グッド・バイ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006086

作品紹介・あらすじ

被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆『グッド・バイ』をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白『苦悩の年鑑』『十五年間』、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲『冬の花火』『春の枯葉』ほか『饗応夫人』『眉山』など。

感想・レビュー・書評

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  • 未完の作品「グッド・バイ」を含めた16つの短編集。

    戦時中に太宰が妻子を連れて甲府へ疎開したときの話が「薄明」「たずねびと」。そして、津軽の生家へ再疎開した時に、東京での十五年間を振り返って「十五年間」が書かれた。
    過酷すぎる状況だけに、太宰のユーモアも皮肉に感じられるところが多かった。

    その後、津軽の生家を引き払い、家族と共に上京した後、昔よく遊びに行ったとこの娘と偶然に再開したときの話が「メリイクリスマス」。真相を知ったときの男(太宰?)の男前な言動にジンときた。

    その他「男女同権」「饗応夫人」「眉山」「女類」などの作品では、当時の男尊女卑の風潮を強く感じた。物語としてはおもしろいけど、そこだけ気になってしまった。

    やはり一番印象に残ったのは表題作「グッド・バイ」かな。
    妻子持ちの男が十人以上の愛人と別れる決心をし、絶世の美人を妻だと言えば愛人たちも諦めるだろうと作戦を立て、キヌ子という女に妻役を頼み込み、愛人たちの元を回っていく。もうコメディだね。
    キヌ子は美女だが、大食いで意地汚く声も悪い女だった。とりあえず一人目の愛人は作戦成功。男は愛人の耳元で「グッド・バイ」と囁く。残りの愛人の元へ向かう途中で、未完のまま終わる。
    果たして無事にすべての愛人と別れることはできるのか。そんなことをやっていて妻子にバレてしまわないだろうか。
    物語を最後まで見届けたかったな。

  • 太宰と言えば、とにかく暗い話が多い印象にあったが、時代を軽く風刺した物等、テンポ良く楽しく読めた。
    そして太宰の生涯最後の作品であり、未完成作品の『グッド・バイ』。
    私の大好きな作品、伊坂幸太郎の『バイバイ、ブラックバード』の元になった作品である。
    これが読めて嬉しかった。
    田島とキヌ子のコンビの掛け合いが最高に面白く、もっと続きが読みたかった。
    太宰がこの物語のオチを、どのように考えていたのか……知りたい!

  • 太宰治の未完の絶筆。
    めちゃくちゃ面白い。キヌ子最高!
    こんな面白い話を最後まで書かずに逝ってしまわれた太宰治大先生!続き書いて下さい。と懇願したい。
    田島が女性関係の身辺整理をしたいのだが、どうすれば?ということで無責任な文士の出まかせ提案に乗って、美女を連れて妻になったとふれ歩く作戦。怪力、大食い、普段は担ぎ屋の汚いなり、しかし物凄く美人のキヌ子を使うことに。
    一人目は、腕のいい美人美容師。上手くいくのだが、キヌ子が、そんなにパーマは上手くもない、美人なのに別れてしまうなんて意気地がないなど、ズケズケ。田島がやめろ、というと「おやおやおそれいりまめ」と茶化す。キヌ子を、逆にものにしてやれと乗り込むが、最後は怪力で頬を殴られ撤退。その辺もすごく面白い。痛快!
    で、二人目のケイ子にとりかかるところで、作者がグッド・バイしてしまったのです。あー残念。
    作者の言葉
    「唐詩選の五言絶句に「人生足別離」ー私のある先輩はこれをサヨナラだけが人生だと訳した。
    相逢った時のよろこびはつかのまに消えるものだけれど、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きているといっても過言ではない。題して「グッド・バイ」現代紳士淑女の別離百態といっては大袈裟だけれども、さまざまの別離の様相を写し得たらさいわい。」

  • 全16篇のうちの1篇「メリイクリスマス」の「こいを、しちゃったんだから。」の破壊力(笑)!

  • 太宰治後期の短編集。短編小説14、戯曲2。
    全て戦後の作品とのこと。無頼派の先鋒といった様相。「たずねびと」「饗応夫人」「男女同権」などは皮肉が強すぎて、女性への蔑視かとも取れる。そこが、作者の裏表なのかも知れないが。
    未完の「グッド・バイ」は、一変してコミカルで、愛した女性達に別れを告げる儀式を画策する気弱な主人公が登場。ここから、新しい作風が始まろうとしていたのかもしれない。

  • 戦後、幼子ふたりと妻と共に疎開し、苦労する太宰の苦悩や戸惑いを生々しく感じられる薄明、苦悩の年鑑から始まり、非常に読みやすい文体にどんどん引き込まれました。
    時に大真面目に書いてあることが可笑しくてたまらなくクスリとさせられたり、なんとも遣る瀬無い気持ちに地団駄踏みたい気持ちにさせられたり、身につまされたり、一冊を読み終わる頃には実に様々な感情が自分の中を往来したことにびっくりしました。
    表題作グッド・バイに関しては、いよいよ面白くなる矢先にストーリーが途絶え、続きが読みたくてなんともたまらない気持ちになりました。
    傑作になるに違いなかった本作が未完の絶筆となったことが心から残念でなりません。

    • けいたんさん
      初めまして(^-^)/

      Filmarksではありがとうございました。
      けいたんです。

      私太宰治が好きです。
      まだまだちょっ...
      初めまして(^-^)/

      Filmarksではありがとうございました。
      けいたんです。

      私太宰治が好きです。
      まだまだちょっとしか読んでいませんがいつかグッドバイを読める日まで頑張ります!

      こちらでもこれからもよろしくお願いします(*^^*)♪
      2016/09/19
    • yumiさん
      けいたんさん、こんにちは...♪*゚
      太宰治がお好きなんですね!
      私は積ん読状態で、全然まだまだなのに、伊坂作品からの流れで読んでしまい...
      けいたんさん、こんにちは...♪*゚
      太宰治がお好きなんですね!
      私は積ん読状態で、全然まだまだなのに、伊坂作品からの流れで読んでしまいましたが、びっくりするくらい面白かったです。
      いつか読まれた時には、レビュー楽しみに読ませていただきますね(⁎˃ᴗ˂⁎)
      ブクログは全く使いこなせていなくてご迷惑をお掛けするかもですが、どうぞよろしくお願いします...♪*゚
      色々教えてください!
      2016/09/20
  • 未完の作品ということで全体として
    どうかは評価できないが、設定としては非常に面白く、この後どうなっていたのかが非常に気になり惜しまれます。モテ男が女性関係を精算するために取ろうとした策略は…ともすればルッキズムの考え方に抵触しそうな内容でもある。

  • 戦後、太宰後期の作品集。
    破壊者である太宰の荒々しくも熱っぽい文章に胸を打たれる。『グッド・バイ』どんな作品になっていたのだろうか、本当に口惜しい。

  • 「グッド・バイ」が未完なのが悲しい
    「メリイクリスマス」が自分は一番好き
    死が近くにある時は
    生きる事を選び
    死が遠のいていったら
    死にたくなったのだろうか
    妙興寺ブックオフにて購入

  • 未完のグッドバイが収録されている短編集。エッセイ的なものが多い中、冬の花火と春の枯葉という本格的な戯曲が非常に面白い。途中までしか書かれていないが、グッドバイが完成していたら人間失格以降の太宰治の代表作になっていたかもしれない。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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