硝子戸の中 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010151

感想・レビュー・書評

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  • 夏目漱石の本は、何故か年末年始に読みたくなる。
    私的には、ちょっとフライング気味に読んでしまった随筆。
    おそらく時代だと思うけど、ゆっくりした時間が流れている。
    微笑ましく笑えるほのぼの話が多くあって、刺激の多い現代モノに疲れたときに読みたい。

  • 漱石のエッセイ。なんか物事の捉え方に共感した。なんだ漱石も一緒だったのか。なんて。

  • つれづれなるまゝに、日くらし、硯(スズリ)にむかひて、心に移りゆくよし なし事(ゴト)を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ、とは徒然草の書き出しからだが、本書もまさにそんな感じ。
    ただ、ありふれた日常生活の中に隠された静かで深い洞察が漱石の文体で表現されているところに本書の意義がある。

    個人的には6・7章の女と漱石の話が大好きで、これだけで5つ星にしてもいいと思う。

  • 74点。第一次世界大戦開戦から一年が経った大正四年。著者は『こころ』を発表した後、四度目の胃潰瘍で病臥していた。亡くなる一年前である。終日硝子戸の中に坐し、頭の動くまま静かに人生と社会を語る随想集。
    原稿を読むことについて書いた11章がいい。著者の実直な人柄、教育者としての人格がうかがえる。
    次に発表する小説ではもっと自分に切り込んだこと書くからな、と次作『道草』の予告編としても読める。

  • 平成24年2月29日読了。

  • 大好きな石井桃子さんがお気に入りだったと聞いて、
    買ってあった本。

    気に入ったところを書き出していたら
    全部まる写しで写本になってしまいそうだ。

    私が幼少のみぎりに、
    家庭の方針で、夏休みにはほとんど毎日
    学校のプールへ通っていた。

    夏の日の午後、一人の帰り道、
    くたくたになって、プールの水で冷えた体から
    魂のようなものが肉体を超えて広がって
    日差しにふかふかとあたためられた時の、
    この上なく幸せな感覚、と言うのがあった。

    この感覚は自分だけのものとして一人占めしたい、
    また人には上手く伝えられないと思っていた、のだが。

    この本の中で
    「…春の日の午過などに、私はよく恍惚(うっとり)とした魂を、
    麗らかな光に包みながら…」とあり、

    「わ!あの『何とも言えない』はずの気持ちが
    間違いなく言い表わされている!」と驚嘆。

    生真面目な美男子の恋の話、
    少年時代に出会った御作という芸者の話、
    講演会の話、とその後日談。
    本当のことを教えてくれた女中の話、

    どれもこれもぴったりの言葉が見事に組み合わさり、繊細。

    美貌の大塚楠緒さんと、その死。
    入院先の病院でその報を聞き、手向けに咏んだ一句
    「ある程の菊投げ入れよ棺の中」

  • 黒猫の話が好き。

  • 漱石が身近になる1冊。教科書で出会った、東京帝大出の荘厳な文豪の姿はそこにはなく、落語が好きで江戸庶民文化のまっただ中で育ったバイリンガル、という姿が浮かび上がってくる。

    一番心に残ったのは「書いたものを見て欲しい」という女性に対して漱石が言う言葉。教わる方は自分をさらけ出しオープンであるべき、と彼は言う。「その代り、私のほうでもこの私というものを隠は致しません。有のままを曝け出すより外に、あなたを教える途はないのです」

    確かに、そのとおり。しかし、漱石の言う通りに自分をさらけ出して人を教えている教師が、今どれだけいるだろうか、と思うと、自分は今まで教えるふりをしている人から学ぶふりをしてきただけなのかもしれないと、思いに沈んだりもするのであった。

  • 高校時代の教科書。
    新聞にコラムとして載せていたものをまとめたものらしい。(授業の記憶)
    晩年の漱石の穏やかな時間の流れを感じさせてくれる。
    当時の人たちはどんな想いで読んでいたのかな?

  • 漱石の身の回りに起きる事を徒然なるままに綴った記。

    「今の私は馬鹿で人に騙されるか、或は疑い深くて人を容れる事ができないか、この両方だけしかない様な気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯続くとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう。」(p97-98)

    人間の狭間で揺れ動く漱石が垣間見えた

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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