津軽通信 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006154

感想・レビュー・書評

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  • 斜陽館に立ち寄りつつ
    津軽を旅しながら読んだ一冊

  • 短編集。もっと浸っていたいと思える話が多かった。短編でこの没入感は珍しいかも。

  •  表題の『津軽通信』は、戦時中、太宰が郷里津軽の生家に疎開した当時に書かれたという五編。他に『黄村先生言行録』シリーズとされる三篇も。全ニ十篇。

     新潮文庫の太宰の全作品を読み終えつつあるが、なかでもこの短編集は、最も気に入ったものになりそうだ。きゅっとコンパクトに仕上げた短編の面白さと巧さ、随筆の味わい深さを、併せ持つ。粒ぞろいだ。そして、おだやかな作風のものが多く、太宰の優しい人柄を感じられるものも多く入っている。

    以下、特に心に残った作品。
    「短編集」からの『デカダン抗議』と短編『チャンス』は、いずれも青森での青年時代、芸者の娘との思い出とエピソード。甘酸っぱい記憶と、艶っぽい味がある。

    『未帰還の友に』と『酒の追憶』は、いずれも、戦時中の友との邂逅を綴った随筆のような作品。『未帰還…』は、戦地に赴く青年と上野でつかのまの盃を交わした日のエピソード。太宰とその青年は、それまで高円寺のおでん屋「菊屋」に通っては、戦時下の物資不足で入手困難だった酒を呑もうと、あの手この手の悪知恵を働かせていた呑み仲間だった。そして、そのおでん屋の娘と出征学徒の青年の、その後のほろ苦い後日談。青年の誠実な人柄を愛している太宰、そして二人の恋に責任を感じる太宰の生真面目さ。せつなさが胸に迫る。

     『酒の追憶』は、戦前戦中を通じ、時勢によってお酒の飲み方が移り変わったことや、太宰自身が酒に呑まれた失敗談も織り交ぜてある。さらに、戦中、貴重なウイスキーの瓶を風呂敷包みに抱えて遠方より来たる友人、丸山君との思い出が描かれる。やはり、酒呑みの気持ちをよくわかっていて粋なはからいをしてくれた丸山君をいとおしむ太宰の気持ちが滲んでいる。友と再会し盃を交わす太宰は、ほんとうにうれしそうだ。太宰は友を大切にする優しい男だったように思う。解説によれば、丸山君はその後広島の原爆で帰らぬ人となったそうだ。

    『嘘』は、戦時下の青森で“脱走兵”(入営忌避)をかくまった妻のエピソード。『雀』は、伊豆伊東の射的屋で、看板娘の膝を思わず射ってしまった若い兵隊の苦い思い出を綴っている。このニ篇、切れ味見事な短編で巧い。面白い。

    この文庫、いつか再読したい、と思う。



     

  • 好きなタイプの太宰作品が多い、良い短編集だった。
    『一燈』、『庭』の雰囲気がすきだった。どちらも長兄とのエピソードなので、私はその2人の関係性が好きなんだろうか....
    落ち着いていて、しおらしく、それでいてユーモアやあたたかさのあるこうした系統の太宰作品が好きだ。
    『未帰還の友に』は取り残された太宰のやりきれないどうにも苦しい気持ちが全体に流れており、こちらも苦しくなる。「自分だけ生き残って、酒を飲んでいたって、ばからしい」なんて。
    『チャンス』は前半の恋愛に関する御託が面白い。「『ふとした事』から異性と一体になろうとあがく特殊な性的煩悶、などという壮烈な経験は、私には未だかつてないのである。」と書いてあるからこちらが「まさか!嘘をつくな」と突っこむとすかさず次の行には「私は決して嘘をついているのではない。まあ、おしまいまで読み給え」などと書かれているから、してやられたと笑うしかない。本当にこのひとは読者と会話するのが呆れるほど上手い。

  • 登場人物や語り手の息遣いがすぐ側に感じられた。奇を衒った、技法に酔った、作者の独り善がりの創作ではなく、誤魔化しのきかない文章の巧みさによって、短編の世界に引き込まれた。

  • 2023年12月映画化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99749416

  • 2023/03/30 読了 ★★★

  • こういう物も書けるからこそ太宰治はすごいのだ。

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  • 黄村先生集すっき。太宰の滑稽ものは面白いなあ。武蔵の独行道をひいていちいち書き直してるの、ほんとしみじみ同感するw
    短編もそれぞれ味があって、いやうまい。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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