海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001555

感想・レビュー・書評

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  • 一組の男女が若くして深く愛し合うも少年を突然の不条理な死が襲い、二人は分たれる。少年の死を境に少女もまた生気を失い、生きながらにして死んでいるような影の薄い存在になる。時を経て、なにかのきっかけで少女の命が失われた時、二人は再開を果たす。この展開はノルウェイの森にもあった展開。

    少女は結果的には少年の後を追って死ぬこととなるがその死のタイミングは一種、運命的なものに決められていてそれまでは少女は(本人としては無意味に)生き続けざるを得ない。悲しみは悲しみのまま、損なわれた心は損なわれたまま、受け入れる強さを持つ女性の不思議な魅力(同時に危険でもある)はノルウェイの森の直子なり、本作の佐伯さんなり、色褪せることがない。

    下巻のナカタさんと星野くんの旅は悪しきものの住む異世界への扉を開け、そして時がくればその扉を閉める旅に他ならない。そしてこの扉を閉めるには誰かの命が代償として必要となる。このモチーフは騎士団長殺しに繋がっていくものだろう(異世界との交通が生まれる村上作品にはありがちな展開なのかもしれないが)。

    終盤のメタフォリカルなカフカ少年の旅の意味を深く考察することはできなかったが再読の機会に譲るとしたい。

  • 時間は止まることなく過ぎていくし、自分が思うところに辿り着いている。
    不思議だと思う。
    ありがたいことに周りには人がいてくれる。
    自分は一体何者なんだろう。

    これまで読んだ長編の中で一番心惹かれた。
    身も心もリセットして、空っぽになって、また一から歩き出したくなった。

  •  田村カフカという15歳の少年とナカタさんという老人のそれぞれ物語が交互に進んでいき、少しずつ交わっていく作品。
     あっと驚くどんでん返しや伏線があるわけでもなく、衝撃のラストを迎えるわけでもない作品だが、それでも心に残る作品でした。
     最終的に、佐伯さんとさくらがカフカ少年の本当の母と姉なのかや、ナカタさんが巻き込まれた事故についての詳しいことは明かされませんでした。でもこの作品の良さはそこにあるのではないかと感じました。近頃の小説や漫画は、全てをしっかり説明している作品ばかりですが、情報を小出しにし、あとは読者の想像に任せるという形の方が作品に深みが出るように思います。

    • Mayさん
      はじめまして♪コメント失礼します^ ^

      同感です!!全てに答え合わせを出さずに、読み手に色々と残してくれる。それぞれに答えを探させて感じさ...
      はじめまして♪コメント失礼します^ ^

      同感です!!全てに答え合わせを出さずに、読み手に色々と残してくれる。それぞれに答えを探させて感じさせてくれる。これが本物だって私も思います。

      だから村上春樹さんは好きです。訳がわからなくていい。自分なりに解釈して、自分の中の経験や感情と結びつけて、色々な事を考えさせられる。これが楽しいです♪(むしろ嫌いな人はそういうところが嫌いなんだと思いますが笑)

      と同じような事を思っていたので思わずコメント失礼しました!汗
      2024/01/22
  • 上巻から一ヶ月以上経ってやっと読了。
    村上春樹節全開で、わからないこともかなり多かったけど、それでも「愛する人が死んでしまっても、その記憶は自分の中に残り続ける」というメッセージは伝わった。村上春樹は色んなわかりにくいメタファーを持ち出してきて、読者(私)を混乱させてくるけど、結局一番書きたいことは「愛する人の死」っていう単純なことなんだろうなぁとどの著作を読んでも思う。
    基本的に私は村上春樹が出してくるよくわからないキャラクターのことは、あまり考えすぎず「世界観世界観〜」って感じで流しちゃうんだけど、まじでジョニー・ウォーカーは誰なのか問題と、カフカとナカタさんの関係は結局何だったのかが気になりすぎる。
    そこに意味を求めるのは野暮かもしれないけど。

  • 私にとって初めての村上作品です。
    県外で本屋にて引き寄せられるように手にとった本。本を開いたらあっという間に読み切った思い出が…そのあと村上作品を急いで買いあさったな〜
    また読みたくなりました。

    ぜひ〜

  • ちょっと気持ち悪い描写もあるけれど、雰囲気が良かった。

    大島さん、すごくいい!
    穏やかで名言が多い。
    「僕らはみんな、いろんな大事なものをうしないつづける」
    「大事な機会や可能性や、取りかえしのつかない感情。それが生きることのひとつの意味だ。でも僕らの頭の中には、たぶん頭の中だと思うんだけど、そういうものを記憶としてとどめておくための小さな部屋がある。きっとこの図書館の書架みたいな部屋だろう。そして僕らは自分の心の正確なありかを知るために、その部屋のための検索カードをつくりつづけなくてはならない。」

    暴力だったり、想像力だったり。
    よくわからないようなわかるような。


    「目を閉じちゃいけない。目を閉じても、ものごとはちっとも良くならない。目を閉じて何かが消えるわけじゃないんだ。それどころか、次に目を開けたときにはものごとはもっと悪くなっている。私たちはそういう世界に住んでいるんだよ」

  • 後半の物語の方が好き。 ナカタさんとホシノさんのストーリーがたまらなくいい。 二人の会話もそうだが、二人の信頼関係というか、友情がとてもいい。最後にホシノさんがナカタさんの為にしてあげた事、中々出来ないよね。この物語はカフカ中心の話なんだろうけど、ナカタさん、ホシノさんが素晴らしい脇役を演じていると思う。

  • うーん、、、正直下巻は更に難しかった。
    沢山の疑問がはっきり答えが分からないまま終わってしまった感じ。
    何回も読めばもう少し理解出来るのかもしれない。
    でもこれだけはいえる。
    彼は一番タフな15歳の少年だと。

  • 不思議な話だった…というのが読後まず抱いた感想です。下巻で上巻の伏線が回収されていく展開になるのかと思いきや、、そうでもない感じ笑
    なんだかよく分からず、最後もここで終わりか…!という感じでしたが、読後にモヤモヤするのかといったらそうでもない不思議さ笑
    主人公の少年が物語の終盤で「本当の答えというのはことばにできないものだから」と言う場面が出て来ますが、この小説の本質はこの一文にあるのかなと漠然と感じています。
    また何年か後に再読したら違う印象を受ける予感のする物語だったなと。

    以前に比べ読書量も減り、それに伴い読むスピードも落ち、なんとなく文学から遠ざかるようになっていたため、久しぶりに読んだ文学作品でした。
    読んでみるとかなり時間はかかりましたが、、文学はやはり良いものだなと思いました!
    また村上春樹作品読もうと思います。

  • 文体が独特。ジャズ聴きながら読むのが好きです。
    シューベルト聴きたくなってYouTube飛んだらコメント欄に同じ人がいてほっこりしました^_^
    性描写に、はじめは嫌悪感を抱いたのですが、ファンタジーだと思い込むことで回避できました。
    エディプスコンプレックスをひしと感じさせる作品でした。
    文体を楽しむってこういうことか〜と思いましたが、
    きちんとした考察も聞いてみたいです。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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