清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101030043

感想・レビュー・書評

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  • 解説にて日本近代文学者の高田瑞穂氏はこの作品集の作品ごとの感想を述べたあと、志賀直哉の作品性についてこう述べる。「......直哉の作家的自我確立の営みが、終始自己に誠実なものであったことは明らかであろう。直哉はあくまで自我中心的であった。」ここで浮き彫りになる直哉の自我中心である姿勢というのに、何かを感じずにはいられない。私には二十四歳の今の段階で、師や父というものを持てないのではないか、という考えが湧き上がってくる。自分が自分であろうとするほど彼らの考えと容赦なくぶつかり、失望させているのではないか。そんな私の不安めいたものともいえる気持ちに、志賀直哉の作品らがやさしく寄り添ってくれているようである。
    さて個々の作品についてはどうだろう。改めて目次を開き、各題名をみると、「彼と六つ上の女」「母の死と新しい母」を特におもしろく読んだ覚えがある。どうやら私は志賀直哉の女性に対する眼差しがつよく現れている作品が好きらしい。前に読んだ『小僧の神様・城の崎にて』のときも「佐々木の場合」などをおもしろく読んだ。はじめはその相手に羨望を覚えているのが最後には落ち着いていく、またはその女性を元の姿として視界に収めようとする成り行きに心の底で頷いている。なんだか女性というものに対する青年期の男性のひとつの答えのように私には思える。初読のときに目に留まるのはついついこんな作品たちばかりになる。

  •  楽しみにしていた「剃刀」はオチにおおおおおお?となった。いや、そんな意外なオチじゃなかったかもしれないが、とりあえず驚いた。
     自伝的小説の「母の死と新しい母」は好みだ。
     自己の内面世界と感覚を見つめた描写、だからどうしたよ、という話ラッシュにお思えて、未だにその良さがぴんと来ていない。
     「彼と六つ上の女」や「濁った頭」などの簡単な筋がある話に惹かれる。
     取り扱いテーマと話の結末を知り、自伝的小説が多いと聞くと、この作家、生き辛そうよなと思う。この作家、書き辛そう、でもあるか。

  • 「快楽原則」の人。文体においても、行動においても。そしてひたすら「見る」人。視点人物の「見る」という動作がしゃんと肉体に結びついている。見続けると目が疲れるという当たり前のことを書ける作家。ヌーヴォー・ロマンの連中とは決定的に違う点。

    ロマネスクな作品の方が出来がよい。「菜の花と娘」「剃刀」「正義派」「范の犯罪」。家族物は偽善者ぶりが発揮されてつまらない。「濁った頭」は糞。

  • 志賀直哉初期の短編集。時代は明治から大正にかけて。

    教科書に出てくるような作家なので、敬遠しがちだったが、読んでみるととても面白い。

    表題作の2つもこんな話だったのねと面白く読めた。

  • この時代の作品にしては現代口語に近くて読みやすかったけど、オチは…?みたいな話もあってまあそういうセンスなのかなと思った

  • 22.8.30〜9.6

  • 申し訳ないけれど、作者のクズさが登場人物に出ててよかった。大体祖母の出るお話の主人公は作者なんだろうなと思う。
    クズさの生々しさがいい感じ。
    最後のお話は地元を想像して読んでたけど、思い切りそうだった。

  • 読み終わった他の本に比べて、後味が悪いというかスッキリしない話の割合が多かった気がする。登場人物が破滅的というか。若い頃に書かれたものが多いようなので、その影響も出ているのかな。

  • この本の中で、私は「清兵衛と瓢箪」を読んだ。
    率直な感想としては、何も感じなかった。

    この話には主人公の台詞は少なくてほとんど文字として綴られていた。だから主人公の心情が読み取りづらくて何を感じ、何を思っているのかが分からなかった。

    これは最後の一文から始まる本ではないか。具体的には述べないが、なんとなく最後の一文に惹かれた。この本は続く、と。

  • 読書会でJONYさんが「小僧の神様」の話をしてて、
    どこかの未必の故意の話で「范の犯罪」の話が出て、
    なにかの解説で「濁った頭」の話が出て、秀水さんと漱石の話をしてて・・・(学研の少年少女世界文学全集には「坊ちゃん」と「・・・瓢箪」が同じ巻に収録なのです)
    で。
    面白いやんっっ?!がてんこ盛りで、びっくり。(←失礼)

    ■クローディアスの日記
    これ読むと、実はクローディアスは兄殺ししてないんじゃないのって気になってきます。

    ■剃刀
    源氏鶏太の短編でそっくりなのがあったような・・・
    モノが剃刀なだけにシャープな切れ口で ^^;

    ■祖母の為に
    この中の「夢」の話、めっちゃ怖っ!これだけでも立ち読みしてください〜(←おいおい)

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著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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