堕落論 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101024028

感想・レビュー・書評

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  • 短編だった。

    とくに『堕落論』は堕落について書きながら、いつのまにか生についてのことになってる!
    堕落とは堕落ではない。
    堕ちても尚生きよ、ということで、いったん堕ちきることでそこから先が開けてくる。
    だからたとえ堕落しても、醜くとも生きることを主張する。
    んー難しい。

    やっぱ文学だから、文章が難しくて何度か読まないと理解できないところもあるけど、意外とおもしろい。
    でもだから、読むのに時間がかかる。

  • 正直自分のいいまでの知識と、著者の知識の前提が違いすぎて面を食らったが、色々な視点を知ることができた。
    ちょこちょこ調べながら読むことで、全く知らなかった世界を知ることができた。
    いけないことにつながったからといって、その行動を禁止するのではなく、いけないことにつながらない工夫をして建て直すことが大事

  • 坂口安吾の歴史家をボロクソに言う当たりめっちゃ好き。あと太宰治の女は微妙だった、だから死んだとか容赦ない毒舌と分析に目からウロコだったし、わらった。戦争はどんなことがあっても良くない。でも繰り返す。その愚かさを人間は生き、人間は堕ちると表現するその語彙にいやはや恐れ入ったとなった。読んでいて胸が熱くなるのは戦後間もなく書かれたその熱量がそのまま伝わるからかな。でもよくこれ発行出来たと言うほど政治と天皇制を批判しててスカッとした。今の時代にも坂口安吾が必要だよ。

  • 23/11

  • 今の日本をみて欲しいと思ってしまうお話し

  • 生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか(堕落論・p.84)

    だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう(p.85)

    堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない(p.86)

    堕落自体は悪いことにきまっているが、モトデをかけずにホンモノをつかみだすことはできない。表面の綺麗ごとで真実の代償を求めることは無理であり、(・・・)先ず地獄の門をくぐって天国へよじ登らねばならない(続堕落論・p.96-97)

    文学は常に制度への、又、政治への反逆であり、人間の制度に対する復讐であり、しかして、その反逆と復讐によって政治に協力しているのだ。反逆自体が協力なのだ。愛情なのだ。これは文学の宿命であり、文学と政治との絶対不変の関係なのである。(p.100)


    --感想--
    建前や欺瞞を捨て、真の人間性に孤独に向き合うことから、人間性や社会の真理が開ける。またそうしないのであれば大戦を導いた日本的風潮の繰り返しに過ぎず、また同じことを繰り返すだろう。というような、人間はどのようなものであるかを問い、また特に日本人はどういうものであるかを問い、その上で規範や憧憬は欺瞞と政治的大義に満ちたものであるからそこから道を外し、一見堕落に見える本性へと立ち戻ることから最出発しようという、励みに満ちた現代評論。

    人間は強いし、底力は底知れない、堕落に見えても心配せず堕ちてみよう。その先にこそ真に人間の力強さなるものがある。っていう感じの激励に聞こえる。

    戦後直後の1946年の社会に向けて書かれたものであるが、当時を振り返る現代の我々に新しい角度からの視野を与えてくれる優れた評論だと思う。どこか響くのは、何か真理の言葉を含んでいるのだろう。

  • 必要こそが美を産む。


    文学は生きることだよ。
    見ることではないのだ。

  • 最近、戦争(主に太平洋戦争)のことを調べるようになった。当時を生きた人が書いたものをいろいろ読んだ。自分にとっては遠い過去で想像もできなかったことが、本当にそこにあったんだなと感じるようになって、絶対にまた起きてはならないと、前とは違う感覚で考えるようになった。堕落論はそんな気分のうちに読んで、とても心に残った。

  • 本書に収録されている「戦争論」などを読むと、坂口安吾は確かに戦争を厭う人だったのだろう。「兵器の魔力が空想の限界を超すに至って……もはや、戦争はやるべきではない」とある。世界単一国家などの概念は私も賛同する。しかし、「戦争の果たした効能」を是とするあたり、読んでて苦々しく思わずにいられない。「特攻隊に捧ぐ」で特攻隊を「可憐な花」であると讃美し、「愛国殉国の情熱」を偉大と見るあたり、読んでいて薄ら寒くなる。本書には興味深い論考やエッセイも多いだけに(論旨が読み取れないエッセイもあるが)、戦争関連の項が持つ欠点が惜しい。

  • 昔に読んだけど、あらためて読んでみるとおもしろいものだ。昔は「生きよ堕ちよ。人間は堕落する」という派手な言葉の印象はあったものの、堕落の意味がピンときていなかった。今の時代は、封建制、ムラ社会、思考停止した精神論みたいなものが昔ほどはないだろうから、堕落しきった状態が現代というところか。
    「続堕落論」は、より直接的でわかりやすい。
    小林秀雄も酔っぱらうという「教祖の文学」や、日本人の好奇や、抽象的で情緒的な思考を外国人との対比で記した「」ヨーロッパ的性格、ニッポン的性格」もおもしろい。

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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