青年 (新潮文庫)

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著者 : 森鴎外
  • 新潮社 (1948年12月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101020020

青年 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 時は明治。田舎の裕福な家庭に育ったぼんぼんの小泉純一は、上京し小説家を志していた。東京では同郷の小説家や、美術学校に通うかつての同級生の瀬戸、文学を愛好する医学生の大村などとの交わりで次第に東京にも慣れ始めていたが、ある日、劇場で出会った美貌の若き「未亡人」坂井夫人に誘われるまま彼女の豪邸を訪問し、そこで「男」になるのであった・・・。
    この物語自体、特にどうという進展がなく、ひたすら主人公が出歩き交流してその時々に考えた様子を描いているだけなのですが、何ともいえなく味わい深い雰囲気を持った作品でした。主人公が訪れる小説家の部屋や、文学会の様子、同郷会の宴会、街々の風景など「明治」という空気を感じさせる「場」の雰囲気がとても良く、そして、そこに登場する遊び慣れた瀬戸や、西洋文学に造詣が深い大村、それに愛なく純一を虜にする坂井夫人といった様々な人物要素の対立軸で、田舎から出てきたぼんぼんの精神を涵養させていく様子はある意味「律儀」な展開の面白さであり、その鴎外特有の和洋をとりまぜた硬質な文体と相まって、なかなかコクのある香りを発散させていました。時折挿入される西洋文学や哲学の評論や引用なども、この雰囲気を盛り上げるのに一役も二役も買っています。
    最後は「精神」の修練と愛なき「性欲」の対立項という「青年」ならではの葛藤と展開になり、その衝動と知性に揺れる描写はなかなか面白いものでありましたが、それが「青年」の「文学」に昇華された様もみてみたかった。
    それにしても、借家の知人の令嬢で微妙に迫ってくる「お雪」といい、宴会後にこっそりと名刺を渡してきた16才の美しい芸者「おちゃら」といい、箱根旅館の女中の中でも一番美しい「お絹」の微妙な干渉といい、そして誘惑され速攻落とされた美貌の「坂井夫人」といい、「精神」を磨き「文学」を志す!なんていってられないほど羨ましい境遇ですね。(笑)

  • 美青年、小泉純一が可愛すぎる。
    小説家への溌剌とした思いとプライドから上京して上手く生活が回っていたのに。

    坂井夫人の妖艶さに当てられて、彷徨。
    そうだよね、恋って怖いもんだよね。
    未亡人なんぞに負けるものか、と意気込むのだけど、ぐるぐると負のスパイラル。
    近付きたい、でも、近付いてはいけない、でもでも、なんだ思わせぶりなその仕草はー!
    といったところです。

    読むべき所は様々あるのだけれど。
    純一の初々しい恋の駆け引き具合にきゅんときてしまう。男をも魅了してしまう笑顔ってどんなもんだー!

  • 文豪、森鴎外の作品『青年』。
    実家の私の本棚から取り出しました。
    中学生のころに買って読んだ本です。
    一度読んだ本を、今の私がもう一度読んだらいったい何を想うか。


    主人公の名前が「小泉純一」。
    なんとなく、今は政界を引退した元総理大臣のことを思い起こさせます。
    私が本を読むときはあまり主人公のイメージを固めないのですが、
    この作品に関しては、元総理大臣の息子(芸能人のほう)のイメージが定着してしまいました。
    しかも、純一は地方のお金持ちの家の人。
    勉強ばかりしてきた育ちのいい、しかも外見がとてもよいお坊ちゃま。
    親の援助で東京に出てきて、「本を書きます」といいながらも
    なかなか手をつけることをしない。
    医師を目指す友人と議論をたたかせたり、
    人脈を広げ見聞を広げようと、いろいろな会合に顔を出すが、
    たいした収穫も無い。
    あげく、偶然であった魅力たっぷりの未亡人にもてあそばれ、
    傷心の坊ちゃまは未亡人のもとから逃げ帰る。
    自分を傷つけた未亡人へのあてつけで、ようやく
    本の執筆を決意する。
    「今書いたら書けるかもしれない」

    なんなんだ、この男、「小泉純一」。
    これが「青年」なのか?
    こんなんでいいのか?小泉幸太郎!!

    解説を読むと、文学的な裏づけがしっかりしていて、
    また当時の世の中への風刺がちりばめられている作品
    とのことです。

    すみません、私が不勉強でした。


    結論:私、中学生のころにはこの作品読んでいないと思います。

  • 1910-11年発表。西欧語と和装用語が満載の教養小説だが、美男子がもてまくりつつ自分の性欲に悩むという面倒臭い話でもある。当時の高等遊民の風俗や、イプセン、メーテルリンク、ヴァイニンガーあたりの知的インパクトが推し量られる点が興味深い。
    「人形食い」という言い回しが出て来て、他でも見かけたような気もするが、面白いなあと思った。少し前なら面食い、今ならイケメン好きと呼ぶところだが、今も昔も特に女性の性向として特化されるのはどういうわけか。もっとも、本作ではあくまで、男性から見た女性の異常性欲という扱いなのに対して、イケメンはむしろ女性同士の隠語のような気がするので、それはそれで、時代の流れと言うべきか。
    それにしても、本作はブクログではISBN検索でしか引っかからないし、iPadでは「性欲」は助詞付きで変換できないし(あ、「助詞」もだ)、何とも暮らし辛い世であることよ。

  • 森鴎外2冊目はこの『青年』であり、これを選んだ理由はただ目に入ったからです^^ どれが有名な作品かもわかりませんよっと\(^o^)/ でも、そういう境遇で読んだものの、なかなか興味深いものでした。もちろん、時代や環境がまったく違うものの、私は主人公に共感するところが多々ありました。よくこのような青年の心を書くことができると、つくづく感心させられます。あ、私はまだ青年の心を持っていますよーヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

  •  「王子さまモノ」の典型だと思います。語り手の文や、主人公が読んでいる本の内容が、その後の小説の展開を示唆・風刺している場面が、度々ありました。女性の、感性・無意識の好みは、この小説の主人公の様な人が良いのでしょうか。語り手・主人公の日記、どちらも男性の視点ですが(語り手はおそらく)、しばしば女性の視点を経由しての語り手・主人公の視点で小説が書かれています。主人公はこの小説に登場するほとんどの女性に好意を寄せられています。主人公の社会を観る視点は、女性の視点・女性的な価値観を多く取り入れたモノだと思います。また、語り手は、作者の視点・価値観に近いと感じました(なんとなくですが)。人・モノを客観的に観ていると思います。そして、その視点が、かなり主人公の視点と近い位置に在ると思います。社会(主に男性社会)を風刺・批判する描写が多いです。語り手の客観的な視点と、主人公の女性の視点・女性的な価値観を多く取り入れた視点が交じり合って、それを喜劇的・戯画的に描写していると思います。

     この小説が書かれたのは、明治初年から約40年後です。この40年間に日本は「富国強兵政策」をある程度達成しています。戦後の1945年から約40年間に日本は「富国強経政策」をある程度達成しています。また、明治45年から約12年後に「関東大震災」が起きています。戦後45年の1990年から約21年後に「東日本大震災」が起きています。両方の地震の間に発達したモノの一つは、「原子力」の発見、それの応用、社会への活用だと思います。オルダス・ハクスリーが、「すばらしい新世界」の前書きに、「われわれが権力を分散し、応用科学を、人間を手段として使うためではなく、自由な諸個人からなる社会をつくるために利用する道を選ばないとすれば、与えられる選択肢は次のふたつだけだろう。」と書いていました。今まで読んできた本の類推ですが、そのうちの一つは、伊藤計劃さんの小説、「虐殺器官」の世界観と類似していると思います。もう一つは、同じ作者の「ハーモニー」の世界観と類似していると思います。女性が色々な意味で「自由」なのは、その社会の文化が発展している事の証明の様な気がしました。

     「ひとつは、ナショナリズムに凝り固まった軍事優先主義的、全体主義的な国々が、恐ろしい原子爆弾をみずからの基礎に据え、文明を破壊する世界(あるいは、戦争が限定的なものにとどまる場合は軍事優先主義が永続する世界)。もうひとつは、個々の国家を超越した全体主義の世界で、急速な科学技術の発達、とりわけ原子力革命から生じた社会的混乱をきっかけに現われ、効率性と安定性が追及される中で専制的福祉国家へと発達するユートピアだ。さあ{みなの衆、金を払って、好きなほうを取りなされ!}」

  • 章立て、人物造形の勉強にも。坂も沢山

  • 美しく若い青年純一の精神を描く1冊。
    心のうちを丹念に言葉にし、哲学的な観点からも自己を見つめていくが、まだまだ青く未熟な内面が揺れ動く。思想や考えは大人びているようで、生きることそのものについてはウブなあどけない少年のようでいる。

    またしばらく経ったら再読したい。

  • 青年の主人公の小泉純一。教養はあるが恋愛には今一歩踏み込めない。モヤモヤを綺麗にまとめている。しかし、ドイツ語やフランス語も所々散りばめられている。

  • 1996.1.2 読了

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