細雪(中) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005133

感想・レビュー・書評

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  • 四女の妙子の出番が多い巻でした。

    妙子は奥畑という「船場の坊」と駆け落ちしようとしたことがありますが、今度は阪神間に記録的な水害が起こり、川の氾濫で今にも溺れ死にそうなところに駆けつけてくれた、板倉という丁稚上がりの写真家と恋仲になります。
    そして妙子は今までやっていた人形作りをやめて、洋裁の道に進み、洋行してあちらで手に職をつけたいと望むようになります。

    幸子らは反対して、欧州の動乱により洋行は中止になります。
    そして、板倉は耳の病気が元で細菌が体に回り、片脚を切断され、しばらくして亡くなってしまいます。

    神戸の鮨屋の「与兵」に幸子、夫の貞之助、雪子、妙子で食事にいく場面の新鮮なお鮨のネタの描写がなんともいえず美味しそうでした。

    コロナが収束したら、久しぶりに回る方のお鮨でもいいから食べに行きたいと思いました。
    この小説は、こういった上流中流階級の家族のやることの描写を楽しむ小説でもあるのだなと思いました。

    今まで読んだ小説の中でも文章の美しさが大変際立っていると思いました。

    下巻に続く。

  • たらたら名文、ここに極まれり。
    やっぱり比喩が巧い。好き。
    日本語の美しさと表現力の高さを、改めて思い知る。誇らしい。
    会話文もぜんぶ好き。
    谷崎が、幸子たち姉妹や関西に最大の敬意と好意をもっているのが伝わる。

    四姉妹には同じお墓に入ってほしいけど、そうはいかないのがやたら切ない。涙さえ出てくる。
    お嫁にいくってそーいうことなんだって、わかってはいるんだけど…(なんの話だ)

  • この本は本当に、登場人物たちが発する上品で小気味良い関西弁の台詞が楽しい
    当時の上流階級が贔屓にしていただろう実在の名店が色々登場するのも楽しい
    谷崎が描写する食べ物の、なんて美しくて美味しそうなことか、、

  •  文章が美しいので、どこからでも読むことができる。最初から最後まで一通り読んで、「ああ面白かった」で終わるような作品ではありません。小説ではありますが、詩に近いと思います。

     日本的な美しさとは何か、この一冊を深く読めば理解できるのではないでしょうか。「年増美」という言葉を見るにつけ、年をとるのも悪くないなと思ったりします。
     新潮文庫の上・中・下まで読んで、終わると寂しくなって、また上から、あるいは気に入ったところから読みはじめる。それを何度繰り返したことか。文学史に残る作品とはこういうものなのかと、しみじみ思う今日このごろ。

  • 1月6日。再読か再々読。板倉死亡。妙子はどうなるのだったか。

  • 板倉が……。ショック。
    ますます面白い。

  • 上・中・下、三巻本の中巻。
    戦争の影の忍び寄る中、四季折々の暮らしを営む姉妹。
    大水害に遭うといった苦難もありながら、彼女たちの日々は続いてゆく。

  • 雪子と対照的に末娘の妙子は自由奔放な性格で、男との恋愛事件が絶えず、それを処理するためにも幸子夫婦は飛びまわらざるをえない。そんな中で一家は大水害にみまわれ、姉の鶴子一家は東京に転任になる。時代はシナでの戦争が日ましに拡大していき、生活はしだいに窮屈になっていくが、そうした世間の喧噪をよそに、姉妹たちは花見、螢狩り、月見などの伝統的行事を楽しんでいる。
    (1947年)

  • 谷崎潤一郎の代表作『細雪』の中巻。
    上巻に引き続き執筆されましたが、私家版として刊行された上巻と違い、完成後長らく日の目は見られない状態でした。
    中巻は戦後ようやく中央公論社から刊行されます。

    内容は上巻の続きで、大阪の旧家の四姉妹の日々が綴られるものとなっています。
    自分の人生のため、洋行の希望や、手に職をつけるための活動を始める妙子と、それを快く思わない恋人の奥畑。
    そんな折に発生する大水害でヒーローのように現れて妙子を救った板倉に苛立ちが募る奥畑と妙子の恋愛事件や、お隣に住んでいた仲の良かったドイツ人一家の引っ越し、恩師の逝去、そして板倉の病気と、次から次へと発生するトラブルだらけの日々がドタバタと書かれます。

    上巻同様、娯楽小説として面白い小説でした。
    日本文学史上にこの作品ありと言われる作品ですが堅苦しさはなく、上中下巻の長編ですが非常に読みやすいので長さを感じさせずに読めます。
    戦時中に書き始められるも国策により掲載禁止になり、戦後ようやくGHQの検閲の元で刊行を行い、昭和天皇にも献本され、今日、世界中で翻訳され読まれるという大変な作品ではあるのですが、中巻に於いては特に崇高なテーマ性なども感じられず、個人的にはただ面白い作品と思いました。
    特に中巻は、要所要所にスペクタクルを感じるシーンが挟まり、エンタメ性を感じました。
    下巻は衝撃展開が待っているので、中巻は4人の日々を紹介しているシーンなのかもと思います。

    ただ、中巻ラストは少し驚きました。
    実年齢以下に見られることが多く、奔放なようでしっかり者の妙子は、個人的に4姉妹の中で一番お気に入りなのですが、一方で奥畑があまり好きくないです。
    家柄よりも出会った相手やときめきを優先して幸せになってほしいなと思っていたのですが、そんな終わり方になるなんて。
    下巻もあまり良い展開にならないことを知っているので、この先は少し読むのが怖い気がします。

  • 上巻では旧家の姉妹たちのはんなりとした暮らしぶりが淡々と語られるに終始していたが、中巻になると雪子の縁談の難航や、幸子の身に悲しい出来事が起きたり、妙子が水害に見舞われるなどが語られ、ゆるゆる続くかと思われた物語に起伏が生じる。
    これらが蒔岡家の行末の暗さを象徴するように感じられ、上巻から続く季節や姉妹の美しい描写に切なさが帯びてくる。

著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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