光抱く友よ (新潮文庫)

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著者 : 高樹のぶ子
  • 新潮社 (1987年5月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101024110

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光抱く友よ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 1983年下半期芥川賞受賞作。小説に描かれている時期はいつ頃だろうか。筆者自身の体験がもとになっているとすれば、1960年代半ばの山口県防府市ということになろうか。今でこそ普通の共学になったようだが、かつて山口県内の公立高校は長らく男女別学(校内に男子棟と女子棟がある)だった。そこでの相馬涼子と松尾勝美との交友とすれ違いとを描くが、それは結局のところ交点を結ばない。涼子は、理解しようとしたはずのクラスメート(いわゆる不良であり、特異な環境にいる)を最後までファーストネームではなく、「松尾」と呼ぶのだから。
     芥川賞としてはややインパクトには欠けるか。この時の候補作では、むしろ干刈あがた「ウホッホ探険隊」の方が良かったかもしれない。高樹のぶ子にはまだ次があり得た。
     

  • (2004.08.24読了)(2003.03.08購入)
    この本には、芥川賞受賞作の「光抱く友よ」を含めて3つの短編(「光抱く友よ」「揺れる髪」「春まだ浅く」)が収められている。表紙の藤井勉さんの絵から幼い子供の物語と勝手に思っていたのだが、「光抱く友よ」は、「ア・ルース・ボーイ」と同じ17歳の高校生の話だった。

    ●光抱く友よ
    相馬涼子、平凡な女子高生?担任の英語教師三島良介に他の女子高生と同様憧れを抱いている。学校は、男子校舎と女子校舎別れている。瀬戸内に面しているというのだから著者の故郷山口県の話なのでしょう。
    ある日の放課後、階段の踊り場で、三島が、同級生の松尾勝美を叱責しているのを聞いた。三島の乱暴な口の聞き方を聞いて、三島に対するあこがれの感情は消える。
    松尾は、本来一学年上の生徒なのだが出席日数が足りなくて、一年生を二回やり、二年になって涼子と同じクラスになった。週の半分も学校に来ないし、出てきてもいつの間にかいなくなる。授業中も教師に指名されると物憂げに立ち上がり「わかりません」と答えるだけなので、教師も相手にしなくなる。定期試験の日は登校し、白紙に近い答案用紙で、鉛筆を転がして解答している。松尾に関しては体を売っているとか中学一年の時に堕胎したというような噂まである。
    涼子は、階段でのことを聞きたくて、松尾に声をかけて一緒に帰る。
    三島が松尾の母親宛の手紙を書き、母親からの返事を書いてもらったのだが、あまりにも稚拙なので、信用してくれなかったので、涼子に代筆を頼んできた。
    交友が始まり、誘われて訪ねた松尾の部屋には、天体図が多数貼られていた。隣の部屋には、母親が寝ているという。母親は、酒びたり状態のよう。松尾は、母親と喧嘩しては家出を繰り返してきたという。そのたび男友達、女友達、と泊まり歩いては、戻るという生活だった。米兵のマーチンと知り合ってからは、マーチンのところに行っていたらしい。そのマーチンとも喧嘩してしまったという。天体図はマーチンの影響である。
    母親は、精神病院に入り、松尾は母親の代わりにホルモン焼きの店をやっている。
    みんなから排除されている少女と知り合って、涼子は何を得たのだろうか?
    「損したあ、あんたと出合うて」と言わせているけど。

    著者 高樹 のぶ子
    1946年 山口県生れ
    東京女子大学短期大学部卒業
    1984年 「光抱く友よ」で第90回芥川賞受賞
    1994年 『蔦燃』で島清恋愛文学賞受賞
    1995年 『水脈』で女流文学賞受賞
    1999年 『透光の樹』で谷崎潤一郎賞受賞

  • この作品を読んでいると相馬涼子という高校二年生の普通の女の子が、憧れの担任の三島先生が松尾勝美(涼子より一つ年上だが留年して同じクラス)に対しての暴言ともいう言葉から三島に失望と憤慨を覚え、勝美に近づく。そこで勝美のすさんだ態度、母親千枝と勝美の家庭の状況にとまどいながら、自分も周囲の人間から違ってみられるようになっていく。

  • 書かれた年代が随分昔ではあるけれども、毒親の内容・・・。描き方がとても丁寧で、その時代の家の感じなどを想像しながら読み進めました。
    女同士の友情が描かれています。
    感情面は特に描かれていないのですが、切なさがとても伝わってきました。いい作品ですね。

  • 小川洋子さんのラジオで紹介。近々読みたい。

  • センチメンタル小説で終わっていない。いい小説だ。

  • 優等生の涼子と不良少女松尾勝美との出会いと友情を描く、芥川賞受賞作「光抱く友よ」。涼子は松尾の母親を通して自分にはない松尾の強さと優しさを垣間見る。その他短編2作品。

  • 自分とは違う女友達との出会いと別れる。大人になったら流せるかもしれない結末は子供には苦いです。

  • 【美しさと緊張感が漂う女性同士の関係を描く名作】

    大学教授を父に持つ、ごく普通の家庭で育った優等生の相馬涼子。一方、アル中で障害を抱える母親を持つ、不良少女の松尾勝美。二人の女子高生が微妙な距離を保ち、緊張感を持ちながら淡い友情を重ねていく過程を美しい文体で描いた『光抱く友よ』。美しい文体ながらも、学校でも、家庭でも緊張した空気を感じる。

    淡くも儚い友情に終わる2人の関係だが、涼子の心境の変化がひしひしと伝わる。また、松尾と母とのやり取りにも緊張感が漂うが、母親に対する松尾の優しさも垣間見え、女性とは不思議なものだと考えさせられる。高樹のぶ子が芥川賞を受賞した作品ということで読んだが、彼女は思春期の女性を描くのが本当にうまいと感じた。重苦しいように感じたが、不思議とスピーディに読めたのも、彼女の筆力の賜物だろう。

    その他、気の強い娘についていけない母の心理描写を描く『揺れる髪』、セックスなしの関係を交際相手と続ける主人公と真逆の友人の同居生活を描く『春まだ浅く』の2編が収録。女性の処女性についてはわからなくもないが、古いと感じてしまった。『光抱く友よ』については、読者次第かと思うが、芥川賞を取るだけの名作であると思う。

  • ぼくがみたいのは、世間の闇ではない。

  • うーん結局の所、何が言いたかったのか私にはとらえ切る事が出来ませんでした…。

    表題作を含め三作品で成り立っています。

    表題作の、光抱く友よのアル中の母、何とも生々しくて
    かなりの嫌悪感を抱いてしまいました。
    ドラマ化もされているみたいなので、映像で見たら又違った捉え方が出来るかも!

  • 芥川賞受賞作。少しでも不純なものを見つけたら、たちまち全てが嫌になってしまう、その時期にある葛藤を思い出した。人間の根底にある1つのドラマを見ているようだった。

  • すみません、相性悪かった。読者を選ぶタイプの本かと。自分は選ばれない読者なのに手を出してしまった。

    文体が終始、タイトル自体の空気と同じで。このタイトルが好きな人も多いと思う。それから、最後は何やら読者に考えさせようとしているのだろうけど、すみません。筆者が思うことを一緒になって感じることがどうもできません。

  • 表題作は、多感な少女の心の動きが読めていい。ほかの作品は、同じ作家のものと思えない。

  • 私はあんまり作家によって作風が女性的だとか男性的だとか思わないんですけど、この本に限っては本当に女性でないと描けない世界だなと思いました。
    本当に繊細で心の裏側まで透け出るような奇妙な透明感があります。

    個人的に好きだったのは二篇目の「揺れる髪」です。
    すべてが砂糖の砦の上でのできごとかのように、
    ゆらゆらとしていて。
    繊細な強さのある作品たちです。
    とてもオススメです。
    心の底から湧いて出るきれいな涙を流せる気がします。

  • 芥川賞シリーズ⑩
    不良少女と周りに言われている松尾勝美と大学教授の娘で大人しく控えめな高校生涼子。二人の家庭環境や境遇は対照的なものである。なのに涼子は勝美に対してあこがれ以上の「光」を感じる。思春期にいろいろな悩みを抱えるがそれを乗り越えてしまったかのような勝美の生き方は、これから青春を謳歌しようとする涼子にとってまぶしいものに映ったのかも知れない。
    勝美にとっては涼子の家でみた天体望遠鏡からみた星は偽物に映ったのだろう。目で見える現実は彼女にとっては辛いものが多く、真実を覆い隠している涼子の家庭がそこに見えているのだろう。
    「光抱く友よ」と語りかけているタイトルがこの二人の将来を語っているようで読後感がすーとできた作品でした。

  • 09/8/05〜09/8/16    ゆっくり読んだ。「光抱く友よ」が一番鮮烈な印象。(読んでいて、灰谷さんの、『少女の器』を思い出した) でも好きなのは、「揺れる髪」。

  • 大学教授を父親に持つ引っ込み思案の優等生・相馬涼子。
    アル中の母親をかかえ、早熟で、すでに女の倦怠感すら漂わせる不良少女・松尾勝美。
    17歳の二人の女子高生の出会いと別れを通して、初めて人生の「闇」に触れた少女の揺れ動く心を清冽に描く芥川賞受賞作。

    そもそも著者についてはまったく知らなかったけれど、
    あるとき彼女の話題になったので、帰り道に書店で購入して帰った一冊。

    私自身今でもそうなのかも知れないけれど、
    自分と違う人(そう言ってしまえば周りの人皆そうなのだけど…)
    勝美のような不良だとか、私にはなし得ないことをやってのける人に対する憧れみたいなものが心のどこかにあって、
    そんな人に近づきたいという気持ちが涼子にもあるようで、
    涼子が勝美に近づく様子などはリアリティがあって理解できた。
    学校からの帰りに自転車でついていくあたり特に。

    でも、私と涼子の違いは、涼子は勝美に近づきつつも自分の世界を持っていて、
    その境を明らかにしているところ。
    私はちょっと踏み込んでみたり、後ろからついていったり。
    最後は涼子は「闇」に踏み込んでしまうわけなのだけど。

    たとえどんなにおしゃべりな人でも他人には言わない何かを持っていて、
    それが「触れられたくない何か」で、
    それを他人がどう理解したくとも出来ないのであって、
    涼子と勝美は両親の姿も、暮らす環境も、恋人の有無も、すべてが違って、ただ共通するのは高校が同じで学年が一緒だということのみ。
    最初から踏み込むなって話で。

    言うなっていうことを言ってしまったり。
    それは涼子が17歳だからなのかな。

    21歳の私は言うなっていうことは絶対言いませんけど。
    人生そういうことも大事ってようやく気づき始めたような。

    5月29日
    アルバイト先のベランダで日光浴中に読破。
    「闇」とは逆の天気のいい日でした。

  • 外見的には取り立ててとりえがないけど、知性があってかつ温厚な父親と家庭的な母親に包まれて幸福に暮らす主人公。
    彼女の同級生である、アル中の母を抱えて貧しい中生きている、美人で早熟な松尾。その二人の友情物語。
    こういう、間に男性登場人物を介在しない、「女の友情モノ」って、意外と見たことないですね。距離を詰めるとお互いが傷つく。あのあと二人が並んで語り合うことはもうないのでしょうし、「心通い合う友」にもなれなかったわけですが、けれど二人の心の一番深いところは、一瞬確かに重なり響きあったのだと思います。ラストを読んでいるときはもう涙目でした。
    この作品だけなら間違いなく★5なのですが、同時収録の母娘の話はあまり響かなかったので、★4に。

  • 『光抱く友よ』は、優等生の主人公と不良少女との関係という、青春小説によくあるようなテーマである。それに、味気ない、淡々とした文章で始まるため、読み始めはとっつきにくい感じがする。
    しかし、最後まで読むと、この味気ない文章とテーマが、ものすごく良く見えてくる作品になる。
    この変化には驚いてしまう。

    特に面白いという作品ではないし、テーマもありきたり。
    だが、作品名の『光抱く友よ』にピッタリのストーリーとクライマックスであった。

  • 書かれてからかなりの時間が経っている本だが、その時間を感じさせるどころか、良質な文学を読んだ時に感じる爽やかな読後の印象が残った。作者の漢字使いのセンスがよかった。(2005.7.18)

  • 二作目で男がウジウジしているのが気に入らなかった。

  • <p>高校時代に「読書週間」の課題図書として配られ、当時はいつも鞄に入れており、雨に濡れたこともあったが、大して読むこともなくふやけたまま実家の本棚にしまわれていた本。今年春、静岡に戻ってくる際に、新幹線の中で読むようにと思って、たまたまそこから救出されてきた。</p>
    <p>1984年の芥川賞作品ということもあって、どことなく文章も古臭い気がしたが、描かれていた物語には普遍的なものを感じさせられた。</p>
    <p>同時収録作品の一つ、「揺れる髪」は、母、子、その娘の、女三代に主題を置いた物語であるが、俺はそれよりも、子、"時子"とその夫の関わりに、心魅かれるものがあった。</p>
    <p>そして最後の「春まだ浅く」。これは、なかなか一線を越えられない男女の物語であるが、かなりためになる。未だ恋愛を知らない人から、既に何名もの相手と関係を持つ自称「恋愛のエキスパート」にまで、この作品をお勧めしたい。男女関係についての、かなりいい教科書となる筈だ。しかし読めば答えが見つかると言うものではない。俺はかえって、余計男女関係というもののありかたがようわからんようになったよ・・・;</p>

  • 女性作家は場面の説明にこって、出来事の描写に終始してしまうことが多いように思います。これは人の好みですが、私は、あんまりそういうのは好きじゃなくって、もっと内面をぐっと掘り下げて、かつ簡潔な言葉で言いきって欲しかったりするので、高樹のぶ子さんの文体はうならされました。邪魔な装飾をはぶいて、質素で硬質なんだけど、鋭く本質をついています。

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