正直ぜんぜん面白かったです(笑)。

    あと。
    上巻の自分メモにも書いたけど、日本の歴史、過去、といったところがちゃんと視野に入っている、そこと今がつながっているんだ、という世界観。
    繋がっていることを、どう感じていくのか、どう見ていくのか、という手探り感。
    それはちょっと新鮮です。
    正直、スリリングにわくわくします。
    そのあたりをめぐる冒険なら、共に読書という旅をしてみたいですね。
    それを春樹さんのワールドで見るとどうなるんだろうっていうのは、もっと見たい。もっと読みたい。

    と、思うと、「ノモンハン事件が出てくる」という噂を聞く、
    「ねじまき鳥クロニクル」も、読んでみたくなるんですけどね。

  • ナカタさんが好き。ホシノさんも好き。2人の関係が徐々に変わっていく様子などがカフカの動きよりも気になりました。

  • この世界で生き続けるために必要な根をゆっくりと育ててくれる、自分にとってとても大切な小説。概ね内省的ではあるけれど、いくつかの地点でものすごく涙を流させる。結局のところわたしたちは、完全な円の中に生きることはできない。円を閉じてしまうということは決定的に損ない、損なわれることを意味する。そこには戻ることのできる場所も、記憶もない。

    「関係性」によって温かみを寄せ合うこと。強くあろうとする意志を持ちつづけること。

    実際に、あるいはメタファーとして、たくさんの血が流されるこの暴力的な世界にあって、わたしたちは深く傷つき損なわれるけれど、そこから回復することもきっと可能だ。そのことをこの小説は教えてくれる。
    村上春樹の言葉は静かに、とても現実的にわたしを励ましてくれる。『海辺のカフカ』に限らず、彼の作品をやはり読み返さないわけにはいかない。

  • キーワードはメタファー?
    時空を行き来し、現実と夢が交差する。
    難解だったけれど、カフカが最後に笑えるようになったのだから良いのではないか。
    それぞれが抱えているものは余りにもダークだけれども、残された家族に幸がありますように。

  • 上手く感想を表現できないが、好きな本だと思った。ナカタさんと星野さんの関係性が好き。星野さんがナカタさんに惹きつけられる理由もわかる気がした。

    現実では起こり得ないことだか、実は世界のどこかでこんなことが起こっているんじゃないかと思わせてくれる本だった

  • 眠るように死んでいった二人の失ったもの、カフカ少年を捨てた家族、祖父にしか頼れなかった星野青年。この物語は過去に思いを馳せる場面が特に印象的だった。
    大島さんを除いてほぼ全ての人物が過去に突き動かされて行動している。
    人間を成長させるものとは、なるだけ沢山の他人の経験と支持なのかもしれない。勿論、カフカ少年のようにこれからもっと「たくましく」なろうとする意志も必須だろう。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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