菜穂子・楡の家 (新潮文庫)

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著者 : 堀辰雄
  • 新潮社 (1948年12月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101004051

菜穂子・楡の家 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「風立ちぬ」より、私はこっちの方が好き。

    菜穂子の母の日記として語られる「楡の家」。
    一人の男に対して、人妻という側面と女という側面を見せる母に、言い知れぬ嫌悪を抱く菜穂子。

    彼女のそうした反抗が、続く「菜穂子」にも影を落とすことになる。
    結局、母が危惧していた通り愛を感じられない夫、その夫しか頼るべき術のない姑。
    菜穂子がサナトリウムに移ることで、落ち着くことが出来たはずの三人に、各々の変化が訪れる様子が小説的で面白い。

    「風立ちぬ」で終わらせず、是非この作品に続けて欲しい。

  • 文体がとにかく美しい。丁寧な心理描写と情景描写。全く無駄の無い短編小説です。行間を読み取らせて読者の想像力に多くを委ねるのでは無く、作者の意図が読解できると言うか、地に足の着いた、決してひとり歩きして行かない作品という印象を受けました。

    生きる意味を「死」に近い場所から模索する人達を、様々な角度から浮き彫りにしていく過程がとてもリアルです。

  • 「楡の家」

    前日譚。とはいえ、母の手記による繊細な話。
    母、作家おとひこ、少女の菜穂子、および少年の明。
    三村夫人≒片山廣子、
    三村菜穂子≒片山總子、
    森おとひこ≒芥川龍之介、
    明≒堀辰雄
    というモデル小説とのことだが、「菜穂子」に向けて、
    母の眼による、少女の変態が、いわばプレリュード。

    「菜穂子」

    本編。
    明視点→明視点・菜穂子視点・黒川圭介視点→菜穂子視点、
    と視点人物の置き方がグラデーションを描く。
    菜穂子⇔夫 ……性格の悲劇。
    菜穂子⇔明 ……孤独な魂の交響。
    また、
    明⇔およう及び初枝 ……母といってもよい郷愁。
    明⇔早苗 ……上記を導くための、失われるための希求。
    ここまで重層的な性格描写の響きあい、あるいはすれ違いは、なかなか描けるものではない。
    そして、片側だけ立ち枯れた二股の木や、雪、芹摘み、などの美しい描写もたっぷり。
    単純な物語ではない。長編だ。

    「ふるさとびと」

    おようを中心としたスピンオフ。

  • ジブリの映画を見た後に読み直すシリーズ2冊目。
    風立ちぬでは絶対になかった、「サナトリウムを勝手に抜け出してくる」というモチーフの出所だと思う一冊。購入時に(つまり30年ほど前に)読んだ際の記憶が全くなくなってて、新鮮な気持ちで読みました。冒頭、明の視点から物語が始まる割には、その後の影の薄さが可哀想というか、明から見ても、菜穗子は不幸せそうなのだが、じゃあ、どうだったら幸せなのかという方向には行かないというより、菜穗子が菜穗子の母親のようなキャラであるなら、決して菜穗子が結婚したような相手とは結婚しなかったろうにということがしつこく描かれている割には、じゃあ、例えば明は結婚相手たり得るのかなんてことは考えないしね。テーマのために話を作るようでありながら、やっぱり、そこは作者がイメージした情景があって、それを写生するという形で書かれているんだと思うので、ちょっと違う。そういうことだと思う。そこは、小説っていうのものは、どう書かれるべきなのか、という点について考察している作者の存在というものがあって、その試行過程ということなんだろうな。まとまらなくて済みません。

  • 映画「風立ちぬ」を観たので。映画ヒロインの菜穂子はこの小説から来ている。登場している人物がまったく温めあうことがない。互いに強く関係性を意識する場面はあったとしても。その孤独は都会的なものだと思うのと同時に、今読んでも通ずる淋しさがある。

  • 「楡の家」
    娘の結婚をなんとか押しとどめようとする母親
    その心理の核にあるのは
    芥川龍之介をモデルにしたと思しき、過去の男の存在である
    作者の堀辰雄は、ここに収められた一連の作品を通じて
    いつまでも忘れられない軽井沢の青春に
    なんとかケリをつけようとしたのかもしれない

    「菜穂子」
    何かから逃れるように焦って結婚した菜穂子
    一方、幼馴染の明は
    未だ正体もわからない自分なりの理想を追い求め、独り生きている
    彼らは共に病に侵され
    死に向きあいながら、それぞれに答えを探し続ける
    でも結局は
    死んだ小説家の面影を、今もなお追っているだけのようにも思える

    「ふるさとびと」
    田舎の古い旅館には、毎年夏休みになると
    学生たちが、避暑と勉強を兼ねてやってくる
    明と菜穂子がはじめて出会ったのもそこだった
    なつかしくも、やがて滅びゆくその風景を
    守っているようであり、束縛されてもいるような
    そんな人々を書いたもの

  • 楡の家
    母に反発して、結婚を決めてしまった菜穂子。お互いにわかっていても反発してしまった母と娘。和解はできないまま母は急逝。

  • 坂口安吾や太宰治に比べると、堀辰雄の文章は随分格調高く上品である。三部作といっていい物語だが、作者自身が病んでいたとはいえ登場人物の殆どが病気や身障者に病死する者ばかりというのは尋常ではない。主人公の菜穂子自身も喀血してサナトリウムに療養中という徹底ぶり。特に大きな事件も起こらず、異常な行動の人物も出てこない上に話の結末が尻切れの印象が強かった。

  • 『風立ちぬ』を見て手に取った菜穂子は『風立ちぬ』のイメージで読んだら肩透かされたのはさておき。

    じっとりとした暗い物語ではあった。母と娘の、粘着さとでもいうのか、なんというか生臭いような感じがちょっとニガテ。

    菜穂子は「病の私」に酔いしれている感じがして、好きになれない。悪女ぶっては見るものの、悪女になりきれない気の小ささは他人事には思えない。

  • 映画「風立ちぬ」関連本として読みました(笑)

    菜穂子さんは、気が強い感じの女の人。でも、なんか押しはめちゃくちゃ弱そうという……。
    映画の「風立ちぬ」のイメージよりも、流されちゃう感じです。

    印象が「風立ちぬ」ほど強くないです。
    それは、一人称でないからというのもあるのかも。

    あんまり、物語としては大きなうねりとかはなくて、淡々と人の心の中でなにかが動いているようなお話でした。

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