パンドラの匣 (新潮文庫)

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著者 : 太宰治
  • 新潮社 (1973年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006116

パンドラの匣 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 太宰特有の湿っぽい暗さがなく、明るく希望に満ちた作品だった。
    「正義と微笑」は希望を持って前に向かっていくという最後だったために、自分が太宰の作品を読んでいるということを忘れるくらいだった。
    太宰の暗さが苦手だという人には一度読んでもらいたい。
    きっと太宰の印象がこれまでとは違うものになると思う。

  • 「正義と微笑」との2編である。どちらも青春小説で、暗いところがなく好きだ。特に、「パンドラの匣」は、友人との書簡形式文章であるが、好きなのになんとも思わない振りをし続ける青年をいやらしくもなく書かれている。最後に素敵な文章が書かれている。

  • まだ少年の域から抜けきれていない、ちょっとばかしイタイ部分もある二十歳のヘタレ君の、キュートで明るく、そしてほろ苦い青春失恋小説です。  

    結核治療のため、終戦と同時に「健康道場」と称するまことに風変わりな療養所で暮らすことになった二十歳の青年「ひばり」。  
    彼は親友への書簡として、閉じられた退屈な世界の中のささやかで他愛もない日常を、青少年期という微妙な時期特有の悩ましさと滑稽さ、さらに、愚直さによって様々な色彩を加えながら、日々、綴っていきます。  
    自身を、何事にも惑わされない「あたらしい男」になったなどとうそぶき、硬派な男をよそおっているくせに、その実、最も多く記すのは、道場の奇怪な風習や同室のへんてこな男たちのことではなく、身近にいる女性たち ―― 仕事はできないけど、天真爛漫で愛らしくて、いつも彼を振り回す十八歳の若き看護婦「マア坊」と、優秀な年上の美人看護婦「竹さん」 ―― のこと。    

    愛嬌ある年下の小悪魔系美少女と、面倒見のよい年上美女の間で揺れ動く優男の話かい!!・・・と、途中でツッコミをいれたくなりますが、それだけでは終わらないところは、さすが、文豪の腕。  


    書簡という、身近な他者が「読み、返事を寄越してくる」ことを強く意識して描かざるを得ない特異な状況を文体として採用することで、親友にさへひた隠しにして胸に秘め続けたひばりの本心を最後の最後にようやく暴露させる手法や、三人の関係に終焉をもたらす予想外のどんでんがえしを暗示するかのように実は話の始めからちゃっかり織り込まれていた伏線の存在、好きな男への女心の機微の表出の仕方など、読み終わって振り返ると、思わずうなってしまう心憎い演出が散りばめられています。  
    若者特有の軽妙で少しばかり斜に構えた語り口と、内面的にも外面的にも精密になされた描写の絶妙な融合によって、多かれ少なかれ誰しもが持つ虚栄心と自己欺瞞、そして、実らなかったすれ違い両想いのほろ苦く優しい切なさとそれでも失われない希望を、暗さを感じさせないどころか、儚かった恋に傷つく大人になりきれない少年に愛おしささえ感じさせるように描ききった良作です。

    「正直に言う事にしよう。人間は不幸のどん底につき落され、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷の希望の糸を手さぐりで捜し当てているものだ。それはもうパンドラの匣以来、オリムポスの神々に依っても規定せられている事実だ。」

  • 10代のころ太宰治がすごく好きだった
    手に取らなくなって久しかったが、久しぶりに女生徒を読んだのを皮切りに
    未読だったこの作品も読んだ。
    太宰治の著作の中で一番好きかもしれない。
    死の影を背負いながら、生きてること、人生を無条件に肯定しているぐらい、前向きで光に溢れた作品。
    よんでいるとフッと笑みが漏れる、作中の人物が全ていとおしい。

  • 2015.09.20再読。

    読み終わったになっていたけど、読んだ記憶がなかったんだけどな。

    『正義と微笑』
    高校受験に失敗し、俳優を目指す主人公の話。
    周囲は白痴ばかりと認識しながら、自分の才能に関しては臆病でもある。
    しかし、そういう自分を省みることが出来る点で読んでいて苦はなかった。すっきり前向き

    『パンドラの匣』
    最初の喀血シーン。怖っ!
    死を前にして、人はどう生きるのか。
    話の筋はあまり面白くなかったが、明るい太宰を読めた。

  • かっぽれさんの天然っぷりが素敵でした。ひばりのツッコミもなかなか。孔雀のあだ名を「孔雀が地味になったんだから一字取って雀にしよう」という案は機知に富んでていい。「亀は意外と速く泳ぐ」の主人公の少女二人の名前が孔雀と雀なのは、ここから来てるのかな?

  • 太宰治の作品にしては凄いポップな感じの作品です。自分は単純に太宰治は女性が本当に好きなんだなと感じた。いいも悪いもあれだけ深く観ているのは特定の人が好きなのではなく女性が好きなんだなと。
    この作品に関しては共感することも多く太宰治作品の中で1番楽に読めました。
    映画版も鑑賞したがこちらもいい出来でした。

  • 根拠もなく自分は特別なんだと思い込んでいて、
    そのくせちょっとした事で傷つきやすくて、
    自分にもこんな気持ちがあったなと、読んでいてうわぁーってなる。
    「パンドラの匣」と「正義と微笑」のどちらの主人公も
    青春のぐるぐるした感情に振り回されていてかわいらしい。

    手紙や日記形式の小説は盗み読んでるような感覚になるからか
    妙に惹き付けられるものがある。

  • 1話目「正義と微笑」は
    太宰治節なのに太宰治じゃないみたい
    なにこのとんとん拍子のサクセスストーリー
    許せーん
    読みながら「そろそろ奈落の底に落ちていくんでしょ?」と
    期待に胸をふくらませていたのにっ

    2話目「パンドラの函」も
    死の病に冒されているのに
    延々と女性批評を繰り返す主人公に
    血は?!血は吐かんのですか?!と
    肩をつかんで前後にゆさぶってやりたい気分

    なんにしても太宰治だし
    太宰治のユーモアな部分全開なので
    割と太宰治好きな自分は楽しめました

    ちょっと時間かかったけど
    変な期待に振り回されて楽しかったので
    星は3つ

  • あかるくなる。強くなれる。
    太宰治はわたしたちにいろいろな感情をくれるけれど、睫毛についたほこりの光みたいな、電車の窓から入ってくる正午の太陽の光みたいな、きらきらした中期の作品からもらえるものはとても多すぎる。
    世間的には後ろ向きの代表のような存在だけれど、この一冊は春の嵐のようにやさしく生暖かく、けれども確実に背中を押してくれる一冊だ。

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