写楽 閉じた国の幻〈下〉 (新潮文庫)

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著者 : 島田荘司
  • 新潮社 (2013年1月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101033136

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写楽 閉じた国の幻〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 写楽の正体を追う部分は面白かったし江戸歌舞伎の風景が描写されていて興味深かった。が、小説としてはイマイチ…。
    と思っていたらあとがきで作者自身が、「写楽論だけで分量がいっぱいになっちゃって、登場人物のストーリーいろいろ用意してたのに盛り込めなかったよー無念」って言ってた。え、失敗作宣言?
    でもまあ作者も、写楽の正体に関する自説を論じたかった、それが目的だったみたいなので、まあそれだったらいいんじゃないですかね…。小説だと思って読むと金返せって気分になるが、『写楽の正体』みたいな胡散臭気な新書だったら読み切れなかったかもしれないし…。

  • ある程度以上気に入った本しか本棚に登録しない主義なので、登録自体結構迷いましたが、単純につまらなかった訳でもなく、それなりに気持ちに残っているので登録することに。

    核である「写楽の正体」の推理自体は(学問的にどうなのかはともかく)面白く、蔦屋重三郎をはじめとする江戸篇の登場人物も魅力的でした。
    もともと蔦重が好きなのもありますが、ここだけでも評価に値すると思います。

    ただ、小説としては、自分のことしか考えていない主人公に全く魅力がなく、主人公を助ける女性教授も都合のいいキャラクターでしかないので、現代編で感情移入できる人物が誰もいないのがつらかったし、あからさまに実在の事件を思わせる導入部(遺族や関係者は話題になったことで傷ついたかも)に必然性が感じられないことにも苛立ちました。

    連載がおわったあと、単行本化に当たって、あるいは文庫化に当たって、大幅に書き直す必要があったんじゃないかと思うんですが…。

    蔦重が(もともと)好きなので、彼に免じて★2つ半ってところでしょうか。

  • この本を読んでしまうと、写楽の正体はコレしかあり得ないと思えてしまうのだけど、真実はどうなのだろう。

    ただこの本の面白さは、写楽の正体を解き明かしていく点だけでなかった。

    その過程で描かれる当時の江戸庶民の生活事情(倹約が義務付けられていた)や、将軍に謁見する為、出島からオランダ人がはるばる上京する江戸参府(彼らも厳しい監視体制下にあり自由行動が許されなかった)など、勉強になることが多かった。

    あと、浮世絵が絵師(下絵)、彫師、刷師、三者の分業で行われていたことも。彫り、刷りの過程を熟練の職人が行うことで、下絵のオリジナリティが薄まり、絵師写楽の正体の謎を深めた様だ。

    "写楽現象"に関わった人たち(本書の仮説の様だが)がまたいい。
    浮世絵の版元で蔦屋重三郎という人物も男気があって魅力的だし、若かりし春朗(北斎)の素朴さもいい。
    前半で生涯が描かれる平賀源内の天才ぶりもまた、興味深かった。

    現代編だけでなく、江戸編で生活者の目線で当時を見せてくれるあたりも上手い!と思った。
    現代編では主人公の厳しい現実が迫ってくるので読む方もキツイが、江戸編で救われる。

    でも何といっても、一見無関係に思える回転ドアの悲劇的な事故と、写楽作品、そして混血の女性教授の共通点には、こう来たか!と唸らされた。緻密なプロットがあったのね。

    ただ、あとがきによれば、思い入れが強い分想定以上に頁数が増え、書くはずだった裏ストーリーが一行も書けなかったらしい。

    確かに前半は説明的に長々と同じ内容を繰り返し描かれており読み進めるのが少々辛い。後半はスピード感がありサクサクいけた。
    裏ストーリーがあるなら続編も読みたい。

    あとがきで、以前の浮世絵軽視の風潮や初期の推理(探偵)小説への蔑視を"常識の暴力"と呼ぶ作者。固定観念を嫌い、浮世絵の常識を打ち破った蔦屋に敬意を払う熱い気持ちが伝わってくる。

    "写楽現象"の写楽の正体とは。個人的には今までそんなことを考えてみたことも無かった。
    でも改めて浮世絵を見比べると確かに写楽の(特に初期)は他と大きく違う。面白いなぁ。

    この本を読み終わった今、江戸時代の魅力的な登場人物や、人々の暮らし、歌舞伎や浮世絵、もっと安価に楽しめたはずの落語、色々なものに派生して興味が湧いた。
    しばらく江戸がマイブームになりそう。。

  • 面白かった。写楽、しきうつし楽しみ。江戸の粋を見た気分です。鎖国という閉鎖的な環境に咲いた一輪の江戸っ子の意地。頭が下がる。命をかけてでも何かを遺す。教えられた気がします。

  • 凄い話だった。スケールが大きく興奮した。歴史物でもあり、ミステリーでもあり、謎解きの要素もあり。満足。

  • 歴史検証ものとしても楽しめますが、純粋に写楽とは誰だったのかというフーダニットでもある。久々に、流石島田荘司!と拳を握りました。
    読み出したら止まらない止まらない。一気読み。きっちりとデータを並べ、推理の過程を書き込んでくれるので、読み手のこちらもさまざま思考を重ねながら読むことが出来る。その分、上巻が冗長過ぎた気もするんですがー…著者の思考の過程を読んでいるのだなと思えばそれもまた楽しくもあり。
    回収できていないエピソードがあり、その点がもやもやしますが差し引いても、この面白さ。流石です。

  • 面白かった! 確かに、回収されない伏線や説明されない疑問など、物語としての瑕疵はあるものの、ミステリー界の大御所島田荘司が今こんなに熱のこもった作品を世に出したことに感動。
    もちろん「写楽」の謎に対する解答は鮮やか。島田荘司ならではの答えだと思うし、説得力も抜群。これが正解!と思える内容だった。個人的には、解答に至る前の課題設定のしかたにも、というかそこにこそ瞠目。どんな仕事もそこがキモなんだよなぁ…などと、つい我が身を反省してしまった。

  • 歴代ミステリーとしては最高に楽しい作品で作者の労力に感服しつつ楽しく読ましていただきました。これは実話だと思います。ぜひ次作にてそれを証明してほしいと思います。

  • 写楽は誰なのか?
    というのは、結構いろんなかたが書いてますね。高橋克彦はもともと浮世絵の謎でデビューしてるし、松本清張なんかも書いてる。

    しかし、これはある意味目から鱗のユニークな説。なるほど、そういう解釈ですか。ちなみに当時のドイツ人の美術評論家はこの時代の3大肖像画家にレンブラントとともに写楽をあげているそうです。

    わくわくエキサイティングな説の展開、なかなか良いのですが
    小説としては 明白な瑕疵がありますね、おしいです。

  • 写楽とは誰だったのか?を追い求め、やがて大胆な説にたどり着く。
    説は非常におもしろい。過去にこのような説があったのかどうかはわからないが、色々なピースがよくもうまくはまっていったなと感心する。と言うか、実在の資料でさらにこの話で取り上げられている日付などは本当のことなのか、よくわからない。けど、本当ではあってほしいと思うぐらい。
    しかし主人公は病弱すぎる。すぐ倒れる。それらの原因がたび重なる不幸なのだが、それらは必要だったのか?不幸じゃないとたどり着けない説だったのか?
    話は現代と写楽が登場する時代の江戸と交互に展開する。江戸のほうは現代の不幸な感じとは違いテンポが良く、登場人物たちが生き生きとしている。
    江戸のほうで出てきた「遠くから来た異人さんとも友達になれるなんて楽しいなぁいいなぁ」というセリフがとても良い。

  • 多分外人なんだろうなーと思わせる個所はあったので、正体には然程驚かなかったものの、こういう解釈を持ってくるのが凄いなぁと。
    実際のところどんな風に落としているのかな??
    美術史研究の面白さを見つけられた本だった。
    正直ラストはもうちょっと食い込んで欲しかったけど。

  • 下巻も佐藤さんの欝々した状態と長々した説明に苦戦を強いられる。
    しかし。蔦重がお上や千両役者達に対する鬱憤や怒りを、命がけで写楽を世に出すエネルギーにしたように、現在編のなかなかなストレスがあるからこそ、江戸編の蔦重達の心意気の清々しさや夜の歌舞伎場面の艶やかさが、よりイキイキと感じられるのかも。
    とにかく読み終わったーーーって、開・放・感!!

  • このミスベスト10、2011年版2位。作者もあとがきで書いてるとおり、現代編は全然中途半端だし、途中退屈な部分が続き全体のバランスも悪く小説としてはダメなんだけど、作者が長年あたためてた、写楽が誰かについての新説にはとても説得力があるし、仮説にもとづいた江戸編は小説としてもしっかり書き込まれてて、無茶苦茶面白い。後半はなんだかすごく泣きました。ただ、前半は現代編の方がやや面白いが写楽の説明が長く、江戸編は時代の背景説明に終始ばかりでしんどかった。この本が出た1年ぐらいあとに、NHKのドキュメントで長年謎であった写楽が誰だか分かったって言いきってる番組があって、それ観た記憶があったから、こっちの説は学者さんとかには相手されてないってことなんかなーと不思議でした。当時はNHKのドキュメントで結構新説をバシバシ取り上げて言い切ってる番組あって、NHK強気だなって思ったりしたけど。まあ、この本の続編も出てないようだしやっぱあかんかったのですかね。

  • 写楽とはだれか?

    その人物がその年の江戸に来ているのか
    その確証もないまま執筆を開始したという作者のあとがきを読む限り、
    ほんとうにその勘と執念だけで掴み取ったんだなぁ、と深い感動に包まれます。

    以前いちど挫折してるから
    読んだタイミングが良かったのかもしれない。

    主人公の佐藤同様に
    私も相当に打ちのめされていた時期でした。
    なにもかも酷く打つ手なしだと感じていたから
    やりたいことに対しても
    これになんの意味があるんだ、対価の保証はないって感じでとても苦しかったけれど

    半ばで佐藤の息子が幻となって
    「パパ、こっちでいいんだよ」(だったかな?)方向性を示唆する部分など
    むしろ私が勇気付けられてしまいました。

    お陰さまで新規プロジェクトも立ち上げられました。

    本当に資料と戦いながら掴み取った結末。
    手探りでなにかを作る職業の方は手に汗握ります。

  • またも歴史にアクロバティックに切り込む。
    いつもの日本人批判も含みつつ。
    現代編の答え合わせをするかのような江戸編。
    現代編の回収されない要素たち。
    構成の粗がやや眼につく。

    備忘録。
    どうしてだか、写楽=シャーロック・ホームズだった! というネタバレをどこかで読んだ気になっていたが、これは自分の夢だったのね。

  • 上巻を読み終わって、ちょっとどうしようかという気持ちだったけど、
    下巻は楽しく読めた。

    上巻に比べて、江戸編のボリュームが多く、
    この江戸編がものすごく面白く、よく出来ていて
    島田作品特有の作中作の面白さは健在だった。

    江戸編だけで良かったんじゃないかと思わざるをえない。

  • そこで終わりますか!感がすごかったです。
    江戸編の描写は好き。
    高橋克彦や夢枕獏の同時代の作品を読んでると特に。
    現代編はどうも煮え切らない感じがな~。
    子供の事故とか夫婦仲とか謎の美女あたりが消化しきれなかった感じ。
    最初の切っ掛けになった絵もなんだかうやむやだし、それに対する教授の態度も微妙だし。
    続編あるのかなぁ…。

  • 28年4月11日読了。写楽は誰か?の謎を追う。著者が20年来の書きたかった題材を小説仕立てで、現代版と江戸版で書分け 真実に迫る。色々な伏線が、中途半端なまま話しは終わってしまったような。息子の回転ドアでの圧死の話しも、ドアを開発したオランダと完璧なまでに完成させた日本という、写楽の実像とダブらせたのだろうが、果たしてどうしても必要な伏線だったのか。でも、写楽の正体が島田荘司説の通りだったら、どんなに面白いだろうか。今後オランダの資料などが、次々に見つかり 日本での研究が進む事を おおいに期待している。

  • ミステリの巨人の奇想がついに歴史を捉え、真実を掴み、常識をひっくり返したか。
    あまりにも膨大な歴史のテーマは、到底ミステリ小説1冊に収まりきれるものではなく、そこは島田節といつもの力業で何とかエンタメ小説の体裁を整えた感が強い。
    写楽の謎を解明する目的の達成を優先したのために、ストーリーや人物たちがほとんど着地できずに終わってしまった。
    島田ファン、ミステリファンの読み手としては不完全燃焼この上ない。
    新潮の責任でしょ。
    ライフワークとして積み上げていってもよかったのじゃないか。
    船戸さんの満州国演義みたいに。
    テーマが許さなかったのかなあ。
    とりあえず出しとかなきゃみたいな、作中の出版と同じような事情があったかな。
    実に素晴らしいがもったいない感がいっぱいの傑作です。

  • 下巻はとても面白かった。上巻を読んでいるときは、けっこう惰性で読んでいましたが、下巻はすごかったですね。何がよかったかと言うとこの小説の仮説の説得力。後書きまで読むとこの物語のすごさがわかります。伏線やらあのときの話はどこにいかされたの?必要だったの?と思われるところもありましたが、それを含めても読む価値があったと思います。島田さんの作品は初めてでしたし、この仮説の信憑性もわかりませんが、かなりの満足感でした。

  • 上巻に興奮しすぎただけに、下巻は冷静な評価になったかな。後半のもたつきとすっきりしない感じはちょっと残念。でも上下巻通しての評価はやはり良いです。

  • 東洲斎写楽の謎を解き明かす歴史ミステリ。

    島田氏自身が導き出した独自の考察なのだろうか、これまで著者の御手洗シリーズなどを読んできただけに、江戸時代の浮世絵や歌舞伎などの分野にも造詣が深いことを知り、驚嘆した。実際の考察についても、素人ながら十分説得力があるように思えたし、読んでいて楽しかった。作中にもチラと名前が出てくる高橋克彦さんの浮世絵シリーズといい、私はこの時代の文化とか歴史がすこぶる好きみたい。
    にしても、後書きを読むと、というか後書きをつけないといけなかったくらい、現代編のストーリーが中途半端。いろいろ裏事情があったみたいだけど、、、連載時はともかく、単行本として出版する際はもうちょっとキチンとしてほしかったかな。この状態で出版に踏み切ったのが正直驚き。まぁ、私は写楽の謎についてしか興味がなかったので、本書の内容で十分満足しましたが。

  • 写楽については応挙 北斎 歌麿など 仮説止まりな分 夢のある題材で興味津々で手に取ったのだが

    『エレベーター事件』『週刊誌スッパ抜き』『裁判』どこ行ったん・・・

    前半の成り行きをずっと背中で気にして読んでたから 後半の江戸編、面白かったけど気もそぞろ・・・

    この状態で世に出すって 出版業界や編集のシステムってどうなってるんだろう
    読後 あっけにとられそちらの方が気になってしまった。

    ぜひ江戸編だけで一冊出し直ししてほしい。蔦重魅力的。

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写楽 閉じた国の幻〈下〉 (新潮文庫)の作品紹介

謎の浮世絵師・写楽の正体を追う佐藤貞三は、ある仮説にたどり着く。それは「写楽探し」の常識を根底から覆すものだった…。田沼意次の開放政策と喜多川歌麿の激怒。オランダ人の墓石。東洲斎写楽という号の意味。すべての欠片が揃うとき、世界を、歴史を騙した「天才画家」の真実が白日の下に晒される-。推理と論理によって現実を超克した、空前絶後の小説。写楽、証明終了。

写楽 閉じた国の幻〈下〉 (新潮文庫)のKindle版

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