赤猫異聞 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101019277

作品紹介・あらすじ

時は、明治元年暮。火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たち――博打打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」の言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には……。幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。

感想・レビュー・書評

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  • 聞き語りのストーリーは、珍妃の井戸など、浅田次郎さんで採られている展開。それぞれの人から見た様子や思いがわかり、それを他者が述べたものとつなぎ合わせながら、全体を理解したり感じたりするのは面白い。赤猫とは、江戸の火事のこと。明治になってもそのまま伝馬町にあった牢屋から火事で召し放しとなった3人の男女が召し放しとなった後の行動や気持ちの変化を述べていく。

  • 浅田節全開。
    長編が多い浅田さんですが、ほどほどの厚みの一冊できれいにまとまっていて完成度が高いなと思いました。

    明治元年、火の手の迫る牢屋敷から解き放ちとなった罪人たち。
    中でも重罪人とされている三人は、全員戻れば無罪放免、一人でも戻らなければ戻った者も死罪、一人も戻らなければ役人が代わりに腹を切る。

    関係者への取材という形は浅田作品ではお馴染みの手法で、スッと物語に入れます。
    ちょっと地味だけど、ラストはエンタメとしての驚きも用意されている。
    二時間の映画にちょうど良さそう。

    「法は民の父母なり」

  •  おお、これはアタリでした……! ストーリー云々の前に、牢屋敷のシステムや解き放ちのことなど、大層詳しく解説されていて、まずそこに感心するやら感動するやら。
     登場人物各々の視点で語られる解き放ちの顛末が、ゆったりとしていながら深みがあって良かったです。
     序盤ではさほど重要視されていない丸山小兵衛が、語りが進むにつれて存在感を増していくので、最後の語り手が彼なのだろうと見当をつけていましたが……ううむ、こう来たか。
     誰もの生き様も、それぞれに見事です。

  • 明治元年、御一新直後の東京で大火が出た/ 小伝馬町の牢屋敷は囚人を解き放ち、消火後の帰参を待つ/ そこにおいそれと放てない事情を抱えた三人/ 親分に売られ身代わりに収監された深川一帯の大博徒、大政奉還後も官軍を斬って回った辻斬りの旗本次男、奉行所の悪事を知り尽くした夜鷹の元締め/ 珍妃の井戸よろしく浅田次郎らしいインタビュー形式/ 徐々に明らかになっていく火事のあと幾晩かの出来事/ めちゃくちゃ面白いし、東京に住むものとして東東京の当時の状況が非常に興味深い/ 合羽橋が新堀川の暗渠だなんて知らなかったし、浅草寺の東側が火除け地で飲食店は勝手に出されてあたりが繁華になったなんてのも知らなかった/ まったくもって個人的にだが、夜鷹の姉さんの証言を最後に持ってきた方が良いのではないか/ 最初にあるから以後語られる事件の犯人が分かってしまう/ 

  • この人の作品てほんとに外れないなあ。面白かったです。
    ーーーーー
    時は、明治元年暮。火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たち──博奕打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」との言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には……。幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。

  • 死罪を含む重い刑を申し渡された罪人3人が、「赤猫」という逃走の絶好の機会を得ながら、紆余曲折ありはするものの逃げずに指定の刻限までに戻るという身を捨てた義侠心や義理人情が心を熱くする。 一方で彼らの罪の源となった恨みを一身に背負い、弱きを助け強きを挫くごとき牢役人に心を強く揺さぶられた。 浅田さんに、また泣かされちゃった。この本も再読本だなぁ〜。(o^^o)v

  • 久しぶりに読み直しました。
    昔読んだ時より、お仙の「こんな命の瀬戸際に〜やさしく労ってくれる男達を見せてくれた」がなんか沁みた
    今まで別嬪が度を過ぎたばかりに被ってきた仕打ちやそんな中どんな気持ちで生き抜いてきたのかを、少し世の中が見えた今だからこそ想像してしまったからかも(十人並みの自分では、美人がゆえに辛い目に遭わされることもあるなんて若い頃は気づけなかったので)
    中尾、お仙、繁松、七之丞と来てページ数的にも最後の語り手だな、和尚さんでこの歳ならあの人か、無事で良かった と思いつつ読み進めての杉浦かー!!
    そして杉浦の口から語られる丸山…正直、個人的に浅田次郎作品でよくある度の過ぎた献身的なのがちょっと苦手ではあるけど、まぁそうなったか…という感じでした
    丸山の思いの分三人には幸せになってほしいという気持ちと、いや丸山も普通に生きてて欲しかったわという気持ち 杉浦にとんでもないものを背負わせていったな丸山

  • 火事と喧嘩は江戸の花、と言われたのは昔。
    時は明治。とはいえ最後の将軍はとうに大政奉還されているのに、新政府の機能は整わないまま、何もかも以前と変わらぬまま物事が動いていた宙ぶらりんな時代の話。
    牢人を収監する牢屋敷も多分に漏れず、急な沙汰で一人の罪人が今まさに斬首されようというその時、遠くで半鐘が鳴り響いた。
    すぐさま執行は取りやめ、解き放ちの相談が始まる。
    その昔、火事が出ると、罪人といえども牢内で焼け死ぬのは忍びないと、一時解き放ち、という決まりがあり、鎮火の後は決められた場所に必ず戻ることとして、全員解放された。戻れば一段階、罪の軽減、戻らなければ捜して死刑。
    まぁ今考えればずいぶんとのんびりした話であるが、当時はほとんどが言いつけ通りに戻ったというのだ。
    情けには情けで答えるということか。
    さて、この牢屋敷には先ほど刑が取りやめになった者の他に、後二人、重罪人が収監されており、この三人の処置を巡り役人たちの議論が繰り広げられる。
    結果、いくつかの条件付きで異例の解き放ちとなった。
    三人三様事情を抱え、目的を果たすべく向かった先には・・・何とも奇怪な事態が待ち受けていた。
    その謎解きは、後年関係者に対する聞き取り調査で明らかにされる。
    驚愕の真実。
    理不尽な仕打ちを受けても、腐らず真っ当に過ごしていたらお天道様は見ていてくださる、ということか。
    ちょっとほろりとして、胸のすくミステリーだ。

  • これぞ浅田次郎の真骨頂。まるでその時代を生きていたかのような描写力。最後そうなるかー、ときっちり泣かせてくれる。泣かせの次郎、ここにあり!

  • 描寫明治初年的一場大火,牢獄釋放了囚犯。專斬官兵的旗本岩瀬七之丞、博弈打ち信州無宿繁松、夜鷹元締め白魚お仙三個人在被釋放時被告知,如果三個人都回來就無罪放免,一個人沒回來其他人就死罪,都沒人回來丸山小兵衛就得自己切腹。而作者以其最擅長的輪番上陣第一人稱口吻,在日後司法部的調查下一一訪問當事者,釐清當時的狀況。

    在這個懸疑的狀況下,繁松(日後為高島屋大老闆)、お仙(日後嫁給英國技師)都決定去復仇面對陷害自己的人,七之丞(日後入伍)也想要再去砍了官兵再說。在各自的陳述中慢慢釐清當日的狀況,也在其中看出悲天憫人的小兵衛的氣骨,為了讓這些人活下去,也替他們幹了髒活。最動人的部分是最後杉浦(和尚)的陳述,他和小兵衛其實是一起成長的不淨役人、莫逆之交,但和小兵衛的默契下兩人扮演與自己個性相左的角色,他也一路幫小兵衛成就其正義。

    淺田作品中不少幕方的悲劇英雄,這部作品雖是一部小品,然而非常具有作者個人的特色,適當的懸疑感,及幕方無名英雄的悲壯感,躍然紙上。是一部相當維持作者水準的作品。替這些人寫鎮魂歌,說不定也是他的終極關懷之一。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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