津軽通信 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006154

感想・レビュー・書評

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  • 斜陽館に立ち寄りつつ
    津軽を旅しながら読んだ一冊

  • 短編集。もっと浸っていたいと思える話が多かった。短編でこの没入感は珍しいかも。

  •  表題の『津軽通信』は、戦時中、太宰が郷里津軽の生家に疎開した当時に書かれたという五編。他に『黄村先生言行録』シリーズとされる三篇も。全ニ十篇。

     新潮文庫の太宰の全作品を読み終えつつあるが、なかでもこの短編集は、最も気に入ったものになりそうだ。きゅっとコンパクトに仕上げた短編の面白さと巧さ、随筆の味わい深さを、併せ持つ。粒ぞろいだ。そして、おだやかな作風のものが多く、太宰の優しい人柄を感じられるものも多く入っている。

    以下、特に心に残った作品。
    「短編集」からの『デカダン抗議』と短編『チャンス』は、いずれも青森での青年時代、芸者の娘との思い出とエピソード。甘酸っぱい記憶と、艶っぽい味がある。

    『未帰還の友に』と『酒の追憶』は、いずれも、戦時中の友との邂逅を綴った随筆のような作品。『未帰還…』は、戦地に赴く青年と上野でつかのまの盃を交わした日のエピソード。太宰とその青年は、それまで高円寺のおでん屋「菊屋」に通っては、戦時下の物資不足で入手困難だった酒を呑もうと、あの手この手の悪知恵を働かせていた呑み仲間だった。そして、そのおでん屋の娘と出征学徒の青年の、その後のほろ苦い後日談。青年の誠実な人柄を愛している太宰、そして二人の恋に責任を感じる太宰の生真面目さ。せつなさが胸に迫る。

     『酒の追憶』は、戦前戦中を通じ、時勢によってお酒の飲み方が移り変わったことや、太宰自身が酒に呑まれた失敗談も織り交ぜてある。さらに、戦中、貴重なウイスキーの瓶を風呂敷包みに抱えて遠方より来たる友人、丸山君との思い出が描かれる。やはり、酒呑みの気持ちをよくわかっていて粋なはからいをしてくれた丸山君をいとおしむ太宰の気持ちが滲んでいる。友と再会し盃を交わす太宰は、ほんとうにうれしそうだ。太宰は友を大切にする優しい男だったように思う。解説によれば、丸山君はその後広島の原爆で帰らぬ人となったそうだ。

    『嘘』は、戦時下の青森で“脱走兵”(入営忌避)をかくまった妻のエピソード。『雀』は、伊豆伊東の射的屋で、看板娘の膝を思わず射ってしまった若い兵隊の苦い思い出を綴っている。このニ篇、切れ味見事な短編で巧い。面白い。

    この文庫、いつか再読したい、と思う。



     

  • 好きなタイプの太宰作品が多い、良い短編集だった。
    『一燈』、『庭』の雰囲気がすきだった。どちらも長兄とのエピソードなので、私はその2人の関係性が好きなんだろうか....
    落ち着いていて、しおらしく、それでいてユーモアやあたたかさのあるこうした系統の太宰作品が好きだ。
    『未帰還の友に』は取り残された太宰のやりきれないどうにも苦しい気持ちが全体に流れており、こちらも苦しくなる。「自分だけ生き残って、酒を飲んでいたって、ばからしい」なんて。
    『チャンス』は前半の恋愛に関する御託が面白い。「『ふとした事』から異性と一体になろうとあがく特殊な性的煩悶、などという壮烈な経験は、私には未だかつてないのである。」と書いてあるからこちらが「まさか!嘘をつくな」と突っこむとすかさず次の行には「私は決して嘘をついているのではない。まあ、おしまいまで読み給え」などと書かれているから、してやられたと笑うしかない。本当にこのひとは読者と会話するのが呆れるほど上手い。

  • 登場人物や語り手の息遣いがすぐ側に感じられた。奇を衒った、技法に酔った、作者の独り善がりの創作ではなく、誤魔化しのきかない文章の巧みさによって、短編の世界に引き込まれた。

  • 2023年12月映画化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99749416

  • 2023/03/30 読了 ★★★

  • こういう物も書けるからこそ太宰治はすごいのだ。

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  • 黄村先生集すっき。太宰の滑稽ものは面白いなあ。武蔵の独行道をひいていちいち書き直してるの、ほんとしみじみ同感するw
    短編もそれぞれ味があって、いやうまい。

  • 黄村先生のシリーズには笑った。
    特に「花吹雪」がお気に入り。
    それにしても、太宰を読むのは久し振り。
    他の作品は学生の頃一通り読んだけど、何となく自分が太宰より歳上になって作品を読むとは思ってなかったから。

  • 中期の安定してい時期から死の間際までの太宰の短篇を収録。死の近づいた時期の作品「酒の追憶」はそれを感じさせないほどユーモラスである。連作「短篇集」の「ア、秋」は詩情豊かな作品だ。「秋ハ夏ノ焼ケ残リサ。」なんてそりゃカブれます。「リイズ」がかなり胸キュン。女性にはぜひ読んでもらいたい。「黄村先生言行録」は風変わりな老人黄村先生の行動がおかしい。三編とも好きだ。「チャンス」は「恋愛はチャンスなんかではない。意志だと思う」に始まり据え膳食わない太宰がかわいい。太宰の短篇巧者ぶりが軽く楽しめる好著だ。

  • 短編集。黄村先生言行録。戦時中で規制のある中風刺の効いた作品。もっと続けて欲しかった。2016.1.24

  • こういう太宰治の作品もあるのかと、新しい発見になった本です。
    面白くて、あたたかい感じがします。いくつか太宰治の作品を読んだ後に読むと、もっと楽しく読めると思う。

  • 読むの疲れたー

  • 黄村先生シリーズを初めて読んだとき、これ本当に太宰の作品?というほど新鮮な気持ちになった。それでもサービス満天のユーモアが溢れている。「酒の追憶」は太宰が自殺する3ヵ月前に書かれたと知って、最後の最後まで読者に対してユーモアを忘れなかったと思わせる。自分の作家道を貫き通した太宰に感服。

  • 太宰さんの戦後の短編シリーズを収めた新潮文庫です。
    新潮文庫は文字が大きく、行間が広いので読みやすいのだ。

    太宰さんって実はけっこう優しい人だったのかな…って思えるお話が多かったです。

    太宰さん初心者よりも太宰さん中級者向けの1冊かな。
    らじはもう中級者のつもりだけどね(笑)

  • 『津軽通信』
    これも太宰自身のことを書いているような小説です。
    『東京八景』のさらに後、太宰は疎開のため故郷の生家に戻ります。
    そして、その直後、敗戦が告げられます。そういう時代の作品です。
    『津軽通信』は『庭』『やんぬる哉』『親という二字』『嘘』『雀』の
    5作品の短編をまとめた作品集のタイトルで、
    生家で世話になっている兄のこと、同級生の友達のことなどが書かれています。
    なんかね、戦争の悲惨さを感じました。
    別に戦場の場面が書かれているわけではないんですが、
    戦争によって人々がどういう暮らしをしていたのかな、とか
    どういう風に変わってしまったのかな、とかそういうことを考えてしまいました。

    『チャンス』
    これはなんか面白くて笑ってしまいました。
    太宰的、恋愛論。
    とでも言うか、恋愛ってこんなものじゃないかなというのを書いています。
    前半部分で恋愛とはこういうものじゃないか、ということをつらつらと書いて、
    それを裏付けるような一夜の体験を後半に書いている作品です。
    解説では、前半部分を珍しく理屈っぽく長すぎる、という風に書いてあるのですが、
    私はこの前半部分が好きです。
    むしろ、これがあるから後半がより面白く感じるんでしょうね。
    今、恋愛指南書とかたくさん出版されてるし、
    ファッションでも異性を意識した特集とか組まれているようなご時世ですが、
    「モテ」を考えている人は読んでみると目が覚めるような感じがするかもしれませんね。

  • ユーモアあり哉。

  • 「リイズ」などの明暗多彩な戦中戦後の佳作が集まった短編集。

  • 短編を中心としている一冊。一つ一つの話が区切り良く終わっているため、テンポよく読み進めることができた。
    シリーズもので一番面白いと思ったのは、「黄村先生言行録」シリーズの山椒魚の話。語り手のである書生くんのように、黄村先生の行動から何かしらの教訓を得ようとしたわけではないのだが、読んでいるだけで思わずにやりとしてしまう。それだけでも、わたしにとっては価値があるお話である。「相変わらず登場人物のキャラ立てが上手い!」というのが、かなり率直な感想。もっと太宰の短編を読んでみたい。

  • 学生時代に太宰の本は一通り読んでいて、この「津軽通信」も読んだはずだけど、暇つぶしに再読。

    表題作の「津軽通信」は故郷の津軽にちなんだ5つの掌編を集めた作品。特に「雀」は戦地での経験を経て、自らの中の加虐性にふと気づいてしまう様子を一文の無駄もなく描き切る。やはり太宰は戦中~戦後の作家であるという事実を改めて感じた。

  • 今まで読んだものとは一味違った作風の短編集。
    太宰のユーモアと理念とが等身大に描かれていて、なんだか親しみやすい。

    いちばん初めの「ア、秋」に、やられた。たまらない気持ち。なんだよ全く、太宰治ってやつなキザだなあ。素敵だなあ。と惚れ惚れした。
    「黄村先生言行録」はどれも可笑しなことばかりで、くすくす笑ってしまった。
    花吹雪の十九カ条には笑わされた。

    作家として、男として、人間としての、新たな一面を見つけられる一冊。

  • 自分が飽きてきたというのもあるが、他の短編集よりは面白くなかったと思う。
    それでも黄村先生の造形など、面白い部分は何箇所もみられる。

    「チャンス」、これは太宰の恋愛観についての作品だが
    賛否両論だとは思う。
    僕はかなりの部分で同意できたのでお気に入りの作品です。

  • 実家に疎開中に書かれた「津軽通信」(庭、やんぬる哉、親という二字、嘘、雀)、「未帰還の友に」「チャンス」を読む.肩身が狭く鬱々としているといいながら、「津軽通信」の諸作品に暗い影はあまりない.「やんぬる哉」は少し後の「親友交歓」を思わせるおもしろさがあるし、「雀」もオチがいい.「未帰還の友に」は戦後に生きること辛さを感じさせる.

    他に黄村先生三部作「黄村先生言行録」「花吹雪」「不審庵」を読む.おもしろくないわけではないが、ちょっと作り過ぎでないか。


    それにしても太宰のように自分の人生と小説の距離が近いのは辛いだろうな.

  • なんだかカラフル。
    いろんなダザイを堪能いたしました。

  • 本日6月13日は太宰治の命日となつてゐます。ちなみに「桜桃忌」は6月19日で遺体が発見された日ださうです。その日は偶然にも誕生日と重なつたこともあり、19日を記念日としてゐるのでした。
    それにしても、今年は生誕100周年で、太宰作品がいくつも映画化されますが、興行的に大丈夫なのでせうか。聞いたところでは、『ヴィヨンの妻』『斜陽』『パンドラの匣』そして『人間失格』...
    うまく映像化できるのか、心配になるやうな作品ばかりですね。新聞記事で読んだところでは、『人間失格』は最後が余りに陰惨なので、映画では救ひのあるラストシーンに変へるとか。映画は原作に忠実に作る必要はないけれど、それはちよつと違ふのではないかな...ま、公開は来年らしいので、のんびり待つとしませう。

    この『津軽通信』は、それまでの新潮文庫版に未収録の短編が収められてゐます。作風もいろいろ変化に富み、太宰作品としては傍系に属すると思はれる作品群ですが、まことに興味深い1冊であります。志賀直哉に酷評された『犯人』も収録されてゐます。志賀の批判は当つてゐないと存じますが、少し読むのは辛いですね。完成度は高いと思ふけれど、最後の落ちも含めて、救ひがないといふか、ハードボイルドである。
    それでもなほ、本書は読んで欲しい1冊。ある意味、太宰の長編・中篇数冊分の精粋を含んでゐます。よろしく。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-24.html

  • 良いっ!特に後半は一気に読んだ。

  • 「座興に非ず」「犯人」に、太宰のどうにも遣り切れない投槍の虚無と追い詰められた絶望の凄まじさを見る。「黄村先生」三部作は、戦時下の国粋主義を茶化した風刺小説、大笑い。

  • 文章の構成が素晴らしいな、と思いました。短編の中の短編。とってもバラエティー豊か。

    若者に対して、老人に対して、常に素直で純粋で、おちゃめ。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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