刺青・秘密 (新潮文庫)

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著者 : 谷崎潤一郎
  • 新潮社 (1969年8月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005034

刺青・秘密 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • やっぱり、美しい。そして、すごい。
    私と谷崎さんの出会いは7年ほど前の痴人の愛。
    その時に受けた文章の美しさに対する衝撃。
    やはりすごい。

    秘密が一番気に入った。
    谷崎さんは、椿姫などの外国文学のように、商売女を扱わない。誰もに潜む、しかし見栄があり認められない変態性を描き出す。つまり、普通の人の狂気だ。高圧的な上司に文句を言いながら、自分が上司になったら決断をしたり、部下の仕事の安定の責任を持つ勇気がないことを認められないといった心理のように。それをテーマに扱うことはすごいとは思うが、内容にそれほどの深さは感じない。ただただ、日本語の美しさ。それに尽きる。wikiの「耽美主義」の説明に同意する。

    怖いのは「少年」。サディズム。私は、サディズムなとこは少ないと思っていたが、この話を読んでいると私にもあるかもしれないと思えてくる。

    刺青の足をほめる表現が好き。

    家族へのゆがんだ感情についての「異端者の悲しみ」は、心に刺さった。私も一緒の境遇にいるから。160ページ周辺の自らがまず大人になると、父親の態度も変わり、自分自身の良心のとがめもなくなるのではないかなど。私も父親のことをなんとも思わないことを子供のころに思い、人間として失格なのではないかと悩んだことがあるので、よく気持ちがわかる。反抗して家を出ても、やっぱり戻るところがそこしかないといったところなど。自分の教養に自信を持ち、世間に非があると思ってしまうのも、多くの人が理解できる感情ではないだろうか。私が谷崎の特徴だと思っている、認めにくい誰もが持っている普通の人の感情だと思う。

    母を恋うる記は幻想的で、最後まで設定がよくわからない。少年が母を探して、海沿いの松原を歩いていく。途中から月が出てきたり、その情景の美しさがやはり谷崎。歩んでいくと、三味線を奏でる女が一人。それは泣いている母だった。母を探して長々と歩いてきた悲しみがあふれ、共に泣きだす。目が覚めると、自分は大人で、母は去年亡くなり、改めて涙を流す。これが綺麗な情景でなく何なのか?やはり谷崎は美しい。

  • 谷崎潤一郎の初期短編である"刺青(1910)"、"少年(1911)"、"幇間(1911)"、"秘密(1911)"、"異端者の悲しみ(1917)"、"二人の稚児(1918)"、"母を恋うる記(1919)"の7編を収録。フェティシズム、マゾヒズムの妖しい世界に溺れることの出来る作品集です。やっぱり、この谷崎ワールドは素敵すぎます。くわえて、文章に使用されている日本語が耽美です。ここまで突き詰めれば、変態趣味も芸術に昇華されるんです。短編でとても読みやすいので、谷崎文学に初めて触れようとするときにオススメです。

  • 処女作『刺青』からしてもう、谷崎潤一郎は谷崎潤一郎なのだなと思う。
    世界観が確立されている。
    『少年』『秘密』しかり。
    人の痛みを悦び、秘密に焦がれる性癖。

    だけどそれは異端なのだろうか?
    自身を異端者と書いているけれど、読む限りそれは異端者であるというより、異端の者になりたい、であるはずの自分だ。
    しかし、誰の心にもこのような世界があることを、彼は疑ったことはなかっただろうか?
    自分は皆と同じような真っ当な人間ではない、自分はほかの人間とは違う、だけど何者にもなりきれていない今は家族に無頼を気取り、友達には道化てみせる。
    普通じゃないですか?

    やはり、『刺青』『少年』『秘密』『幇間』あたりが、谷崎潤一郎でなければ書けない文章だろう。

    読みながら、なんとなく永井荷風を思い出したりもしたのだけど、谷崎潤一郎は永井荷風の大絶賛を浴びて文壇に送り出されたのですって。さもありなん。
    だけど永井荷風は一歩離れて対象物を見ているようなところがあるけれど、谷崎潤一郎は同化していきそうな気配がある。
    そこに違いがあると思った。

    で、実は『母を恋うる記』が結構気に入っていたりする。
    やっぱり異端者ではないよ思うよ。偽悪者ぶりっ子。

  • 『少年』の文章から漂うエロさは凄い

  • この本を手に取るのは、勇気がいりました。
    けど、読んでみてよかったです。
    「秘密」はとくにミステリアスでおもしろかった。

  • 「刺青」「少年」「幇間」「秘密」の前半4編は理解に苦しんだ。肉体上の痛みや恐怖が耽美への世界へ変わっていくのを自分でも認めようとはするのだが、それには変態的で官能的すぎる。はっきり言ってしまえばSMの世界なのである。解説ではそれを、能に見る「殺しの場」と同様、芸術的感激を与えるものだと言っている。

    自伝的作品といわれる「異端者の悲しみ」は一転、作者自身の魅力を知るのに重要である。作品を読む限りでは気違いのように思われる作者は実は、気が遠くなるほど真面目すぎた。少年から青年に成長する上での不徳を許されぬ罪としていつまでも背負い、自責を続け、逃げる場所もなくしてしまう。このような感情に覚えがある人もいるのではないだろうか。とにかく吐き気がするほどリアル。

    「二人の稚児」「母を恋うる記」の2編は非常に文章の綺麗さ・精密さが目立つ作品。

    代表作となっている「刺青」だけでなく、すべての作品に目を通して欲しい。

  • 刺青の章だけ読了。何とも形容し難い、本当の文章としてのエロティシズム、耽美主義であると思う。繊細な描写と語彙の選択のひとつひとつが艶めかしく、文章そのものが妖艶さを放っている。
    彫刻家(芸術家)の心描写とその生き様、生きる意味や意義を描くところはとても素晴らしい。

  • ・異端者の悲しみ

    主人公の中に何年か前の自分を見た。
    主人公のモデルは彼本人らしい。
    最近、もの書きというのはこういう一面を皆必ずと言ってもいいほど持っているものなのかもしれない‥と思う。

  • 谷崎潤一郎は「痴人の愛」と「春琴抄」しか読んだことがなかったのだが、これを読んで一つの発見をしたかも。
    それは谷崎小説に登場する男性が揃いも揃って変態的ということ。
    この作品で谷崎自身がマゾということも知ったのであながち間違いではないはず。
    「痴人の愛」も「春琴抄」もM男が大活躍するし。
    谷崎の凄さはその変態性を文章の美しさで低俗に感じさせないところにも一つあるのではないか。
    品のある艶めかしさが印象的というか。
    これが西洋だとエロばかりで下品になりがちだったりするけど。
    個人的には「異端者の悲しみ」が印象に残った。
    谷崎も中二病的な自伝書いたんだな、と微笑ましくなった。
    今ではあんなの通用しないだろうけど、やっぱり作家の自意識が生んだ作品は気になってしまう。
    結構やらかしてると思った。

  • 怪しくも美しい世界。
    これが明治とか大正の、約100年くらい前に書かれた小説かと思うと、驚いてしまう。鮮やかな色づかい、音、質感の描写は映像として感じられるほど。
    「母を恋うる記」は、あの、夢独特の、空間の不安定さ、時間軸の永遠と一瞬が交錯する感じ、そして自分の深いところに潜って何かを切望する心持ちが迫ってくる。

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