- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101034027
感想・レビュー・書評
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確かこの小説に出あったのは、私が中学性の時だった様に記憶している。
先程、急に岩戸の暗闇で二匹が静かに語らず、息も殺して過ごす夏を思い出し、あの空気感に浸りたく近所の本屋で買って来た…
全く身動き出来ない不自由な二匹…
そろそろ最期を迎えるであろう頃
二匹の心は宇宙大の拡がりを見せる…
ままならない人生のほんの数分…
この小説でなんとも言い難い空気感を味わって見ても損はないと思う…。 -
なぜいま井伏鱒二を読もうと思ったのか、それが全然思い出せない。
2、3ヶ月まえに青木南八との交流をテーマにした「鯉」を読んだけれど、この『山椒魚』はそれより随分前から積読されていたから、「鯉」を読む前から何かが気になっていたのだろうと思う。それが一体何だったのか。
ただ何となく思うのは、何か「手触り」のある小説を読みたかったのではないかということだ。
歳をとって小説が読めなくなってきた。
原因はよく分からないけれど「世界を立ち上げる力」が弱くなってきたんじゃないかという気がする。
物語を読んでも昔のように世界が現れてこない。だから最初から確かな世界が描かれている、そんな小説を読みたかったのではないだろうか。
井伏鱒二の小説はその点で非常に優れているように思う。山椒魚にせよ、鯉にせよ、サワンにせよ、あるいは朽助にせよ、彼が住んでいる谷間にせよ、そこに描かれているものが、何か固形の重みを持って感じることができる気がする
だから書かれていることが分からなくても読むことができるのではないか。
そんな気がした。 -
井伏鱒二のファンになった。
一気に引き込まれて考えさせられる。面白かった。 -
井伏鱒二の懐の大きな文章が堪能できる短編集。ストーリーとか小説の意味とか関係ないというのは乱暴すぎるかもしれないけどとある視点で絵画的に世界を優しく切り取るというようなふうに感じる。その結果「これは何を言いたいんだろう」という感想を持ってしまうものもあるけど、それが世界というものかもしれない。
代表作とされる山椒魚はそんな観察が浮き出る印象。朽助のいる谷間はストーリー感が強めに出る印象。屋根の上のサワンは全体的なバランスのよさを感じた。そのほか、へんろう宿、掛け持ち、女人来訪が印象に残った。女人来訪の文章は面白すぎる。大空の鷲はすごく実験的な作りの小説のようにも思えるけど語り口は井伏鱒二的で不思議な感触。
女人来訪の一番印象に残った部分。
「あなたも岡アイコさんも、どちらも愚劣です。不自然なロマンスはむしろ猥褻です。あなたは榛名山の譬え話で、ふんわりしてしまったんでしょう?」彼女はそれから笛の音に似た声でピイという声をあげて泣き出した。
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今更ですが…。若い時読んだことなかったので。初期作品12作の短編集。個人的に「夜ふけと梅の花」が一番好きです。このユーモアとヒヤリ感が…。
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理由はうまく説明できないが今まで読んだ短編の中では一番好きかもしれない。山椒魚と蛙の関係、何を意味してるのか今一不明ですが....
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言わずと知れた、超有名な作品。
教科書にも採用されたらしいが、多分習っていないので読む機会がなかった。
表題作『山椒魚』は、改変前のもの。
蛙の気持ちになってみると、いよいよ自分の命が尽きようとしているとき、怒りの感情が沸いてこないのも頷ける気がする。
ずっと二人で岩屋の中にいて、悪態ついて過ごしてはいたけど、自分がいなくなった後、1人取り残される山椒魚の哀れさを思うと、自分の境遇よりもなお悪いのではないかと思ってしまう。
閉じ込められて初めて、その孤独や不安を痛感し、いたずらに飛び回って見せて煽るのではなかったと後悔もしたかも知れない。
いずれにしても、面白かった。 -
教科書で読み、山椒魚という話が大好きになりました。ですので他の井伏作品も見たいと思いこの短編集を購入しました。どの作品も風景描写が事細かにしてあり、美しい風景が目に浮かびました。
また全編を通して老人に対する観察、親愛の目があるように思えて素朴な優しさや温かさを感じました。作品自体も素敵でしたが、河盛好蔵さん、亀井勝一郎さんのあとがきもとても面白く読みました。作中で感じた自分の印象が、井伏さんの来歴や人物像から形作られたものだとわかりやすく説明されていて、なるほどと頭がすっきりしました。あとがきを読み、もう一度読み返したいと思いました。
ついでに山椒魚以外で好きな作品は、朽助のいる谷間と屋根の上のサワンです。 -
グッときた。