守宮薄緑 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101013213

感想・レビュー・書評

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  • 1999年刊の古い短編集。

    8編を収めていて、かなり玉石混交だ。
    冒頭の「崩漏」が圧倒的に素晴らしい。女を喰い物にして生きているプロのヒモと、少々オツムが弱いが、美しくピュアな風俗嬢の物語。
    利用する目的で女に近づいたヒモの心理が少しずつ変化していき、最後は愛に転ずるまでの展開の見事さよ。

    他の7編はあまり印象に残らず。
    とくに「犬の仕組」という一編はひどい手抜きだと思った。

  • エログロに泣きそうになりながら読み切った
    全く関わったことのない世界の話、ついていけなくなりそうになりつつも読めたのは描写のおかげか

    本人目線の精神錯乱についての話というのはどうしても怖い

  • 短編集。
    自堕落で刹那的な話が辛い。

  • 崩漏・・ヒモの相手として使うために街中で出会った覚醒剤中毒者の女を優しく接する。最高の名器を持つが、娼婦としてはもろすぎるために海外に売り飛ばそうと「このままじゃ自分は借金のためにこの埋立地に埋められてしまう」と言い女を騙そうとする。素直に信じ、顎にシワを浮かべてなく女の泣き顔に妹と重なってしまい、愛情を抱いていることに確信し、二人で過ごす道を考える。

    守宮薄緑・・沖縄に出張した作家がソープや女子高生相手に性的な日々を過ごす。

    核・・筆を休めた作家がある日、ブラッドバウンドを連れて歩く少女と出会い、小説の書き方を教えて欲しいと言われたことを口実に、母娘と関係を結ぶ。二人のマゾヒストに自信はマゾにはなれないと考え、奉仕する形で安全ピンを突き立てた娘にサディストになる。

    裂罅・・友人とチンピラじみた日々を過ごしていると、堕胎費用を返すために売春を始めようとしていた女と出会う。父に摘便され、16回も堕胎させられても、なお父が可哀想と言い家に戻る女。主人公は情はあっても、引き戻すことはできなかった。

    穴があいている・・工場のバイトをする青年が新入りの自称マンション経営のヤクザの男と交流を少しずつ深め合う。
    強気な新人にずる賢いと言われながらも、それなりに親しげにするが、相手は10万円を借用したまま行方不明。新人の語ったことは妻子がいること以外は全て嘘。ボロアパートにすみ、階段から蹴り落とされ、全財産は千円未満だと言われても、主人公は、残りの清算だけを数える。

    犬の仕組み・・精神錯乱状態で外に出歩くも、家に戻れば恐怖である息子が待っている。

    爛斑・・厳しい教育を自分に施した父の死と対面。


    薬・セックス・暴力・死。
    薀蓄と語彙力をふんだんに詰め込んだ、花村萬月節が今作でも顕著でした。
    どれも正直、気分の悪い陰気なものが多いですが、マイナーなものを扱っている故の濃厚さは感じられるため、胸糞悪い部類であっても、何故だかページはめくれてしまいます。
    流石に「核」の安全ピンのあたりは、きつかったです。
    他の作品の「色」とテーマが濃厚すぎるために、話に類似性を感じるため、もう花村萬月先生の作品はこれ以上読むことはなさそうです。

  • なんとなく表紙とタイトルに惹かれて読んだけど・・・。

  • 硬質な文体の短編集である。『斕斑』はいい。あとがき読むと丁寧に書きつづられていたことがわかって、納得した。

  • 【本の内容】
    那覇は、熱気に覆われている。

    11月の倦怠に抱かれ、作家は街を流れた。

    女たちは艶然と微笑みかける。

    道は、“社交街”にゆるやかに続いている。

    濃密な沖縄の闇を切り取る、表題作。

    世界からズレていた、美しい女。

    女を喰いものにして生きる男。

    ふたりのスリリングな関係―「崩漏」。

    父の死の輪郭を、わずかな枚数で浮かび上がらせた―「〓斑」。

    ココロとカラダを震わせる、小説の群れ。

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • どうしてブクログの「状況」には「挫折した」がないんだろう。好みの問題だとは思うが、不健康すぎてついていけず2話目の途中でダウン。

  • 俗っぽく言えばちょっとHな話が多いね。
    正直あんまり知らない裏の世界の事を書いているので、ある意味勉強になったかもしれない。シャブだの娼婦だの…。
    知らない世界だけに、興味深く読めた本だったが、あまりにもかけ離れた存在にも思えて親近感が湧かなかった。
    でも、もう1回読んでみても良いと思えたので、一応の星3つ。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。98年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『ブルース』『笑う山崎』『二進法の犬』「武蔵」シリーズ、『浄夜』『ワルツ』『裂』『弾正星』『信長私記』『太閤私記』『対になる人』など。

「2021年 『夜半獣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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