蓼喰う虫 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005072

感想・レビュー・書評

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  • 離婚を決めた夫婦が子や義父にどう伝えるかひたすら悩みつつ、浄瑠璃見てダラダラする話。この時代の離婚は大変そうだなあと思いつつ、浄瑠璃部分になかなか興味がわかずちょっと退屈でした。

  • 時代を経てもなんだか今と通じるようなちょっと粋な姿が面白かった。
    子供のことを案じながらも、別れる夫婦だけどでも、お互いのことは思いやれていて壊滅的なわけでもない感じ。

  • 初読時はまだ高校生だったので、仮面夫婦の心情を丁寧につづったこの物語をとても退屈に感じていたのを覚えている。
    二十代後半になって、所帯こそ持っていないが、男女間の感情の機微みたいなものも、だんだんわかるようになってきたので、再読して少し印象が変わった。
    斯波夫婦はとても都会的な感性の持ち主で、全方位に悪い印象を持たれないように立ち回ろうとしている。それは自分達に対してもそうで、とっくに冷え切った関係にあるのに、はっきりした別離の悲しみを感じたくないあまりにズルズルと先延ばしにして、結局作中でも問題はまったく動いていないと言える。
    要は作中で女性崇拝者と表現されているが、人形のようなお久や、房事のみの関係のルイズ、そして夫婦の語らいなどなくなった美佐子、それぞれに情念を抱いており、現代の感覚的には、むしろ女性を侮辱しているようにも感じられる。そのときどきに着る服を選ぶように隣に置く女を考えているように自分は感じた。別段フェミニストというわけでもないのだが。なぜだろう。
    高校生のころは、退屈な上に尻切れトンボで、四割くらいは文楽の話で、なにがよいのだろうと思ったものだが、これも谷崎の持ち味と感じられるほどには大人になれたらしい。

  • 面白くないわけじゃないんだけど、あまりにも静。
    序盤引き込まれるんだけどな、結局これからのところを見せてもらえないからか、文学的にはこれでいいんだろうけどストーリー的にはどうしてもドロドロ展開とかそういうの望んじゃった感あるから、え、これで終わり?感。

    あとは単純に価値観の問題。わかるよ、夫婦の微妙な感覚、子供への気遣い。
    でも大事なことだからこそ高夏に任してほっとしてなんかいないで、両親が子供にきちんと正面から向き合ってほしいなって思っちゃう親心。

    妻が〜みたいな感じで進んどきながら夫が風俗通ってたこと詳しく話すのはわりかし最後の方になってからで、何となく男の狡さ?みたいなの感じてもうた。
    本作全体の量に対して、謎の3人メンツで浄瑠璃見るとこちょっと長すぎかな?笑

  • 谷崎本人が、自身の作品で卍と蓼食う虫は好きと言っていたので手を出しました。
    知識がまったくないので、人形浄瑠璃の内容になると読むのにかなり時間がかかりました…。
    夫婦間や子のこと、義父との関係の場面は面白く読めました。

    私にはちょっと難しかったかな。また歳を重ねてから読み直したいです。

  • 初の谷崎潤一郎作品。
    1886ー1965、東京日本橋生まれで、関東大震災の後に関西に移り住んでいる。
    綺麗で読みやすい日本語で、深層心理をシンプルかつ的確に指摘できるのは見事だと思った。きっと、誰しもが自分に当てはまるのではないかという共感を、畏れつつも感じるのではないだろうか。

  • 文庫本の裏表紙に著者の私生活を反映した問題作、と書いてあるのが気になって読んでみた。

    物語の冒頭、旦那が出かける前に身支度を妻が手伝ってやるシーン。
    それだけのことなのに、女性の姿態の描写が妙に生々しく、さすがの描写でいきなり引き込まれた。

    世間体を気にして離婚に踏み切れない主人公。
    子供に自分の口から言うのさえ憚れて、従兄の口から子供に伝えてくれないかと思っている。
    妻の父親にもなかなか切り出せない。
    グズグズぶりがなんとも情けない。

    こんなんだから嫁が旦那に魅力を感じず、外で彼氏を作るんだよ!と思ってしまった。

    前編を通して昭和20年代の日本の雰囲気を満喫。
    TVもネットもない時代、娯楽であった文楽、人形浄瑠璃を楽しむシーン満載。
    決してキレイとはいえない芝居小屋でのトイレ事情や裸電球の照明など、芝居好きの私には興味深かった。

    妻の父親は50代後半だというのに、やたら老人という描写。人生100年時代となった今でいうと70代位でしょうか。

  • 中盤まではストーリーの主筋に沿って家族三人の心情がエリオット張りに深く掘り下げられているけど、この小説の面白かったところは淡路浄瑠璃についてのシーンと最後の父娘が出かけた後から結末までのシーン。プロット的には結局何なの?的作品だけど作品にちりばめられているいくつかのシーンや谷崎の世界観がとても感じよく仕上がっている。ほんとに谷崎はいい。

  • 妻譲渡事件がモチーフなのでしょうが、後半は物語を彩る小物たちを使って陰翳礼讃を小説に落とし込む実験作だったのかとも思ってしまった。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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