大和路・信濃路 (新潮文庫)

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著者 : 堀辰雄
  • 新潮社 (1955年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101004068

大和路・信濃路 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • (01)
    芥川龍之介,斎藤茂吉,藤沢清造,室生犀星,リルケ,プルウスト,クロオデル,チェホフ,ニィチェあたりを端緒に,日本の古典では,伊勢物語,更科日記,そして万葉集に及び,ソフォクレェスにも触れながら,挽歌をキーにした文学論を展開する.同人ともいえる立原道造へのレクイエムも綴られるし,やや先を行く折口信夫へのリスペクトも露わにしている.
    しかし,単に文学論として本書に収められた雑文を読むのは,惜しい.軽井沢と奈良盆地に停滞する著者の行動やその記録(*02)には,可笑しみがある.
    原稿が手に付かず,大和の古寺や廃墟をさまよう姿は,現代的である.雪原での徘徊や,教会のミサへのゲリラ的な侵入など,当時の文人たちとそれを取り巻く社会が,彼ら彼女らの出会いやエピソードを容易にしたということも考えられるだろう.

    (02)
    風景描写の美的感覚として,著者が人麻呂など万葉集に見出した風景とそこに無き(亡き)人物という取り合わせという方法が試されている.それは日本の風土に生まれ育ったわたしたちにも,抗いがたい美しさを提供してくれてはいる.特に「落ち」と呼ばれる結句による余韻などは,ここに収められた随筆でも遺憾なく発揮されている.
    芥川龍之介による龍安寺石庭の評の引用,プルーストのフローラなどの花や草や石に関する問答が,その風景の先に届こうという著者の手探りにも感じられなくもない.

  • 堀辰雄は自然主義(私小説)作家ではない、とされている
    しかしその作品が
    基本的に作者自身の体験をベースとして書かれていることは
    どうやら間違いのないことで
    なんだかよくわからない
    グレーである

    堀辰雄は、自身の体験をベースに小説を書く人だったのだけど
    そういった営みの中では
    たとえば、愛する人の不幸が予想されるような状況において
    そのことに、「ネタ」としての期待を寄せてしまうこともあった
    そんな絶望を敢えて書き記したのが「風立ちぬ」である
    それは
    「地獄変」や「歯車」に見られる芥川龍之介の苦しみと通じるものだった

    しかし芥川の死に影響を受けて以降
    ようするに、デビュー直後から
    堀の書くものは常に、生と死のはざまにあるグレーゾーンをこそ
    日本人にとっての理想の境地とみなしてきた
    それもまた確かなことであろう
    そこに物語は存在せず
    ただ、日本の美しい自然と、それにまつわる出来事が
    漠然と浮遊するばかりである
    戦時中に書かれた、この「大和路・信濃路」は
    谷崎の「細雪」や、川端の「雪国」に並んで
    近代日本文学の、ひとつの結論的なものと見なすべきではなかろうか

  • アメリカ転勤に際して、奈良が大好きな私に大切な友人がプレゼントしてくれた一冊。
    「古代を題材に小説を書く」ために奈良をあるく著者の立ち位置が、同じ随筆でありながら和辻哲郎の「古寺巡礼」とは異なった視点で書かれていて、読んでいて興味深い。
    実際に訪れたことのある古寺や路を著者と一緒に歩く気がしてふと読み返したくなる一冊。

  • ●「狐の手袋」
    ・「(芥川龍之介の書簡について)」……稲妻型の奇跡。
    ・「文芸林泉」読後……室生犀星について。言葉の一歩手前。
    ・「クロオデルの「能」」……ワキ・シテ論。★

    ●「雉子日記」
    ・「雉子日記」
    ・「続雉子日記」
    ・「雉子日記ノオト」

    ・「フローラとフォーナ」……植物と動物。プルーストは植物好き。
    ・「木の十字架」……室生・芥川→堀辰雄→立原道造。

    ・「伊勢物語など」……レクイエム、文学の本来。
    ・「姨捨記」……「かげろうの日記」→「ほととぎす」→(古今和歌集も受けて)→「姨捨」

    「大和路」
    ・「十月」……妻あての手紙、1941/10/10~10/27、奈良で小説の構想
    ・「古墳」……エル・グレコ。
    ・「浄瑠璃寺の春」……馬酔木の花。
    ・「死者の書」……唯一の古代小説。

    「信濃路」
    ・「辛夷の花」……妻「あの花を見なかったの」
    ・「橇の上にて」……雪山への思慕。

    ・「雪の上の足跡」……ペテロの裏切りと、女たちの涙。夕日。

  • 大和路を歩く前に読んでいただきたい本。これが書かれて半世紀以上になるが、美しい言葉で切り取られた東大寺、秋篠寺など、古の都・寧楽の景色は1300年の時を経ようとも何ら変わってはいない。

  • 奈良のマイナーな地名がいっぱいでてくる。田舎の風景はあまり変わってないね。

  • セント1300年記念で映画化されるんですよね。
    仁さんつながりで、青空文庫から。

  • 学生時代に何回も読んだ本。今でも大好き。

  • 080818(m 080830)

  • 「くれがた奈良に着いた。僕のためにとっておいてくれたのは、かなり
    奥まった部屋で、なかなか落ちつけそうな部屋で好い。すこうし仕事を
    するのには僕には大きすぎるかなと、もうここで仕事に没頭している最中
    のような気もちになって部屋の中を歩きまわってみたが、なかなか歩きで
    がある。これもこれでよかろうという事にして、こんどは窓に近づき、
    それをあけてみようとして窓掛けに手をかけたが、つい面倒になって、
    まあそれくらいはあすの朝の楽しみにしておいてやれとおもって止めた。
    その代り、食堂にはじめて出るまえに、奮発して髭を剃ることにした。」
    (「十月」)

    この洗練された一日の描写。
    情景と、堀自身の動きと、心の動きから堀自身の人となりまで伺える
    ような深み。
    こういう日記(これは旅行記だけど)が書きたいなあ。
    と思いましたよほんとうに。

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