パンドラの匣 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006116

感想・レビュー・書評

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  • 2021/03/25 読了

  • 『正義と微笑』と『パンドラの匣』2篇を収録。

    諸兄御承知の通り、太宰の作品は、津軽の生家への思い、家族関係の重さ苦しさ、自身の生の苦しさを彫琢したものが、作品の大半を占めている。
    しかしこの2篇は他と趣が大いに異なり、新鮮な感じを味わえた。

    『正義と微笑』は、大戦中に書かれたもの。16歳の青年が書き続けた日記、という型式・構成。
    表題は、聖書マタイ伝六章の一節、
    「なんじら断食するとき、偽善者のごとく、悲しき面容をすな。」より喚起された思い
    「微笑もて正義を為せ!」というモットー、決意を意味している。

    他にも、彼の日記には、かような言葉が続々。
    「明日からは高邁な精神と新鮮な希望を持って前進だ。」とか、
    「きょう1日で、僕は、めっきり大人になった。発展!という言葉が胸にひしひしと迫ってくる。」

    …などなど、威勢のいい言葉、夢と気概、自身へのストイックな思いが、溢れている。

    一高受験と失敗。私立大学への入学と、学友への幻滅(思い上がった軽蔑の思い)。そして、俳優をめざして次々に劇団を受験するなど猪突猛進の日々。そして、機会を勝ち取り、道を拓いてゆく。
    青年期の勢い、意志、エネルギーが満ち満ちている。前進することの力強さ、生気を感じられる小説である。
    太宰のなかでは、異色の小説。

    * * * * * * * 
    『パンドラの匣』もまた、青年が主人公。結核療養所で治療を続けている二十歳の青年が親友にあてた手紙、という構成。書簡体小説。「健康道場」なる奇異な名称の療養所の日常。同室の人間達への毀誉褒貶、看護師の女性達の好き嫌い、恋心も綴られる。
     時折、同室の者たちとの自由闊達な議論が挿入される。自由思想とはなんたるか、戦後日本再建の方途とは、等々。そこには、太宰自身の思想、批評精神が刻まれている、という。戦後に書かれた作品。
    # 

  • 明るい太宰治は意外でしたが、青春小説としてあまり自分にはヒットしませんでした。

  • 表題の「パンドラの匣」の他に「正義と微笑」が収録されている。
    「パンドラ」は大学生の頃に読んだのだと思うが、「正義と…」のほうは読んだ記憶がない。おそらく、途中で断念したのだろう。
    断念した(と思しき)あの頃から10年ほど経った今、再チャレンジしてみたわけだが、率直な感想は「青春とはこんなにも独善で恥ずかしいものなのか」。
    「パンドラ」も含めて、両作品は太宰の中でも青春文学に位置付けられるらしい。ふーん(・_・;
    で、「正義と微笑」。主人公の斜に構えた感じ。もうこれがたまらない。たまらない、というのは、たまらなく良くない。
    何がたまらなく良くないかって、あたかも昔の自分を見ているかのようだからだ。
    途中で何度読み進める手を止めようと思ったことか。
    しかし、過去から逃げてはいけない、その義務感というか強迫観念と闘いながらなんとか読了…。
    あー、青春って恥ずかしい……。

  • 何孤高ぶっとんねん。何気取っとんねん。お前何様のつもりやねん。弱者の単なる独善やんけ!!恰好つけんな。

    そんな感じで、拝読中ずっと苛々しとった。あれ?俺には太宰合わんのか?『ヴィヨンの妻』も苛々させられたし。『人間失格』と『斜陽』は面白く読めたんやけど。(^^)?
    太宰から言わせれば俺も「ケチくさい人間」なんやろうな。

    以上の怒りは太宰にむけたものというより、現在の自分にむけたものでもあるらしい。
    2013.6.2

  • 祖母から譲り受けたものと画像とでは表紙が違うのがなんだかビンテージ持ってるぞ感

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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