新樹の言葉 (新潮文庫)

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著者 : 太宰治
  • 新潮社 (1982年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006161

新樹の言葉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 2017/01/29 読了

  • 太宰が麻薬中毒から立ち直り数多の佳作を残した初期から中期への移行期の短編集。意外なほど読み易かった。「葉桜と魔笛」が最高。物悲しくも美しい希望と余韻のある読後感だ。「新樹の言葉」は乳母の子供たちとの再会を想像して書かれたものだがこんな風に太宰は心温まる交流をしたかったのだろうな…と考えると切ない。「春の盗賊」はユーモアを織り交ぜつつ小市民的な生活と再び破滅に身を委ねたいという葛藤が伝わり強烈だ。「もういちど、あの野望と献身の、ロマンスの地獄に飛び込んで、くたばりたい!できないことか。いけないことか。」

  •  甲府市に移り住み、作家生活と人生の再出発を期していた頃の短編を中心に編纂された文庫である。
     精神病院に入るなどボロボロに荒廃し、作品も荒れていた時期の後に書かれた作品群である。おそらく「二十世紀旗手」の後の創作にあたる。
     尖鋭でぶっ飛んだ「二十世紀旗手」の作品の後に読むと、この「新樹の言葉」に集められた掌編は、穏やかで、やわらかい感じを受ける。

    斯様な一節があった。
    「私は、これからも、様々に迷うだろう。くるしむだろう。波は荒いのである。」 
    ~『懶惰の歌留多』~
     ふっと、この言葉に胸を突かれた。こういうところに太宰文学の魅力を感じる。

     さて、本文庫では、とりわけ、以下の掌編が気に入った。
    ・「新樹の言葉」。甲府で、幼き頃より慕っていた乳母の子と思いがけず再会するお話。そのよろこびとうれしさに満ちている。ほんとうにうれしそうである。
    ・「春の盗賊」。後半、自宅に侵入した夜盗と対面、対話が始まる展開から、俄然面白くなる。ユーモラス。天与の噺家の才能を感じる。
    ・「老ハイデルベルヒ」。帝大生の頃、伊豆の三島に旅したときの思い出。そして、再訪した際の侘しさを描く。調子にのって友人達を強引に三島まで連れ出すのだが、道中どんどん心細く、焦り始め、それでも強がりを言い続ける小心者ぶりが面白い。

  • 太宰が薬物中毒に苦しんでいた時期のセレクションのせいか、話がどうにもまとまらない作風が多い。その中でもやはり味わい深いオチの「葉桜と魔笛」は見事な傑作。時が経ち変わってしまった思い出の地の出来事を描いた「老ハイデルベルヒ」もいい。

  • 未完の『火の鳥』は、是非とも完結させてほしかった・・・これから面白くなりそうなところで終わってしまうのが残念です。

    ロマンス好きな兄妹たちがリレー形式で物語を紡いでいく『愛と美について』
    兄妹ひとりひとりの人柄と、物語がマッチしていて温かみを感じます。

    一番心に残っているのは『葉桜と魔笛』
    太宰お得意の女性の一人称小説なのですが
    短い物語に関わらず、とんでもない完成度です。
    太宰本人が主人公かな?と思われる他の作品とはえらい違いです。
    心が洗われるような、素敵な話です。

  • 『葉桜と魔笛』
    あの頃わたしは、せっかく生まれて若くてきれいなときは一瞬なのに、誰にも愛されることなく幸せを知ることなくこのまま年老いて死んでいくのだと思ってた。お利口に生きてきたのにそのために自分のしたいこともわからず、誰の記憶の片隅にも残らず、本当に生きたと思えないまま死ぬのだと思った。わたしの手が指が髪が肌がかわいそうだと思った。

  • 太宰中期の作品集
    世間の目に反抗しつつも、罪悪感にさいなまれる様子が伺える。生き辛いだろうなあ、という感じ

    収録作品:『I can speak』『懶惰の歌留多』『葉桜と魔笛』『秋風記』『新樹の言葉』『花燭』『愛と美について』『火の鳥』『八十八夜』『美少女』『春の盗賊』『俗天使』『兄たち』『老ハイデルベルヒ』『誰も知らぬ』

  • 何度も繰り返し読んだ表題作。人生を再出発する決意が込められた、「黄金風景」と並ぶ温かい作品。

  • 1か月掛けてじっくり読み込んだ、久しぶりの太宰。
    中期作品ということで、自身の復活、更正への思いが感ずられる短篇が多い。
    純粋なことばのあそびに、一々うっとりしてしまう。
    「懶惰の歌留多」なんて、ことばの端々に見え隠れする甘美さには溜め息漏らさずにページを繰ることなぞできまい。

    一般的小市民であることの仕合わせを目指す太宰の、小さな仕合わせとズレ、可笑しさ、滑稽さ、寂しさ。

    あの、好きです、
    と言いたくなる。太宰。

  • 「秋風記」「愛と美について」「火の鳥」が結構好き

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