夕映え天使 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1932
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101019260

作品紹介・あらすじ

東京の片隅で、中年店主が老いた父親を抱えながらほそぼそとやっている中華料理屋「昭和軒」。そこへ、住み込みで働きたいと、わけありげな女性があらわれ…「夕映え天使」。定年を目前に控え、三陸へひとり旅に出た警官。漁師町で寒さしのぎと喫茶店へ入るが、目の前で珈琲を淹れている男は、交番の手配書で見慣れたあの…「琥珀」。人生の喜怒哀楽が、心に沁みいる六篇。

感想・レビュー・書評

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  • 帯には「泣かせの浅田次郎史上、最多涙小説」とありましたが、自分の涙腺のポイントとは違っているようで、まったく涙は出ませんでした(笑)
    とはいうものの人生の哀愁を感じる物語

    6編からなる短編小説
    ■夕映え天使
    ■切符
    ■特別な一日
    ■琥珀
    ■丘の上の白い家
    ■樹海の人

    なんとも、驚いたのがSFチックな
    「特別な一日」
    退職を3か月繰り上げた高橋の、その退職の日の物語かと思いきや、最後はびっくり。

    また、
    「丘の上の白い家」
    はブラックな感じです。
    丘の上の白い家の少女に親友の清田を紹介したところ、しばらくして二人は心中したとのこと。
    その死の真相は?
    遺書のメッセージがブラック..

    「琥珀」
    では定年間際の老刑事が旅先で、見つけた時効寸前の放火殺人犯。
    老刑事のとった決断は?

    どの物語も、哀愁を感じるものばかりです。
    THE・昭和の物語

  • 物悲しく…、不可解な…、物語にビックリしています。
    手に取った時は、天使というタイトルに。
    何か、心浮き立つ物語を期待したのですが。
    まったく逆でした(*^_^*)

    【夕映え天使】
    鈴木純子40才ぐらいは、東京で親子2人でやっているうらぶれたラーメン屋に突然「住み込みで雇っていただけませんか」といって現れた。その日から薹のたった看板娘として働きだしたが。半年後、突然にいなくなった。前日に親父が、息子50才の嫁にと懇願されて純子は居場所がなくなったのか。そして軽井沢警察から身元不明の自殺体がと電話がかかってくる…行くと。そこに同じ思いの大阪のうどん屋の主人が…。自分の居場所を探し続けた純子は…。もの悲しく、哀れです。

    【切符】
    1964年の東京オリンピックの年。広志は、間借り人の24、5の色白の美しい八千代さんと一緒に銭湯の女風呂に入った思いを胸に・・・。八代子さんが男と別れて広志の祖父の家から引っ越していく、その情景が涙を誘う終わり方です。

    【特別な一日】
    37年間務めた中堅企業を高橋は、3ヶ月早く退職日と定めた。きょう一緒に居たいという、12年前に別れた恋人の美しい鳥居秘書課長の申し出を拒み。同期入社の若月社長になぜ俺は長く営業部長に留め置かれたのかと怒り。妻の待つ家に向かう…。ここまでくると退職を機に離婚と思って読んでいると。突然、玉音放送が、超巨大彗星が地球に今日衝突すると…。ええぇぇ…、どうなっているのだと、叫んでいます。。。

    【琥珀】
    定年を前にして有給休暇を消化するために京都から三陸に一人できた刑事が、たまたま入った喫茶店で時効まで1週間、15年前に放火殺人をおこして逃げた犯人と遭遇する。だが、刑事はこの喜びを話す妻は、他の男と結婚すると、いま嫁に行った一人娘から電話があった。孤独な刑事は…犯人をそのままにして…。さびしさがひしひしと伝わって来ます。

    【丘の上の白い家】
    昔は栄えた港町であったが、いまはすたれた町から見上げる丘の上に大きな白い家が建つています。そこの御令嬢の百合様と、町の不良の高校生の小沢が知りあい。小沢は、自分には似合わないと思い親友で真面目な清田を紹介します。しばらくして清田が百合様と自殺をしたと。小沢宛の百合様の遺書には、私は、自殺相手を探していたと…本当はあなたと死にたかった。あなたは運がよいですねと…。百合様は、生き残りました。なんともやるせないです。

    【樹海の人】
    著者浅田次郎が、大学へ行かずに2年間体験した自衛隊の訓練の中で富士の樹海の思いを語る。浅田は、この中で市ヶ谷駐屯地内で小説家が自殺したと書いたときに、これは同じ時代を生きたものではないか……と思った。そして三島由紀夫に影響されて自衛隊に入隊したが……除隊した。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    夕映え天使
    2019.11発行。字の大きさは…大活字。2022.07.04~07.09音読で読了。★★★☆☆
    夕映え天使、切符、特別な一日、琥珀、丘の上の白い家、樹海の人、の短編6話。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【音読】
    2022年7月4日から7月9日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2011年7月に新潮文庫から発行された「夕映え天使」です。本の登録は、新潮文庫で行います。社会福祉法人埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 短編集ではあるが、浅田次郎さんらしく、人間の機微が描かれており、持ち味が活かされている。時代モノとはまた一味違った良さがある。

  • 哀愁漂う6つの短編。この中では「夕映え天使」が1番好き。惚れていたことに気付くも、どうにもならない無力感。

  • 短編6編。現状、幸せとは思えない主人公たちが、恵まれない現状から一歩先に進もうとするストーリー。
    ほんのり温かかったり、固い決意だったり、さまざまだけど、人はまだまだ頑張れるんだな。っていう勇気をもらえた気がする。

    人生っていい事よりも悪い事の方が多いらしい。でも悪い事も考えようによってはいい事に向かうステップにもなりうるのかも。

  • "哀愁"って言葉がピッタリな短編集。

    読後のじんわりとくる余韻に浸って、短編という短さで書かれてないあれこれを考えた。

    初浅田次郎!他も読んでみたい!

  • 割とサクッと読める短編集
    私は表題作の夕映え天使が一番面白かったです

  • 読み出してすぐに前に読んだことがあると気付いたが、物語に引きずり込まれるように積読することになった。
    浅田次郎の小説は、知識と調査に裏打ちされて長編も短編も感嘆符付きの素晴らしいものが多いが、特に切ない短編を書かせたら右に出る作家はいないのではと思う。本書もどの編も胸が締め付けられるような切なさが残る。一方、時代背景やシチュエーションがかなりバラエティに富んでおり、SF ショートショートような話もあって面白い。

  • 「最多涙小説!」

    うーむ。
    泣けない。。。

    時代背景の古さや、
    登場人物の年齢などから、
    感情移入できない。

    この本だけでなく、
    浅田次郎が合わないのかも。

  • 短編集。
    昔読んだことがあったけど、本屋でさらっと流し読み。浅田次郎さんにしては、なんだか薄味だったかな。

  • 定年間際や初老男性が主とする短編集より
    あまり人生上手くいっていなさそうな人達の、感情が伝わってくる。どの話もあまり幸せな展開には感じられなかったけど、各々の気持ちが迫ってきました。

    夕映え天使
    救ってやれず、本当は惚れていたかもしれないと最後に気付いた感情。それを共有しつつも僅かに反発心を感じる関西のうどん屋。
    一緒にいて幸せだった時間がもう戻らないのが、悲しいが諦めてしまっている感もあり、切ない。

    特別な一日
    定年の日を特別な日にしないと決めて臨んだその日、普通に過ごそうとするのだが、突然の玉音放送。
    ?戦時の話だったかな、いやいや違うよ、と少し話に追い付けずページを戻す。
    特別な日はこの人だけではなかった。急展開だけども周囲のひとも日常を普通に過ごしている。
    最後に夫婦でこれから人生よりも長い一瞬を過ごす、という感覚は破滅的に感じるも、幸せなのかもしれない。

  • なんとも切ない物語である。六篇の短編のうちで『琥珀』と『夕映え天使』に、ノスタルジックな念と哀切の想いに駆られた。

  • 浅田次郎の短編集。
    面白かったのは「夕映え天使」と「琥珀」でした。

    「夕映え天使」
    中年店主がほそぼそとやっている中華料理屋「昭和軒」。そこへ、住み込みで働きたいと女性がやってきて…
    短い時間を共に過ごす。

    「琥珀」
    定年を目前に控え、三陸へひとり旅に出た警官。喫茶店へ入った際に見つけた店主は、時効まであと少しの殺人犯…。
    ただし、大手柄を挙げたとしても、報告できる妻もなく。

    「本当ならこの秘密をわかちあうであろうたった一人の連れ合いを失ってしまったのだと、米田はようやく気づいた」

    歳をとること。人を愛すること。悲しみを描いた味わい深い短編集です。

  • 一番最後の「樹海の人」を読んだとき、村上春樹さんの、題名は「鏡」だったと思う、短編を思い出した。夜の校舎だったかで、壁の鏡に自分がうつっていたが、その表情がものすごい憎しみの表情で、怖くなって持っていたバットで鏡を割ったが、後でその場所に行ってみたら鏡などなかった。「樹海の人」は未来の自分が世をはかなんで樹海で自殺しようとするのに出くわしたと信じるようになった。自分は何のために生きるのか、自分とは何者なのか、自分自身の存在意義を考えさせられる。

  • 落ち着いた本が読みたくて、帯に「泣かせの浅田次郎史上、最多涙小説」とあったので手に取った。

    落ち着いた文章で、どの短編も渋く昭和な情景が目に浮かび、気持ちのアップダウンもなく、まさに求めていたもの。
    解説の言葉を引用させてもらうと、著者の波瀾万丈の人生や男らしく生きる信念をもとに書かれた、人生のしみじみとした感情を引き出される内容だった。

  • 「特別な一日」が一番よかった。定年最後の日と思いきや、実は…。いま読むのと、10年後に読み返すのでは、さらに感想が変わるんだろうなぁ。

  • 浅田さんの短編はいい。画家の書くラフなデッサンが、写真よりも雄弁なように、書かれていないはずのものが、行間から浮かび上がってくる。
    巻末の解説から、浅田さんの軌跡を知る。その経験から拾い上げたかけらに何かを足し、何かを引き、特別な角度から光を当てて、作品を編んでらっしゃるのか。
    とりわけ、昭和の時代の作品から立ち上る哀歓は、特別の味わい。

  •  日常で起こり得そうな話からSFっぽい話まで、人間って少し面白いなと思える作品集。人生のほんの一瞬を切り取った印象の作品が多い。
     個人的には特に3話目「特別な一日」と4話目「琥珀」がおススメ。「特別な一日」では、拘り過ぎる主人公が滑稽に映るが、みんな何かしらこうした感覚は持っているだろうなと感じてしまう。また「琥珀」は、偶然にも自分が探し求めていたものが全く違う瞬間・場所に現れた時の苦悩の様子が描かれており、誰しもこうしたエゴをもって生活しているのだなと妙に納得してしまう。

  • 短編集。スキマ時間に都度都度読むのに最適。
    時代は戦後復興期〜バブル後の不況期。心温まる作品ばかりです。フィクションですが、描かれた時代の背景を知れるのもためになって面白いです。
    印象に残ったのは、両親の離婚により、お祖父ちゃんと二人暮らしする少年の物語。

  • いままでのベスト10を作ろうと考えて、ふと思い浮かんだのがいつぞやに読んだ「琥珀」。あとの短編は覚えてないけど、これは深く心に残っている。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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