- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101005157
感想・レビュー・書評
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濃い二篇。愛読書(但し、それを公言する勇気は持ちあわせていない)。
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谷崎への妙な好奇心とその裏切らなさでまた好きになりました。おもしろくて一気読みしてしまうほどでした。
どちらの作品も執拗なまでの足へのフェチシズムに注目してしまうけど、おもしろさはそこだけでなくて、生っぽいところを省いても、お話しとして普通におもしろいところが惹きつけられます。
瘋癲老人日記はエロジジイ加減に途中からほとほと嫌気が指していたけど、そんなとんでも老人だからこそ、身体が蝕まれていく表現はどうしても辛かった。。
あと、詳細に描かれる医療分野の用語たちは、実体験でここまで詳しく描かれているのか、それとも谷崎の知識で書いてあるのかが気になりました。
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どちらも老境にありながらも性に固執する(老境にあるからこそ?)哀しい男のサガの話。鍵はよくできてるなーと感心。そして陣痛に耐えながら死にゆく瘋癲老人の話を読み終わるタイミングの妙。。
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夫と妻が書く、それぞれの日記を通して話は進んでいくのだけど……お互いに日記の存在は気付いているわけで「相手の日記を読むわけがない」と言いながら、「自分の日記は読まれている」とも思う。
こうなると、日記の何が虚構で、何が真実なのか。
書き手として、読み手として、騙し合いと探り合いをしている夫婦っていうのが面白い。
電子上であっても、この「鍵」の概念は変わらず、秘められているという、そのことに「秘めなければならない」ものが書かれているんだと詮索してしまうのが、人の常。
そして「秘めなければならない」ものなら書かなければいいのに、書いてしまうのも、人の常。
さて、この小説のさらに面白いところは、二人の娘と娘のボーイフレンドまでが絡んできて、この日記が読まれている可能性があるということ。
そういう後ろめたさを、さらに情欲のスイッチにさせてしまうところが、谷崎潤一郎らしいなぁと。
日記が一つの文学として非常な魅力を持っていることがよく分かる。
……のだけど、小学生の交換日記じゃないんだから「もう勝手にやっといてくれ」と投げ出したくもなる(笑) -
両編とも日記体で書かれている。
鍵:中年夫婦の日記が交互に表れ、肉体的に衰える一方、ますます旺盛な情念を持つ夫、夫の肉体に満足できない妻、双方の思惑、策略、計略がすごい。。
瘋癲老人日記:病んだ老人の倒錯した性的欲求が実に生き生きと描かれる。「鍵」よりもリラックスして読める。ときにユーモラスですらある。老人の性的欲求というものは、不能になっていくのと反比例して情念的としてはますます盛んになるものか。 -
いつも開くと睡魔が襲い、読むのにとても長くかかった。
ひらがなの部分が全てカタカナの表記。内容はなんとなくわかったが、はっきりと残らないのはそのせいなのか?まるでトリック。
こんなものを書くから変態と言われるのだろうけど、こんなものを書けるのは谷崎しかいない。