村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1810
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001678

作品紹介・あらすじ

デビュー小説『風の歌を聴け』新人賞受賞の言葉、伝説のエルサレム賞スピーチ「壁と卵」(日本語全文)、人物論や小説論、心にしみる音楽や人生の話……多岐にわたる文章のすべてに著者書下ろしの序文を付したファン必読の69編! お蔵入りの超短編小説や結婚式のメッセージはじめ、未収録・未発表の文章が満載。素顔の村上春樹を語る安西水丸・和田誠の愉しい「解説対談」付。

感想・レビュー・書評

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  • 再読

    小説の方は残念ながら卒業したのだが、エッセイは相変わらず好きである

    なぜだろうか
    ちょいと分析してみることに

    ・独創的
    ・思考力が深い とことん考え抜く
    ・マイノリティを誇りに突き進む 周りなんて気にしない
    ・自分自身の世界が豊か 幸せオーラがある
    ・もちろんユーモアがある
    ・闇が見え隠れする精神が健全な肉体でしっかり相殺されている

    私自身もマニアックなことが好き、人と違うことに夢中になる、一人で深堀する…
    そして一人っ子である
    若い頃は共感できる人間がちっとも周りにおらず、なかなか辛いことも多かった
    そんな時結構救われたのである
    もはや今となっては辛いどころか誇らしくもあるのですが(笑)
    というわけで共感することが多いのです
    そして気取ってなくて居心地が良い
    気合いを入れず読める
    (春樹流にいうとパスタを箸で食べちゃう感じ?)

    そしてこの雑文集であるが今までのエッセイに比べると一つ一つがちょっと長い
    そのためいつもよりちょっと気合がいる(笑)
    名前の如くテーマは様々で、あいさつ、スピーチから大好きな音楽について、「アンダーグランド」にまつわる話、翻訳について、人物について、質問コーナーなどなど
    雑多ながら方向性が多様で面白い

    ちょこちょこと隙間時間に楽しめた


  • 94冊目『村上春樹 雑文集』(村上春樹 著、2015年11月、新潮社)
    小説家デビュー時から近年まで、村上春樹が書いたエッセイや超短編小説、文学賞受賞時の挨拶など、単行本未収録の雑多な文章を一つ所に纏めて収録したもの。
    ものすごくマニアックな内容で、村上春樹のコアなファンに向けられたものではあるのだが、一つ一つの雑文は短いながらも読み応えがあり退屈しない。
    巻末には安西水丸×和田誠の対談が収録。

    〈もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます〉

  • 世の中に「ラム入りコーヒー」というものが存在する、ということを知れただけで、本書を読む価値があった。「ラム酒とコーヒーを混ぜるとは、なんて斬新!これは美味しいにきまっとる!」と思い、早速、小瓶のラム酒を買って作ってみた。なかなかおいしいのだが、我流なので改善の余地は大いにある。ラム入りコーヒーのあるカフェに行って、お店の味を確かめたい今日この頃である。(本の感想ではなく、コーヒーの感想になってしまった…)

  • 村上春樹のエッセイというかこの本に収められているようなちょっとした文章ってなんでこんなにも読んでいて「しっくり」くるんだろう。
    テーマの重さ軽さに関わらず、本文中の表現を借りるならレッドヘリングを書き連ねていく。読んでいる方はどうしてもかわされた気分になるかもしれない。でも、よくよく読んでみるとそういうレッドヘリングにこそ村上春樹の思索の本質的な部分が現れていることが往々にしてある。
    自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)とかその典型な気がする。他にもジャックロンドンの入れ歯、自分の物語と自分の文体などなど。

    ねじまき鳥、世界の終わり、ノルウェイの森他多数の長編小説で小説の形として読者に提示してきたテーマを再確認できる。答え合わせというと小説の持つ解釈の多面性を否定することになるかもしれないがともかく、一貫した思想が長編にも短編にもエッセイにも現れているのを見るとファンとしてはどうしても嬉しくなってしまう。

    本書を手に取ったきっかけは中学校の国語の授業で先生が壁と卵のスピーチを教材として使っていたのを思い出したからだけど今になって読み返してもその意味するところなんて十全にわかるわけがない。これを中学二年生に理解しろと言うのもなかなか酷な話だ。

  • 村上春樹さんのエッセイって、引っかかりなくサラサラ読める…が良い方向に作用してて好んで読んでしまいます。
    こちらはエッセイだけでなく、祝電や受賞の挨拶、インタビューなども収められていて楽しかった。
    「ビリー・ホリデイの話」は物悲しい煌めきが素敵でした。エルサレム賞のスピーチはこれは伝説になるでしょうねと思ったし、スティーヴン・キング評が嬉しいです。「彼の考える恐怖の質は『絶望』」。
    あとやっぱり「アンダーグラウンド」関連もの凄い。オウム真理教を始め、カルトにはまる人たちの心理を的確に掴んでると思うのは村上春樹さんだけな気がしています。最近の旧統一教会関連のニュースでもカルトにはまる心理とは…みたいなの目にするけれど、村上さんのこれらほどはどれもしっくりこない。「彼らの信奉する「教義(=物語)」にわれわれの「物語」が勝てない」みたいなのは、作家さんみたいなクリエイターはもちろん、宗教にはまる人たちを連れ戻せないこちら側の事でもありました。カルトは失くならないからなぁ、宗教以外でも。「アンダーグラウンド」を読んだときも似たようなこと思ってる気がします。
    小説は未だに「世界の終わり」が唯一好きなのだけれど、エッセイと翻訳は良いと思っています。声はプラチナ、字はカリントウ…確かに美声ですよね。
    ラストの対談、もう安西水丸さんも和田誠さんも居ないんだ…と思ってかなり悲しくなりました。和気あいあいと話されてるのが余計に。

  • 村上春樹の文章はやっぱりいいです。
    小説において、多くを説明して押しつけないところ。
    最終的な判断を下すのは常に読者であって、作者ではない、というところ。
    この本は、エッセイ、本の解説、あいさつなどを一冊にまとめてあるのですが、小説を読んでいるときよりも村上春樹に近づけたような気がして嬉しかったです。

  • 村上作品をそうたくさん読んでいるわけではないけれど、この本の文章も含め、村上さんの書かれる文章を読むと、なぜかすっと背筋を伸ばしたくなる、
    ソファにだらしなく座っていては、村上作品を読めない気がする。
    その文章から感じられるリズムは、決して派手ではないけれど、タメの効いたハイハットとうねりを感じるスネア。
    最近の作品はまったく読めていないけど、このリズムは健在なのかな。

  • 結局のところ、小説を読むという行為は、その作家を信頼できるのかという点に懸かっている。わたしはこういう文章を書く人間を無条件に信頼する。だから、村上春樹の小説を大切に読む。そういうことだ。

  • もー、いちいち良い人が滲み出すぎてるんだよなぁ、村上さん!
    皮肉とユーモアと世辞の割合が絶妙にうまくて、読んでいても暖かい気持ちになる。
    村上春樹が語る安西水丸にも、安西水丸が語る村上春樹にも、友情を感じるとは和田誠さん談。

    良い小説家とはどうあるべきか、という考え方についても、またお洒落な表現で、そして納得できる。

    この世界の構造のようなものを、村上春樹というフィルターを通して、現代の最新版を見られるということに感謝。

    安西水丸さんも和田誠さんも他界してしまったので。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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