蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

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著者 : 芥川龍之介
  • 新潮社 (1968年11月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101025032

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蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 幼い頃父に何度も「蜘蛛の糸」と「杜子春」の話を聞かされた記憶がある。もちろんその頃は、芥川龍之介の名だと知らずに、ただ面白い話だなーと幼いながらに父の話に聴き入った。それが芥川龍之介の作品であることを知るのは数年後の事である。そしてまた改めてこの作品を読んでみた。そんな話が詰まっている本書は、10編の短編から成っている。

    「蜘蛛の糸」...罪人カンダタが、蜘蛛の糸を使って地獄から抜け出そうと話。
    「犬と笛」...髪長彦が、笛と3匹の犬をお共にお姫様を救おうとする話。
    「蜜柑」...現実に嫌気がさした憂鬱気味の主人公の【私】が、電車でたまたま乗り合わせた娘の行動に感銘を受ける話。
    「魔術」...魔術師マティラム・ミスラに魅入った主人公の【私】が、ミスラから魔術を教わろうとする話。
    「杜子春」...杜子春が仙人と出会い、仙人になるために修行する話。
    「アグニの神」...妙子の父の書生である遠藤が、魔法使いに囚われている妙子を救おうとする話。
    「トロッコ」...トロッコに魅入られた良平少年が、トロッコで遊び、家に帰る話。
    「仙人」...仙人に憧れる権助が、古狐といわれる医者の妻の元で、仙人になるための修行する話。
    「猿蟹合戦」...猿の仇を討った蟹が死刑になる。猿蟹合戦のその後を描いた、猿蟹合戦のパロディー。
    「白」...犬が主人公の話。犬殺しに殺されそうになっている【黒】を見殺しにしてから、体毛が黒くなった【白】が、白の体にもどるため奮闘する話。

    個人的に好きなのは「蜘蛛の糸」「杜子春」「蜜柑」「トロッコ」だ。
    「蜘蛛の糸」は、有名ながら何度読んでも面白い。ラストで自分だけが助かろうとして失敗する姿は、人間の汚い所を見せてくれる。ラストのそんなカンダタを見る御釈迦様の表情もいい。
    「杜子春」は、金よりも大切なもの、親の愛を教えてくれた。地獄で鬼たちに鞭打たれ瀕死にながらも、息子杜子春のことを気にかけるその姿は泣ける。
    「蜜柑」は、匂いと色の表現が非常にうまい作品。文章なのに嗅覚と視覚を刺激してくる。ラストは心があったかくなってほっこりした。
    「トロッコ」...ノスタルジックな作品。これを読んでるうちに自然と自分が、少年時代の自分にタイムスリップし、主人公良平と重ねていた。少年時代の憧れ、恐怖が詰まっている。

    とにかく芥川の作品は分かりやすい。ストレートにメッセージが心に響く。幼い頃の私でも、その話の面白さ(読み聞かせであったが)が分かるほどだ。しかも分かりやすいからといって、決して子供向けであることではない。どの作品にも、人間のエゴイズムや善悪が詰まっていて、読んでいると自分もこんな汚い所あるなー、とつい考えてしまう。
    本書はどの作品も短く、それでいて濃厚で、しかも10編も味わえるのだからお得だ。短編の名手芥川の技を存分に堪能し、自分なりの好きな作品を探してみてほしい。

  • 収録話
    蜘蛛の糸、犬と笛、魔術、杜子春、アグニの神、トロッコ、仙人、猿蟹合戦、白

  • H29.10.2 読了。
    ・初芥川作品。蜘蛛の糸、犬と笛、杜子春はお気に入り。羅生門も改めてじっくりと読んでみたい。
    ・現代作品にあまり見られない道徳観がちりばめられた短編小説でした。

  • すごくおもしろかった。「犬と笛」と「白」では犬が活躍するのだけど、筆者が大の犬嫌いだなんて信じられないぐらい犬がチャーミングに描かれていて満足。内に秘めているつもりでいる煮えたぎるような欲望を見透かされた気がした。底抜けに明るいというわけでもないのになんだか読むと救われた。「トロッコ」は中学の時国語の授業で退屈な話だなと思っていたのに、いま読むとすごく良かった。芥川龍之介が題材に取り入れた今昔物語集や宇治拾遺物語を一通り読んだからか、昔読んだときよりもぐっとくる作品が多かった。

  • 芥川さん、、、好きかも。
    とししゅんはいい話。辛くても心をなくしたくはない。
    金より地位より愛だね。

    他にも、なんとも一言では形容しがたいような、とにかく終わり方は納得がいく、素敵だなぁ良いなあって思うような、切なかったり心穏やかになれたりする話が詰まっている。

    特に白と言う犬の話が心に響いた。短いストーリーなのにグッときてしまいました。
    少しファンタジーな非現実を取り込みながら、常に何か言いたいことがある、そんな作家なのかなという印象です。

  • 蜘蛛の糸、犬と笛、蜜柑、魔術、杜子春、アグニの神、トロッコ、仙人、猿蟹合戦、白
    この文庫は年少文学と呼ばれるものを主におさめてあります。

    蜜柑が一番好きでした。
    曇天の冬の日暮。疲労と倦怠に包まれた私を取り巻く憂鬱な空気。乗り合わせた薄汚い、田舎臭い少女。うんざりげんなりした気分に拍車がかかる私。けれど、ある貧しい町はずれの踏切に通りかかった時、少女が車中から見送りの弟達に蜜柑を投げる。その瞬間、少女の手から放たれた蜜柑の鮮やかな色が場面を明るくする。全てを悟った私が朗らかな気持ちになり、少女を見る目が変わる。
    ただそれだけの5ページの作品ですが、少女の健気さと蜜柑の色が鮮明に心に焼き付きました。

    トロッコ。トロッコを押す手伝いをして、遠くまで行き過ぎ、日暮れ間近に1人帰ることになってしまった男の子。必死に走って走って…

    猿蟹合戦。解説では気軽な戯作と書かれていましたが、風刺の効いたパロディが気に入りました。

    恥ずかしながら、今頃気がつきました。芥川龍之介かなり好き。
    簡潔でリズムがある文体、色彩が豊か。
    やっぱり、学校で羅生門みたいな暗いのを最初にやるのが良くないと思います。
    自殺した作家ということと、あの暗そうな顔写真で羅生門。イメージ決まってしまいます。
    昔、他に義務的に何か読んだのかな?読んでいたとしても、覚えていない。

  • 中学生とか読めばいいのに。読みやすいし楽しいの。何回も楽しいよ。お風呂で2、3編ずつ読んだ。

  • 「蜘蛛の糸」、短編の中に、かくも見事に「人間の性(さが)」が描かれていますね!

  • 年少者の為に書かれた小説という事だけれど、大人が何度も読むにたえる素晴らしい小説だと思う。
    10の短編のうち特に好きなのは「蜜柑」、「魔術」。

    「蜜柑」
    鬱々とした気分の老紳士、彼が乗っているのは夕暮れの二等客車である。疲労と倦怠につつまれただ座っていると、けたたましく乗り込んできた小娘がいる。その小娘が垢じみた着物で下品な顔立ちだなどと、老紳士は悪辣に心のうちに批評し、存在を無視してかかる。
    暫くした後、この小娘(13,4歳くらい)は汽車のガラス戸を無理にこじ開けようとするのである。冬で夜は底冷えし、トンネルにもさしかかり、煤が車内に蔓延して息もできない。

    こういった描写のあと、なぜ小娘がこんなにもガラス戸をあけることにこだわったのかが、蜜柑という小道具とともに理解るのだが、理解った瞬間、胸がポーンと弾かれたような気分になり、涙があふれた。
    短い作品の中、日常の中のどんでん返しとでも言うものに”やられた”と思う。

    「魔術師」
    インド人の魔術師のもとに弟子入りしたいと希望する日本人男性、彼に魔術師としても資質はあるのか?

    魔術師になるには、”慾”があってはいけない。”慾”は作り出すものではなく心の中にふっと湧き上がるものである。彼はこの難題をのりこえられるのか?

    インド人の邸宅の簡素で薄暗くてエキゾチックな様子と、目の前の蝋燭の炎のゆらめき。この一遍を読み終えたあと、不意に催眠術からハッと目覚めたような気分になった。

  • 「白」
    臆病な犬白は、犬殺しにやられている友達の黒い犬を助ける事もできずに逃げ出した。その負い目からか、神様からの罰なのか、白の白い体は黒色になってしまう。
    優しい飼い主からも野良犬・狂犬とみられ、冷たくされてしまう。白は自分の臆病さを恥じ、家を出る。放浪先で数々の人助けをし勇敢に戦う白。傷つき疲れてしまった白は、飼い主の元に戻リたいと思う…。
    人間には犬の言葉はわからないけど、犬には人間の言葉がわかると書かれていた部分はすごく納得できた。

  • エゴを捨てた者から見たエゴ

     血の池にむせぶ陀多を、お釈迦様は哀れとぞ思い、チャンスを授ける。さしのべられたるは、お釈迦様の御手に代わる蜘蛛の糸。ただひとすじの望みにすがりつく陀多だが、助かりたい気持ちが切実すぎて、糸の所有権を主張してしまう。「これは俺のだ! 他の奴は降りな!!」 途端に、望みはぷつりと音立て絶たれる。

     私も人間なので、最初に読んだ時に感じたのは、陀多氏が気の毒だということだ。昇らせておいて途中でぷつりだなんて、最初から変なもん(?)垂らさなければ苦しめずにすむものを、お釈迦様は残酷でいらっしゃる。と、陀多にシンパシーをおぼえるとこうなる。
     今度は、釈迦はどんな気分かなという方向に考えが行った。俗世に生きる我にそれほどの存在が推し量れるはずもないが、勝手に想像を膨らませて。

    「罪人たちは何百となく何千となく、まっ暗な血の池の底から、うようよと這い上って、細く光っている蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります」

     その様(さま)は、お釈迦様には、さぞかし気色の悪い光景だったことだろう。悟りをひらいた者にとっては、悟りをひらいていない者こそが、恐ろしく見えるのではないだろうか。
     陀多一人があさましいのではない。陀多みたいなのが、ぞろぞろひしめきあっている。
     生存競争なのだ。同じようなのがぞろぞろひしめき合っている中で、自分が生き残るためにくり広げなければならない争いだ。当然、熾烈をきわめる。誰かを蹴落としてでもその糸を我が物にするくらいの者が、成功をおさめるだろう。
     良くも悪くも、人間の本性である。勿論、あさましい。自分一人が助かろうとする根性が、見苦しい。だが、人間が生きるために内側に持っているエゴイズムを、ただ単純に否定すればいいというものではない。そのことが、くるしい。エゴを捨てたものの目から見たエゴの、複雑な醜さを知らされてしまう。

  • 子供の頃に地域の映画上映会(児童向け)みたいのがありまして、そこで杜子春が上映されてたのです。余程印象が強かったのか『杜子春という映画を見た』ということは覚えていて、けれども子供の頃だったのでもうストーリーも忘れてしまっていて、、、それでずっと気になっていたのです。

    そんななか、古本屋で売っているのを見つけて、購読しました。あぁ、すっきりした(笑)。それにしても、なんと言えばいいのか、、、杜子春だけでなく他もそうですが、芥川龍之介の短編は不思議な魅力がありますね。

  • 芥川さんの文章は読みやすい。すっきりと洗練されていて、くどくどと書き連ねたりしない潔さがある。
    ただ、表題作の「蜘蛛の糸」と「杜子春」は教科書でもお馴染みの話だけど、その説教臭さを含め何となく好きになれない。
    それはたぶん、“試す”という行為の裏にある冷酷さがこわいから。
    悲惨な地獄を尻目に芳しく揺れる極楽の蓮の「無頓着さ」などは象徴的だと思う。
    ほかに8篇収録されていたなかでは、「トロッコ」がすごく良かった。見知らぬ地に取り残され涙を我慢して走り続けた記憶。その郷愁と、今もなおその“線上”にあるという倦怠感。心情の起伏をさらりと表現してのけているところがすごい。

  • 「蜘蛛の糸」をはじめ、雑誌「赤い鳥」に掲載された作品を中心とした短篇集。そのいずれもが、まだ20代の芥川初期のものだが、小説作法、構築性において既に極めて完成度が高い。主題との関連でいうなら、注目すべきは「杜子春」だろう。杜子春の仙界入りの試練において、とうとう最後の「愛」に彼は屈してしまう。仏教においても、道教においても「愛」は愛執、愛着に見られるように断ち切るべき迷妄であった。「愛」を価値あるものとするのは、まさしく近代的な価値観にほかならず、芥川のなしたのは、まさにそうした価値の転換だったのである。

  • 私に子供ができたら絵本ではなく「杜子春」を読み聞かせます。

  • カンダタ勿体無い事したな
    杜子春えーやつやん

  • 合計10作の短編が収録されている。
    芥川の書き方はとてもシンプルだと思う。
    無駄な描写は一つもない。
    これ以上なくせば、話の内容がわからなくなる、
    というくらいまでそぎ落とされている。
    シンプルな文は想像の余地が多くある。
    委ねられているなぁと思う。
    それでも、登場人物の心情を追っていると
    芥川が伝えようとしている人間の醜さ、みたいなものが分かる。
    こういう人にならないようにしようと思う。
    すごいなぁと思った。

  • 全10作品を収録した芥川の短編集。
    やはり教科書にも載っている蜘蛛の糸が有名ですが、
    一番短い「蜜柑」は地味ながら、
    蜘蛛の糸で見せたエゴとは違う暖かさのある小品。

    或曇った冬の日暮れに二等客車に揺られる憂うつな男、
    そこに現れた三等切符を握りしめた少女・・・
    5ページという枠の中で起こる一瞬の些細な出来事、
    それを鮮烈に描き出して、とても印象的です。

    [1968年、日本、128P]

  • (1998.09.05読了)(1998.08.25購入)
    (あ-1-3)
    収録作品
    ・「蜘蛛の糸」
    ・「犬と笛」
    ・「蜜柑」
    ・「魔術」
    ・「杜子春」
    ・「アグニの神」
    ・「トロッコ」
    ・「仙人」
    ・「猿蟹合戦」
    ・「白」
    「年少文学」といわれるもの(138頁)

  • 本書は青少年向けに書かれた作品を集めた1冊。
    どれも短くて読みやすい作品です。
    芥川龍之介の文章は、読み始めると途中でやめられなくなってしまうんですよね。

    「密柑」に、はっとさせられました。
    文庫本でたったの6ページの作品なのに、一際存在感があるのです。
    暮れ時の曇天の中、宙に放られた密柑の橙色が、実際に目にしたかのように鮮やかに浮かびます。

    「トロッコ」は小さい頃読んだときにはよくわからなかったのですが、大人になってから読むと良平の高揚感やその後の心細さが、懐かしい思い出のように感じられました。

  • この本、いい話だらけで、
    世の中信じたくなっちゃいますよ。

  • 何だこれ。
    山もオチもない。
    さらっとしすぎ。

    って思って読んだら、これは年少者のための作品だったみたい。
    童話的なもの。

    たぶん今の子供はこんなんじゃ喜ばないと思う。
    ワンピースとかすごいから。

    一番面白かったのは、あの有名な猿蟹合戦の後日談的な物語。
    タイトルはずばり「猿蟹合戦」。
    猿を殺したあと、蟹は死刑に、臼や蜂たちは無期懲役になったそうですよ。

  • 表題2作を小学生以来の再読。どちらも救いの無い、残酷な話の印象だったが、歳を重ねて読み直すと、なんともヒトの業(ごう)を感じる短篇であった。 感性も肥えて鈍くなってしまったかな。

  • ・羅生門
    人の心の容易い善悪の移り変わりを
    表した作品。
    芥川作品にこういった心の動きは
    多く見られる気がする。

    ・鼻
    人間は無い物ねだり
    隣の芝生は青い

    ・煙草と悪魔
    とんちのような話。
    自分の意図した結果のようでも
    全ては悪魔の策略の手の中にあるのかもしれない。

    ・戯作三昧
    滝沢馬琴が主人公。
    童心への回帰、趣味道楽を愛好し楽しむ心こそ
    文学作品、その他あらゆる芸術作品の原点かなと思った。

    ・蜘蛛の糸
    独占欲は我が身を滅ぼす。

    ・蜜柑
    こういった文学は個人的に好かん。
    つまらん。

    ・魔術
    欲の少ない人間も目の前にぶら下がった
    人参を追いかけてしまうもの。

    ・杜子春
    個人的に一番関心深かった。
    莫大な財を成そうとも、地獄の沙汰へおちようとも
    最後に信ずれるものは母の愛情と知った。
    芥川の内を垣間見た。
    その後、芥川の母が龍之介の生没後すぐに
    狂人と化した事実を知った…
    ただ杜子春は我が子に読み聞かせてあげたい。

    ・トロッコ
    芸人又吉が文学の道を歩むきっかけを
    作った作品。
    確かに妄想からなる過度な期待から
    裏切られたように感じることや、
    他のことが気になり
    心ここに在らずになるような経験も
    あるにはある。
    が、そんなにも心打たれるか?と思った。
    正直別に好かん。

    ・雛
    日本昔ばなし。
    幻想だろうが物理的なものであろうが
    見たとゆう事実には間違いない
    とゆう点には納得。

    ・白
    ハッピーエンドでよかったね。

    ・少年
    窮地の底に立たされた時
    母の愛を無意識と求める
    って話
    マザコンやね。


    携帯で読んだ河童が
    なかなか関心深かった。
    精神的に狂気じみていきながらも
    社会を風刺した
    芥川の強い芯の部分に惹かれた。

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