世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001586

感想・レビュー・書評

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  • レンタカー屋の女性が魅力的だ。ディランの声をを「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」彼女は音楽の本質をさらっと言いのけているように思える。
    最後に生きたい、となるところも好き。

  • 初めての村上春樹!
    こういう系はたぶんしっかり読み込んでも完全に理解は出来ないから、どうしても表面をすくう感じの読み方になってしまうけど、それはそれでいいのかなと。

    世界は様々なモノで溢れていて、生きるためには特別必要ではないけれど、それらが心を豊かにしてくれているんだなあと思った。

    ラストは、心と記憶をもった"影"は世界の終わりから逃げ出せたから、"ハードボイルド・ワンダーランド"の主人公は心と記憶を取り戻して、日常生活を生きていける。一方"世界の終り"の主人公は、壁の外の森の中を彷徨いつづけることになる。と私は解釈しました!

  • あらすじ
    「ハードボイルド・ワンダーランド」の章は、暗号を取り扱う「計算士」として活躍する私が、自らに仕掛けられた「装置」の謎を捜し求める物語である。半官半民の「計算士」の組織「組織(システム)」と、それに敵対する「記号士」の組織「工場(ファクトリー)」は、暗号の作成と解読の技術を交互に争っている。「計算士」である私は、暗号処理の中でも最高度の「シャフリング」(人間の潜在意識を利用した数値変換術)を使いこなせる存在である。ある日、私は老博士の秘密の研究所に呼び出される。太った娘(博士の孫娘)の案内で「やみくろ」のいる地下を抜けて研究所に着き、博士から「シャフリング」システムを用いた仕事の依頼を受けた。アパートに戻り、帰り際に渡された贈り物を開けると、一角獣の頭骨が入っていた。私は頭骨のことを調べに行った図書館で、リファレンス係の女の子と出会う。翌朝、太った娘から電話があり、博士が「やみくろ」に襲われたらしいと聞く。私は謎の二人組に襲われて傷を負い、部屋を徹底的に破壊される。その後、太った娘が部屋に現れ、私に「世界が終る」ことを告げる。

    感想 春樹さんらしい小説だったな。

  • 2022.01.06 読了

    39章で太った女が、電話で語ったセリフが天才で天然な感じが面白い。

    限定的なヴィジョンだからこそ描ける世界があって完全なヴィジョンと優劣をつけることは難しい。

    もっと読解力があれば理解できた気がする。
    もう少し村上作品を読まなければ…。

  • 良かったと思う。ただ、前半と違って物語のドライブが客観的要因から主体的要因に移っていくかつ、主人公自体も「この先どのようにして生きるのか?」というのがわからないまま進むので、勢い自体は若干後退していたけど、それでもハードボイルド・ワンダーランドと世界の終りとのつながりが密接になっていくし、物語の構造自体はいたってシンプルだから、問題なくスルスルと読んでは行けた。
    解釈サイトとか見てみたいけど、風の歌を聴けと違ってストーリーの難解性はないしメタファーの話だから、大学でしっかりとした本やら授業を見てみたいという感じ。

  • 一気読みを惜しんで、上巻と下巻の間で別の本を何冊か読みつつ、30年振りの再読を終えた。
    30年前の読後感を生々しく覚えているわけではまったくないが、歳をとったせいか、結構印象が違う。

    脳を操作する怖さを、映画の「マトリックス」(1999年)で感じていることも少しは影響してるのか。。

    「死」に対して漠然とした感覚しかなかった若い頃と違って、守るべきものがあって今は断じて長生きしたい中年期では、主人公の達観したスタンスに共感しにくくなっていることに気が付いた。

    33章で、レンタカー事務所の女の子が、ボブ・ディランの歌声を称して、「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」という場面は、妙に印象に残った。作者がすごく気に入っているフレーズなのだろうと思わせる書き方だっからかもしれないけど。

    死期が気になり出した頃に(更に30年後位に)三度目として読んでみたい気がする。人生で三度読んだ小説はまだないが、この小説なら全然ありだろう。

  • 新たな展開を迎え、博士を助け出そうと敵陣の中に挑んでいく主人公たち。スリリングな展開の「ハードボイルドワンダーランド」。平和な壁の中の街に囚われるも、相方の説得により脱出を模索する「世界の終り」。2つの物語が交互に語られるのですが、それぞれがどのように関係しているのかについて、真相に迫っていく下巻の内容となっています。主人公に起きた出来事が、とてつもなく大きなもので、個人ではどうしようもないもので、もう最後を数えるだけの状態になります。その中での主人公の心境が、達観といいますか諦念といいますか、独特のもので、しかし分からないでもない共感を覚えるものでした。この選択でよかったのだろうか、他に方法はなかったのだろうかなどと、色々と考えることの楽しい読後感が残りました。

  • 大好きです。ちょっと内容忘れかけ、もう一回読みたい。
    村上春樹特有のある種周りくどい言い回しは苦手なほうですが、この狐につままれるような世界観にはちょうどよく、神秘的で不思議な雰囲気を底上げしています。
    2つの話は最後リンクをみせはじめるものの、結果としては決別ということになるのでしょうか?難しくて今一つ理解しきれていない気がします。でも面白いのでもう一度読みたいです。

  • 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(村上春樹)を読んだ。何回目かはわからない。
    『だからもしあなたが静けさを求めてここに来たんだとしたら、あなたはきっとここが気に入ると思うわ』
    そう、問題なのは、私がその『世界の終り』に永遠に取り込まれることを望んでしまいそうなことさ。

  • 私自身の自我にふさわしい有益な人生を手に入れるために、私は自己を変革する訓練さえしたのだ。…しかしそれでも私は舵の曲がったボードみたいに必ず同じ場所に戻ってきてしまうのだ。それは私自身だ。私自身はどこにもいかない。私自身はそこにいて、いつも私が戻ってくるのを待っているのだ。
    人はそれを絶望と呼ばねばならないのだろうか?-277

    人間の行動の多くは自分がこの先もずっと生き続けると言う前提から発しているものなのであって、その前提を取り去ってしまうと、後にはほとんど何も残らないのだ。-282

    「ボブディランって少し聴くとすぐ分かるんです。声が特別なの。まるで小さな子が窓に立って雨降りをじっと見つめている様な声なんです。」
    「良い表現だ。簡潔にして的を得ている。」
    「よく分からないわ。ただそう感じるだけなんです。」
    「感じた事を言葉にするのはすごく難しいんだよ。みんないろんな事を感じるけれど、それを正確に言葉にできる人はあまりいない。」
    「小説を書くのが夢なんです。」
    「きっと良い小説が書けるよ。」-298

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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