新樹の言葉 (新潮文庫)

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著者 : 太宰治
  • 新潮社 (1982年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006161

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新樹の言葉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 太宰が麻薬中毒から立ち直り数多の佳作を残した初期から中期への移行期の短編集。意外なほど読み易かった。「葉桜と魔笛」が最高。物悲しくも美しい希望と余韻のある読後感だ。「新樹の言葉」は乳母の子供たちとの再会を想像して書かれたものだがこんな風に太宰は心温まる交流をしたかったのだろうな…と考えると切ない。「春の盗賊」はユーモアを織り交ぜつつ小市民的な生活と再び破滅に身を委ねたいという葛藤が伝わり強烈だ。「もういちど、あの野望と献身の、ロマンスの地獄に飛び込んで、くたばりたい!できないことか。いけないことか。」

  •  甲府市に移り住み、作家生活と人生の再出発を期していた頃の短編を中心に編纂された文庫である。
     精神病院に入るなどボロボロに荒廃し、作品も荒れていた時期の後に書かれた作品群である。おそらく「二十世紀旗手」の後の創作にあたる。
     尖鋭でぶっ飛んだ「二十世紀旗手」の作品の後に読むと、この「新樹の言葉」に集められた掌編は、穏やかで、やわらかい感じを受ける。

    斯様な一節があった。
    「私は、これからも、様々に迷うだろう。くるしむだろう。波は荒いのである。」 
    ~『懶惰の歌留多』~
     ふっと、この言葉に胸を突かれた。こういうところに太宰文学の魅力を感じる。

     さて、本文庫では、とりわけ、以下の掌編が気に入った。
    ・「新樹の言葉」。甲府で、幼き頃より慕っていた乳母の子と思いがけず再会するお話。そのよろこびとうれしさに満ちている。ほんとうにうれしそうである。
    ・「春の盗賊」。後半、自宅に侵入した夜盗と対面、対話が始まる展開から、俄然面白くなる。ユーモラス。天与の噺家の才能を感じる。
    ・「老ハイデルベルヒ」。帝大生の頃、伊豆の三島に旅したときの思い出。そして、再訪した際の侘しさを描く。調子にのって友人達を強引に三島まで連れ出すのだが、道中どんどん心細く、焦り始め、それでも強がりを言い続ける小心者ぶりが面白い。

  • 太宰が薬物中毒に苦しんでいた時期のセレクションのせいか、話がどうにもまとまらない作風が多い。その中でもやはり味わい深いオチの「葉桜と魔笛」は見事な傑作。時が経ち変わってしまった思い出の地の出来事を描いた「老ハイデルベルヒ」もいい。

  • 未完の『火の鳥』は、是非とも完結させてほしかった・・・これから面白くなりそうなところで終わってしまうのが残念です。

    ロマンス好きな兄妹たちがリレー形式で物語を紡いでいく『愛と美について』
    兄妹ひとりひとりの人柄と、物語がマッチしていて温かみを感じます。

    一番心に残っているのは『葉桜と魔笛』
    太宰お得意の女性の一人称小説なのですが
    短い物語に関わらず、とんでもない完成度です。
    太宰本人が主人公かな?と思われる他の作品とはえらい違いです。
    心が洗われるような、素敵な話です。

  • 『葉桜と魔笛』
    あの頃わたしは、せっかく生まれて若くてきれいなときは一瞬なのに、誰にも愛されることなく幸せを知ることなくこのまま年老いて死んでいくのだと思ってた。お利口に生きてきたのにそのために自分のしたいこともわからず、誰の記憶の片隅にも残らず、本当に生きたと思えないまま死ぬのだと思った。わたしの手が指が髪が肌がかわいそうだと思った。

  • 太宰中期の作品集
    世間の目に反抗しつつも、罪悪感にさいなまれる様子が伺える。生き辛いだろうなあ、という感じ

    収録作品:『I can speak』『懶惰の歌留多』『葉桜と魔笛』『秋風記』『新樹の言葉』『花燭』『愛と美について』『火の鳥』『八十八夜』『美少女』『春の盗賊』『俗天使』『兄たち』『老ハイデルベルヒ』『誰も知らぬ』

  • 何度も繰り返し読んだ表題作。人生を再出発する決意が込められた、「黄金風景」と並ぶ温かい作品。

  • 1か月掛けてじっくり読み込んだ、久しぶりの太宰。
    中期作品ということで、自身の復活、更正への思いが感ずられる短篇が多い。
    純粋なことばのあそびに、一々うっとりしてしまう。
    「懶惰の歌留多」なんて、ことばの端々に見え隠れする甘美さには溜め息漏らさずにページを繰ることなぞできまい。

    一般的小市民であることの仕合わせを目指す太宰の、小さな仕合わせとズレ、可笑しさ、滑稽さ、寂しさ。

    あの、好きです、
    と言いたくなる。太宰。

  • 「秋風記」「愛と美について」「火の鳥」が結構好き

  • 太宰さん、トクシュです。

  • ヤク中と自殺未遂という地獄の時代から這い上がろうと懸命にあがいていたころの作品中。
    なんか、まだ精神病んでるせいか、やっつけな作品が多い気がする;
    『懶惰の歌留多』とか『火の鳥』は、完全に途中放棄してるでしょ。特に後者は完成していたら太宰作品のなかでも結構名作になったと思うのにな~もったいない。

    いくつか印象に残った作品についてメモする・

    『秋風記』 人妻Kと自称・不良少年の主人公が旅館で心中しようとする話。太宰ってこの手の自殺未遂もの多いよね。。自身の体験をもとにしてるんだろうけど憂鬱になってしまう

    『新樹の言葉』 故郷で世話を受けた乳母の子供たちと異郷の地で再会する話。
    「投げ捨てよ、過去の森。自愛だ。私がついている。泣くやつがあるか。」泣いているのは私であった。
    太宰の、更生しようと一生懸命な姿勢がうかがえていじらしい。

    『火の鳥』 大作を残そうとしたけどやっぱムリでした~的な、残念すぎる作品。でも個人的にはこれが1番好きかも。女優・高野幸代の物語。色々な男性のもとから、蝶のようにひらひら飛びうつろう女の話。
    よく思うんだけど太宰って女性の気持ちを語らせたら右にでるものはいないと思います。女性よりも女性の心理を穿ってるというか。可憐だなあ。

    『美少女』 銭湯?で出会った美少女の裸体に釘付けになる太宰・・・ロリコンやばいよ

    『春の盗賊』 支離滅裂すぎ、一番やっつけ感ひどいww

    『兄たち』 文学好きな仲良し兄弟の話。3番目の兄が亡くなる瞬間まで粋紳士風であったのは、遺された兄弟を元気づけるためなのか・・・
    どうでもいいがこの短編読んでて“フキヤ・コウジ”なる挿絵画家の存在を初めて知った。高畠カショウとか大好きな私にはたまらない絵柄だった。

  • 明るい太宰、と言うと語弊があるかもしれないし、太宰らしい作品を好まれる方も多いかもしれないけれど、一度は読んで欲しい太宰の一面がこの作品集にはある。読んでいて思わず吹き出してしまうものや、頬が緩んでしまうものがここにはあって、彼の「道化」の真骨頂を感じずにはいられない。

  • 太宰治の「葉桜と魔笛」は
    生きること、死ぬことに対する悲しみが
    とても分かりやすく表現されている。
    読みやすい。つまり、伝わりやすい。

    そして優しい。痛々しいほど、優しい。
    優しさとは何か。
    優しさとは、こういう家族のことだ。
    姉も妹も父も、それぞれに優しい。


    家族愛の美しさは
    「新樹の言葉」にも溢れている。

    血のつながりではなく
    乳のつながりが描かれている。
    主人公が大人になってから
    乳母の子供らと出会う。
    この関係性がいい。

    そして「偉くなりたい」というストレートな前向きさがいい。

    作品全体に危うさがあるからこそ
    明るい気持ちが、いっそう輝きを増す。
    それから、この兄妹のために、という感情が強い点もまた
    男が持つ良さなのだろうと思う。

    偉くなりたい、と
    ○○のために。
    この2つがあれば
    やっぱり「いい男」になるらしい 笑
    いつの時代も、それは変わらないのかも。

    一見、この感情は、太宰らしくない気もするけれど
    逆に、太宰だからこそ、これは外さない、
    という感じかもしれない 笑

  • 「懶惰の歌留多」「春の盗賊」「俗天使」などを読んで、何かに似ているなあ?なんだったっけ?としばらく考えたのち、あぁ談志の落語だ!と思い出した。枕がやたらと長いの。
    太宰も落語好きで影響を受けているらしく、また談志師匠も太宰が好きだったとか。

    だいたい同時期に書かれた「走れメロス」(新潮文庫)の短編を表ベストだとすれば、この「新樹の言葉」はシングルのB面集といったところか。他の作品を読んで面白い、太宰は好きだなと感じた人は「新樹の言葉」は面白いと思う。初めて読む人は「走れメロス」をどうぞ、という感じ。

    安定期に向かう、当時の太宰の苦悩が長い枕の部分に吐露されている。ここがいちばん面白い。

    苦悩はしているが暗いわけではなく、「新樹の言葉」「愛と美について」など心温まる家族愛の話や、「花燭」「八十八夜」など不器用な主人公のラブストーリー、女性とのふれあいを描いた話も。「懶惰の歌留多」はあいうえお作文でハライチみたいに太宰がノリボケし続ける。バラエティに富んでいて、太宰好きには欠かせない一冊。

    落語…落伍…人間失格…とは些か早計か。お後がよろしいようで。

  • 表題作、「老ハイデルベルヒ」「誰も知らぬ」あたりの佳作に、作品としては破綻の様相ながらも作者の葛藤が垣間見える一冊。この本とは関係ないけど、途中で気になって「黄金風景」を再読。何度読んでも素晴らしい。

  • 太宰が精神病院を退院し再起をはかろうとしていた頃の作品集。
    今は太宰を読む時期ではなかったのか、あまり心に響かなかった。
    1つ1つの短編のタイトルを見ても中身を思い出せない。
    兄弟愛を描いた作品が多かった。

  • さちよってどんな女性なんだろう・・?
    太宰治の作品はついていけないところがよくあるけど、個人的に好きな作家です。

  • 「火の鳥」が衝撃的だった。
     三人称で、視点移動をしながら綴られる、女優高野幸代についての話。太宰には珍しい構成だったと思う。
     構成だけじゃなくて、ひとも、太宰にしてはつかみにくいというか、性格の飛躍がある気がして、そこから太宰が何を表現したかったのか、本当に気になる。
     物語が助七の思惑通り進む気もするし、あれだけ意味深に絡んでおいてその辺に転がってるだけみたいなのもらしい気がする。まったく予想できない。火の鳥ってタイトルを見ると、助七の思惑通り進んだと見せかけて、みたいになる気もするけど、やっぱりわからない。
     題材たる高野幸代についても、「男は弱いもの」「陰から支えて、支えたことに気づかれないでいい気分にしてあげたい」みたいな考え方を持ってるのに、舞台で脚光を浴びて、しかもその事を自分自身醜いと感じてる。それで自分を軽蔑してくれた人に答えを求めたりする。高須と幸代の対話が見たかった。
     三木さんも、人づてのこととはいえ、「君が評価されるのは君がうまいからでなく、周囲が下手だからだ」とか言っちゃって、幸代がそれをどう処理するのか気になる。
     もうとにかく未完なのが惜しまれる。箇条書きでも続きを見せて欲しかったです本当に。

     それ以外だと、「愛と美について」でろまん燈籠の五人兄弟に会えてうれしかったり、「女生徒」の主人公が書いた体のお手紙が読めてうれしかったりで、にこりとしたくなった。
     あと「懶惰の歌留多」も結構好き。私は物語を通さない太宰自身の言葉をあまり楽しめないんだけど、懶惰の歌留多は、創作と愚痴が交互で、最後までさらりと読めて、怠ける太宰のおまおれ状態に楽しく笑えた。

  • 火の鳥だけ読む。
    iPhoneアプリのi文庫で。

    主人公かと思ってた人がいきなり死んだのであれ?と思ったけどあぁこっちが主人公ですかって感じでスタートでした。

    そして未完である。
    グッド・バイと同様、太宰治は鬼門だ。

    さくさく読める文学作品ですが、
    そもそも純文学とはいったいなんなのかと思わずにはいられない感じです。
    純文学はもっと他のことを指すのかもしれない。

  • 再読。始めに手に取った時は『愛と美について』の兄弟に癒されました。仲良し兄弟かわいいです。他にもお気に入りの作品がたくさんある短編集です。

  • 言葉ひとつひとつを感じて読んでいたら、すごく時間がかかりました。とにかく、火の鳥が好きです。そして、やっぱり太宰が好きです。

  • 「愛と美について」「花燭」「I can speak 」が個人的に面白いと感じました。「愛と美について」は続編として「ろまん燈籠」という作品があるので、そちらもぜひ読んでみたいところ。

  • 山梨などを舞台とした作品です。

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