- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101001562
感想・レビュー・書評
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近頃になってやっと、
村上春樹の短編に目覚めた。
本作は、映画『ハナレイ・ベイ』を観て、
その喪失に向き合うまでの物語に揺さぶられて、
原作を読みたくなって手にした。
5つの作品はいずれも、
生きる人々の息づかいの間に潜む、
それまであったような、
突然現れたような、
傷つきや喪失の物語である。
痛みに向き合えた時に、
やっと自分を生きることができるのだという、
限りなく個人的な希望がうっすらと見えるものが、
私は好きなのだと思う。 -
5つの短編集に共通することは「何かを失っている」こと。
しかし、読み終わるまでそれを気づかなかったくらい、感じるはずの虚無感がなかった。
むしろ、何かを失うことで新たな発見があるというか。
別れは出会いとなりうる、なんて聞こえのいい言葉を言いたくなったりして。
綺麗事かもしれませんが、別れや失うことは
何かを得るためには必要かも。
ハナレイ・ベイの空気感が好きだし、
日々移動する〜の、ドラマチックな2人の出会いが好みでした。
偶然の旅人の話の書かれ方も好きだなあ。
これは特に「偶然の必然さ」を感じ、一番胸に響いた。
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ノルウェイの森に引き続き村上春樹の2冊目。考えさせられるんだろうなと感じるものの何を考えさせられているのかはわからない。
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偶然の旅人、おもしろい。あまり注意をしていないから偶然の一致と思うだけで、そんなのはよくある一致の一つ。
腎臓の話、「職業とは本来、愛の行為である」
カルヴァンあたりの宗教家か哲学者が言ってそう。耳が痛い。。 -
とても読みやすい短編集。途中、実際にあった話??読み進めていくと、いやいや物語?いや現実?ってなるかんじで、一つ一つの物語
に吸い込まれていく。中でも好きな物語は、偶然の旅人、ハナレイ・ベイ。 -
一人称単数に品川猿が出てくる。
何か前にあったよなーと思って、東京奇譚集を見つけて、もう一度、一気に読んでしまった。まるで既読感がなかった。初めて読むような。かつて読んだ時の自分と今の自分が違うってことですね。
名前を忘れてしまうみずき。品川猿が松中優子に恋をして寮の名札を盗んだ時に一緒に盗まれてしまったのだった。松中優子は自殺する前に、特別親しくもないみずきに嫉妬について質問をする。みずきには嫉妬という感情はない。後で品川猿に聞いてわかることだが、みずきは母親からも姉からも愛されず、遠ざけられてきた。自分では気づいていたが、意図的に気付くまいと蓋をしてきたのだった。防御的な姿勢で生きてきて、だから、誰かを真剣に無条件で心から愛するということができなくなっている。
品川猿はディーセント。この後、高尾山に放されて、猿の群れに溶け込めずに、水上温泉と思しき古びた旅館で働くことになるのか。一人称単数ではそういう設定だ。 -
短編集5編
そんな偶然ある?というような出来事とそこに漂う様々な感情,流れていくような日常の中で屹立する瞬間が鮮やかに切り取られて印象に残る.「品川猿」など,まさしく奇譚といってもいいが,文章の中で名前を集める異質な猿が物語の中に調和しているのが面白い.