モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101007045

感想・レビュー・書評

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  • 筆者はモーツァルトのtristesseの典型例としてト短調クインテットK.516第1楽章Allegroの主題を提示(楽譜で)し、「モーツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない」と語る。人口に膾炙したくだりだが、我々はここに、天才批評家、小林秀雄を発見する。そして批評という行為が、まさしく創作に他ならないことをも同時に知るのである。本書にはモーツァルトをこよなく愛した小林の慧眼を随所に見ることができる。例えば、ワーグナーのモーツァルトの主題論を受けて、それが驚くほどに短いものであることを指摘するなど。

  • 初めて小林秀雄読んだけど、この本を読む限りでは文章が柔らかい印象があって、バランスが良いエッセイを読んでる感じがした!
    それでも個人的に、小林秀雄が語っていることへの理解が漠然としちゃってるのが悔しいなぁ・・・!

  • 2冊あり

  • かつてないほど時間を掛けて、ようやく読了。
    高校のとき以来ですが、何と言うか、前より理解できた分、「あ、この考え方合わないな」という部分が出てきて、残念でした。
    昔は、文句なしに感動できたのですが…
    ただ、本は人が書いている以上、「その人自身」でもあり、現実、合わない人や合わない所ってあるものなので、そういうのもあって当然。
    少なくとも、読まないのはもったいないです。

  • 「評論の神様」小林秀雄の評論8編を収録。有名な『無常といふこと』は短く平易な文章で書かれているため、受験生にもオススメ。

  • 星三つというのはきちんとした評価ではない。
    時系列に沿って読もうと『Xへの手紙〜』から手に取ったのだが、さっぱりで終わった(笑)

    で、こちらは何とか読みきれたと言うに相応しい。
    共感を得られたならば『人間の建設』を読んで欲しい。こちらは対談集なのに、シンプルな筋が通っていて「面白い」まで達することができるはず。

    芸術という括りで文学に留まらず音楽、絵画、骨董、建築……幅広く伸びる腕が羨ましい。

    とにかく、頭を使う。言葉としては分かるけれど、相手を理解したことにならなかった。
    小林秀雄の批評のスタンスから言えば、舞台にも立っていないことになるのだろう。

    それは時代の相違と言ってしまえば簡単だ、けれどそこまでの苦悩や孤独を得ない人間には分かっても分からない何かが在るように思う。

    モーツァルトの感じた美と、それを受容する肉体の哀しさ・限界がそれだ。

    その摩擦に耐えられず、人間は破壊をもたらすのならば、我々はそうしたものを捨てなければ安全には生きていけない。

    けれどまた憧れ、崇拝する自然な心も存在する。

    大きな意味では宗教を失った現代日本において、解釈のない美を我々は受容し易くなったのかもしれない。

    けれどまた、受容するだけで意味を為さない鈍さにも囚われてしまっているのではないか。
    アンテナを磨く為の一冊になった。

  • 「近代評論の神様」と呼ばれる筆者の戦中〜戦後にかけての評論集。
    天才の息吹を確実に感じる怒涛の文章。
    高校の現代文の先生が猛烈に薦めてたのにも納得。
    この一冊によって評論という行為に無限の可能性を切り拓いてくれた功績は大きい。
    ただ『西行』・『実朝』・『平家物語』などの所謂中世日本史ものはある程度突っ込んだ背景知識が無いと難解か。
    個人的に特に好きなのは『蘇我馬子の墓』と『偶像崇拝』。

  • 2-2 音楽論

  • (2001.07.13読了)(2001.04.13購入)
    *解説目録より*
    批評美学をもって当代随一とされる小林秀雄氏の絶唱「モオツァルト」、自らの宿命のかなしい主調音を奏でる「無常という事」「実朝」「平家物語」、微妙な真剣勝負も世界の機微を語る「骨董」ほか、「当麻」「徒然草」「西行」「蘇我馬子の墓」「鉄斎」「光悦と宗達」「雪舟」「偶像崇拝」「真贋」を収録。

    ☆小林秀雄さんの本(既読)
    「ドストエフスキイの生活」小林秀雄著、角川文庫、1955.08.20
    「ゴッホの手紙」小林秀雄著、角川文庫、1957.10.30
    「モオツァルト」小林秀雄著、角川文庫、1959.08.10
    「対話 人間の建設」岡潔・小林秀雄著、新潮社、1965.10.20
    「近代絵画」小林秀雄著、新潮文庫、1968.11.30
    「考えるヒント」小林秀雄著、文春文庫、1974.06.25
    「考えるヒント2」小林秀雄著、文芸春秋、1974.12.10

  •  昭和20年前後に書かれた文章なのだが、私にとってはもはや古文に近い感覚があるのはちょっとショックだった。しかも、タイトルのモーツァルトのところはいいとしても、西行、実朝、平家物語のあたりになると、本当の古文の引用が目白押しで、自分でも恐らく半分も内容を理解できてないと思われるまま、何とか最後までたどり着いたという感じである。(そんなこともあって、7月10日に「決断力」を読み終わってから、こんなに日数が過ぎてしまった。)

     それにしても、内容は深い。「小林氏の批評美学の集大成」「批評という形式にひそむあらゆる可能性が、氏の肉声に触れて最高の楽音を発しながら響き合っていた」という解説もあるが、音楽から歴史から絵や骨董品まで、その守備範囲の広さには脱帽である。私は単にモーツァルトを読みたかっただけなのだが、ちょっと得をした気分である。

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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